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3-3


 互いに疑問を形にしようと口を開いた瞬間、


「「!!!?」」


それは突如として感じた巨大な魔力の波動によって遮られた。

 2人は声をかけるどころか目を合わせることもなく、瞬時に背中合わせになって辺りを見渡して警戒する。

 モンスターが殲滅されてすぐの雑木林に生き物の音は全くない。

 ただ、風で揺れる木々のざわめきが聞こえる中で、濃密な魔力の波動に肌が粟立ち、2人の周りの空気だけが重くなっていくように感じられた。


「何か大きな魔法が構築されているようだけど、一体誰がどこで・・・ッ!!?ライ、上空(うえ)だわ!アイリーの街を狙ってる!!」


 魔力の出処を見つけたメーディエが慌てて叫ぶ。

 だがライティエットは彼女に言われるまでもなく、既に片方の腕を上に向けた状態で空を睨みつけていた。

 彼の掌は大きく開かれ、そこに小さな青い魔法陣が浮かび上がる。小さな魔法陣は瞬時に左右に2つ、3つ、4つ・・・と複製されていき、小さな円が均一に並ぶ大きな円の魔法陣となってライティエットの掌を中心に回転し始めた。


「恐らく炎をまとった『岩石落下(ロック・フォール)』・・・着弾前に、堕ちろ」


 ライティエットの魔法が完成する一瞬前、魔力によって作られた巨大な炎の岩石がアイリーの街に向かって投げられる。

 そしてそれを待っていたかのようにライティエットも水系魔法『雨粒の矢(アローレイン)』の構築を終わらせ。青い砲火の如き無数の水の矢が、音速で空を駆け抜けていくのであった。






◆◆◆


ーー魔法が放たれる10分ほど前、アイリーの街から数キロ離れた上空。



「んふーーーーーーーッ!!やっぱり外は良いなぁ〜!!城は窮屈で退屈で、ほんっと〜に嫌になるっての!」


 蝙蝠羽と手足を思う存分に伸ばして広げながら、1人の魔女が優雅に空を泳いでいる。あてもなく自由に飛ぶその姿は、この空全てが自分の物だと言わんばかりであった。


「・・・って言っても、この大陸なぁーーんにもないから退屈には変わらないけどね。さっさと破壊しちゃえばいいのに、なんで闇に囲っただけで放置してんだか・・・。ほんとつまんなーーい」


 色黒の肌が魅惑的な四肢を惜しげもなく晒した魔女は飛びながら器用に腕を組んで考え込む。


 魔族がこのフェスティア大陸に来てから、もう100年。最初の頃はいくつもの町を襲い、破壊の限りを尽くしていた。

 けれど、何故か大陸を闇で囲ってからはそうした活動は全て禁止されてしまい、代わりに言い渡されたのは闇と迷宮(ダンジョン)の維持のみ。それも最近では大陸の住人達が力をつけてきた所為で闇を維持する魔族がいない、所謂空白地帯がところどころで出来ている始末である。なのに禁止事項の変更は一向にされず、空白地帯の穴埋めも実力者が足りずに滞っている状態であった。


「あーぁ〜、こんな辺鄙な大陸からさっさと出たいなぁ〜ー・・・って、んん?」


 魔女の視線の先で巨大な竜巻が数本、空に向かって飛んで行くのが見える。余波の風でピンクゴールドの綿飴のようにふわふわしたツインテールの髪が激しく靡き、魔女の顔面を叩いた。


「あイタ!!もう誰よ!?こんなところで裁きの(トルネードオブ)龍風(ジャッジメント)、よね?を使ったやつはぁ!!あたしの麗しい髪がめちゃくちゃになっちゃったじゃないのよ!!」


 魔女は乱された髪を直しながら竜巻が飛んできた方向を目指す。すぐ見えてきたのは巨大な円形の草原と、その真ん中に建造された花のような都市だった。


「へぇ、おっきな街ね。魔法は此処から?ま、別に違ってもいっか!この辺り一帯全部破壊すれば、あたしの髪を乱したやつも一緒に粉々のぐっちゃぐちゃになるだろうし!!」


 鼻歌でも歌い出すようなノリで魔女は魔力を込めて魔法を構築し始める。わざわざ詠唱など唱えず、ただただ魔力を好きなだけ溜め込んだそれは真っ赤に燃え上がる巨大な岩となって彼女の視界からアイリーの街周辺を隠した。


 故に、気付かない。地上で同じく魔法が構築されていっていることに。


「んふふふふ、これっくらい大きくなれば十分よね!いっけぇぇーーーっ!!」


 魔女は巨石と化した燃える岩石をボールを投げるような軽い調子でアイリーの街に向かって解き放った。その一瞬後に下から魔法が放たれ、ゆっくりと落下する魔女の岩石に直撃する。

 岩石より小さい魔法だったゆえに着弾されたことに魔女は気付かなかった。

 だがじわじわと、何かがおかしいと感じ始めてくる。


 岩が落下していない、いや、むしろこちらに帰ってきていないだろうか?


「え、え?ちょっと、まって?なんで?どうなってんの?」


 魔女が訝しむのを待たずに燃える岩石は徐々にスピードを上げて彼女の元に戻ってくる。ライティエットの、無数に放たれた小さな水魔法に押し返されて。


「うえぇ!?ちょっ、うそでしょうぉーーーーーーっ!!?」


 一度手から完全に離れてしまった魔法は、例え構築した本人でも消し去ることは出来ない。

 放った時よりも速いスピードで帰ってきた魔法に慌てふためく魔女は避けることも出来ず、直撃を喰らう。更にライティエットの放った『雨粒の矢(アローレイン)』の追撃も重なって、辺りには爆音とそれに負けないくらいの魔女の悲鳴が響き渡るのだった。

 

 


読んでくださってありがとうございます。

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