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たくさん、聞きたい事がある。
けれどーーー。
「・・・どうした?」
「あ、ごめんなさい。私が原因でもあるんだから、ギルドには責任持って説明しないといけないなぁって思って」
「そこまで気にする必要はない」
ぶっきらぼうに言いながらライティエットは街の方へと歩み出す。その相変わらずの無関心さにメーディエはムッとして追いかけた。
「気にするわよ!マルクスが来る前にも話してたけど、ライはちょっと自分の評価を気にしなさ過ぎだわ。ギルドからの信用がなくなったらどうするのよ?」
「逆に聞きたい、何故俺の評価をお前が気にするんだ?自分が魔族だと周囲にバレるのが嫌とかではないのか?」
「もちろん嫌よ。でもそれよりライのことの方が大事でしょう。私はこれ以上あなたに迷惑をかけたくないの」
「大事・・・迷惑?」
「そうよ。追手がいつ来るか分からないっていう状況で既に迷惑なのに、魔族を連れてるなんて知られたらいくら白金でも降格どころの騒ぎじゃないわ。最悪、裏切り者として魔族同様に討伐対象にされかねないんじゃないの?」
「まぁ、そうかもしれんが・・・」
「そんなことに絶対なって欲しくないの。私が側に居るせいで被ってる迷惑だもの、あなたが自分を心配しないなら私が代わりにあなたを心配するぐらいいいでしょう」
「ぅ・・・あぁ・・・うん・・・」
珍しく歯切れの悪いライティエットにメーディエははて、と首を傾げる。
当のライティエットは元々マントの襟で隠れ気味な口元を更に手で覆い隠し、良く聞き取れない単語の羅列を唸るようにこぼしていた。
「ライ、どうしたの?やっぱり魔力を使いすぎて疲れてる?」
「いや、あの、すまない・・・。他人に自分の心配をされた事があまりないものだから・・・その、どう言葉を返せば良いのか・・・」
心配をしてもらった経験は、ある。
ただそれは討伐の失敗だったり、報復の恐れだったりと、あまりライティエット個人を心配したものではなかった。
彼自身を心配してくれていたのは今までの二十数年の人生でたったの3人。あまりに少ない、身近な人物のみ。
そしてそれも、随分と遠い記憶になりつつある。
だから久々の己の事よりもライティエット自身を心配した言葉と想いは、彼の心を妙に落ち着かない、くすぐったい気持ちにさせるのだった。
「・・・ふふふ」
「・・・何がおかしい」
「ベーつに〜」
先に行くライティエットを追い越し、前に踊れ出るメーディエはさっきとは打って変わってご機嫌だ。くるくると軽やかにステップを踏み、長い薄紫色の髪とローブを可憐な波のようにたゆたせる。
ライティエットはそんなメーディエを眩しいものを見るように目を細めて眺め、ゆっくりとして歩調で着いて来ていた。
ふわふわとした気持ちの中、メーディエは思う。
自分は話さないのに相手には話して欲しいだなんて、そんなのはわがままだ。
だから聞かない。
自分のことを話す勇気がない今は、聞かない。
ライティエットも聞いてこないと分かっているから何も言わない。
それよりもこうして並んで歩く穏やかな時間が、向けられる感情や表情の変化が大事だ。
だから今は2人、これで良いのだ。
第三夜 END
第三夜はこれにて完結です。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。
これからもまだまだ続きますので最後までお付き合い頂けたら幸いです。
第四夜は少し時間を頂きまして、短編小説を一つ更新してからになります。年内に更新出来たら良いな。
どうぞお楽しみに。
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