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3-6


「な、何よ!あんだけ威勢よく突っかかっておきながらこんな程度?あーあ、くっだらない!!ちょっと本気出しちゃったあたしが馬鹿みたいじゃないの!!さぁメーディエ、次はアンタの番よ!!その間抜けな顔に魔法ぶち込んで、ルーフェン様の前に晒してやるわ!!」


 呆気ない終わりにマルクスは毒気を抜かれたように悪態をつくが、すぐに気を取り直してメーディエに向かって吠えた。

 だが、メーディエはそんなマルクスを見ない。ただ燃え続ける炎を、その奥を、じっと見続ける。


 何かが、聞こえた気がした。

 そして何かが起こると、彼女の直感が告げている。



 そして、それは起きた。




「・・・ウソ、何よ・・・これ・・・」

「青い、焔・・・」


 マルクスの紅蓮が、赤でも白でもない、青い炎へと変わっていく。火柱は更に高くへと燃え上がり、空を貫かんばかりの勢いで空を昇る。そこから限界まで上がったであろう炎はゆらりと揺れ、同時に燃え上がった速度と同じ速さで勢いを無くして小さくなっていった。

 その炎の中から僅かに煙を上げながらもほぼ無傷の状態のライティエットが姿を現す。


「・・・さすがはこいつが認める魔法の使い手だ。お前の炎、俺のモノにするのに時間がかかった」


 灯火のように小さくなった炎を手のひらで揺らめかせながら、ライティエットが悠然とした態度で呟く。炎はまだ強く輝く青さを保っており、あの小ささの中にどれだけの魔力と熱量が込められているのか、想像しただけでも恐ろしかった。


「返すぞ、お前の炎。『紅蓮』!」


 ライティエットの短縮された詠唱に反応して炎が再び燃え上がる。

 だがそれは上にではなく、ましてや球体になる訳でもなく、マルクスに向かって一直線に走る。

 彼女が放った時よりも更に速度を上げた炎の刃が襲い掛かる。状況を理解出来ないマルクスの思考は完全に停止しており、防御魔法の構築など想像すら不可能。

 ただ、死への恐怖で叫ぶことしか出来ない。


「キャァあぁーーーーーッ!!!!!」

「マルクス!!!」


 真っ直ぐに走る炎はマルクスに襲いかかる



 ーぽしゅん



一歩手前で気の抜ける音を立てて消えた。


「「ーーえ?」」

「・・・あぁ、さすがに魔力が足りなかったか」


 魔法の放ったライティエットがため息を吐きながら自分の手のひらを見て呟く。それをポカンと見る2人の視線に気づいたのかもう一度ため息を吐いて己の剣を掴んだ。


「魔法を乗っ取るのに魔力を食われ過ぎた。魔法戦はもう無理だが、まだやる気があるならコイツで相手をするが・・・」


 視線で「どうする?」と聞かれてマルクスは戸惑う。

 だってこれではまるで逃してやると言われているみたいではないか。


 いや、みたいどころか実際そうなのだろう。


 なぜこの男が自分を見逃してくれようとしているのか分からない。情けをかけられている現状に、自分にもライティエットにも怒りが込み上げる。

 だが、先程の紅蓮が通用しなかった相手に残りの魔力だけで勝てると言えるほどマルクスは馬鹿で無知ではない。ライティエットも魔力がもうないとは言っているが、マルクスは生粋の魔法使いで武術系はからっきし。魔族特有のスピードと腕力も、この男相手では恐らく意味がない。


「あぁ〜もぉっ!クソッタレが!!」


 悪態をついたマルクスが翼を広げて跳び上がる。バサリと音をたてて広がった翼で自分の体を浮かせ、眼下の2人を射殺さんばかりの眼光で睨みつけた。


「今回はアンタの勝ちってことにしてあげる!!でも次は絶対殺す!今あたしを逃した事を後悔させてやるんだから!!だから、それまでその辺のヤツらに殺されんじゃないよ!この、ロリコン野郎が!!!!!」

「よし殺す、今殺す」

「わぁ〜ッ!!ライおさえておさえて!!」





◆◆◆


「ありがとう、ライ」

「・・・礼を言われるような事をした覚えはないが」


 マルクスの姿が見えなくなるまで見送ってからメーディエがポツリと呟いた。否定するライティエットだったが、少し視線を外している横顔にメーディエは可笑そうに笑う。

 そしてマルクスの去った空を見上げたまま口を開いた。


「あの子くらいなの。私に自然体で話しかけてくれた子って」


 悪態をついて、突っかかってきて、魔法で勝負をして。

 変わらない。今も昔も、変わらずあの子だけが『メーディエ』を嫌ってくれる。


「マルクスが私を嫌いなように、私だって嫌いなんだけど。本当に嫌いなんだけどーー、死んでほしくは、なかったの・・・」


 友でもない、ライバルでもない。言葉で表すには何とも難しいマルクスとの関係。

 でもだからこそ、居なくなってしまうのは寂しい。


「だから・・・ありがとう」

「次は殺すぞ」

「うん、分かってる」

「そうか・・・。それはそうと、ギルドにどう説明するか・・・俺がやられたと思ってるだろうからな」

「あー、そうね。来てたものね、監視」


 マルクスが巨大な燃える岩石を落下させようとしたのだ。直前にライティエットが撃ち返して被害がなかったとは言え、今頃街は大騒ぎ。急ぎ監視が飛んできたのだって当然の処置と言えるだろう。

 魔法の発生元を探る為に張った探索魔法をメーディエは解除し忘れていたから気づいていた。


「随分近くまで来ようとしていたけど、いつの間にかいなくなってたわ。どこまで見られてたかしら?」

「俺が魔法の乗っ取りを完了するまでだ。上空に上がった炎への恐怖が獣の本能を強く刺激したんだろう。恐らく憑依が強制解除されたから探索魔法にも引っ掛からなくなったんだ」

「なるほど、それならライがマルクスにやられたと思われて今頃ギルドでハンターが集められてそう・・・?!」


 メーディエは自分で言いながら気づいてしまった事実に頭を抱えそうになる。


 ライティエットは、監視に気付いていた。

 それはつまり、探索魔法を解除していなかった、と言う事だ。マルクスの超巨大な紅蓮を乗っ取っている最中でも。


 それは、果たして可能なのだろうか?


 2つの魔法の同時発動は確かに出来る。自慢ではないがメーディエは出来る。

 だがメーディエは魔族で、ライティエットは人間だ。そもそもとしてその時点で魔力の質も量も違う。

 なのにライティエットはメーディエですらあの練度の発動が難しいと思わせたマルクスの紅蓮を乗っ取った上に、その時探索魔法も同時発動させていたと言う。


 実は疑問はこれだけではない。

 マルクスの『岩石落下(ロックフォール)』を撃ち返した『雨粒の矢(アローレイン)』。

 あの魔法もおかしい。

 本来の『雨粒の矢(アローレイン)』は頭上に魔法陣を展開して下に降らせるものだ。それを掌で展開させて上に向かって放った。しかも魔法陣自体を回転をさせる事で放たれる水の矢にも回転を付け加えて貫通力を上げた。実際そうしなければあの質量の岩石を撃ち返すのは無理で、貫通力を上げた水の矢で岩石を削って軽くしたからこそ出来たのだ。


 これはもう回転式銃火器(リボルバー)やマシンガンと言っていい。

 けれどもフェスティア大陸に銃火器はない。いや、無いどころか発明すらされていない。剣や槍、弓矢が主流で、大型の武器であってもバリスタや投石機止まり。魔法がある弊害か、火薬で打ち出すと言う発想がないのだ。

 そして魔族が作り出した銃火器もとある理由で今はもう存在しない。それはメーディエを含めた極々一部の魔族しか知らない物で、マルクスのような若い魔族は存在すら知らないだろう。

 なのにフェスティア大陸の住人であるライティエットが、銃火器を思わせる魔法の運用を行えるものだろうか?


 偶然?それともーーー。




ここまで読んでくださってありがとうございます。

誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。


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