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3-2


 メーディエの発動の言葉を合図に、回転していた球体の魔法陣が瞬時に破裂する。重なり合った破裂音は巨大な爆発音となって、まずモンスターたちの耳を破壊し、その動きを止めさせた。更に破裂した魔法陣から大小様々な竜巻が現れ、モンスターたちの身体を竜巻の中へと吸い込み、渦巻いて荒れ狂う風の刃で粉砕していく。

 モンスターの唸り声、叫び声は最早聞こえては来ない。響くのは竜の轟きに似た豪風の音のみ。

 赤黒く、まだらに染まった無数の竜巻は周囲の植物たちをほとんど傷つけることなく、モンスターだけを切り刻んで空へと昇って消えていく。

 ライティエットはそれを見届けてから、改めて探知魔法で雑木林と周囲を探索した。

 周辺に2人以外の魔力反応は、ない。


「反応は全て消えた。お疲れ様、さすがの魔力操作だな」

「ありがとう、この魔法はやっぱり疲れるわね。それにしても・・・今回もコレで良かったの?」


 問われてライティエットは僅かに首を傾げる。短い付き合いながら、それが彼の本当に分かっていない時の反応だと知っているメーディエはため息を吐いた。


「だって、この魔法だとモンスター討伐の証拠が残らないじゃない?」

「あぁ、そうだが?」

「それってギルド側からしたら本当に討伐しているかどうか分からないってことでしょう?だから、大丈夫なのかしらって思って」


 メーディエの言う通り、彼女の使った魔法でモンスターの討伐証拠を残すことはほぼ不可能だ。


 『裁きの竜風』は風属性最強の広範囲殲滅魔法である。


 恐ろしく魔力を使うが、当然の如くその威力は絶大で、術士の指定範囲内にいる魔力を持つものを例外なく吸い込んで粉砕する。発動前に魔法の指定範囲外に逃げ切るか、もしくは相当強い魔力を用いて防御魔法や結界魔法を展開しない限り、竜巻に吸い込まれて体をズタズタに引き裂かれる未来しか待ち受けていない。

 ゆえに討伐の証拠となる首や角だけを残しておくという器用なことは一切出来ない。全てが平等に粉々になるまで切り刻まれ、土に還るのである。


「?・・・あぁ、すまない、説明していなかったか。これまでの依頼もそうだったんだが、証拠品は要らない。殲滅すればギルドにすぐ伝わるからな」

「え、どういう事?」

「お前なら視えるだろう、アレが」


 言いながらライティエットは空を指差す。暗い闇色の靄がかかった空は昼間の時間だと言うのに薄暗い。そんな空を見上げると、ライティエットが指差す先に一つ、茶色い何かが飛んでいた。


「何、アレ?ぐるぐる動いてる・・・鳥?」


 随分と上空にいるのか肉眼では良く見えない。メーディエは自分の眼に魔力を集中させ、簡易な遠見の魔法を発動させた。

 そうして見えて来たのは空の靄に紛れ込むような濃い茶色の羽を羽ばたかせて飛ぶ梟だった。梟は周囲をぐるぐると旋回したと思うと、アイリーの街の方にゆっくりと飛んでいく。


「あれって梟よね。でもなんでこんな真っ昼間に?どういうこと?」

「ギルドがよこした監視だ」

「え、監視って、梟が!?」

「知らないか?憑依の魔法だ。使い魔にしている動物に自分の意識を憑依させて偵察などを行うんだ。かなり繊細な魔法ゆえに使い手はそれほど多くはないが」


 もう殆ど見えなくなった梟を目で追いかけながらライティエットが説明してくれた魔法は、メーディエの知らぬものだった。

 城に在る、ありとあらゆる本を読み尽くしたメーディエはその知識量ゆえに魔法も全て熟知していると思っていたのだが、どうやらそれは驕りだったらしい。


「今回の依頼、本来は鳥族の獣人が観に来る予定だったようだから俺が変えさせた。お前の魔法はかなり上空まで竜巻が上がるからな」

「あぁ、間違って巻き込まれたら大変だものね」


 監視の梟が随分と離れた上空にいたのも恐らくそれが理由だろう。あれだけ遠くて、しかも向けられていたのは動物からの視線。かなり念入りに探知魔法を広げない限り、気付くのは無理に等しい。


「つまり、今までのモンスター殲滅の依頼って、毎回こうして監視が付いてたってこと?」

「全部ではないが、大体そうだ。実際ギルドも律儀にあの量の討伐証拠を持って来られても捌き切れないしな」


 各所で起きているこのモンスターの異常発生は大体100〜1000のモンスターが一か所に集まっている状態で確認されている。

 規模としては集団暴走であるスタンビートの一歩手前。恐らく放置すればスタンビートになる可能性を秘めているゆえに、ギルドでは異常発生は見つけ次第、早急に殲滅する事が義務付けられている。

 だがここで一つ問題が起きる。ライティエットの言っていた通り、数が多すぎて捌き切れないのだ。ギルドも、そしてハンターも。

 最低でも100を超えるモンスターの部位を持って来られてもギルド側は鑑定と処分に困る。同じくハンター側も数が多い中でいちいち討伐証拠の部位を残せるように戦ったり回収したりする余裕がない、だが部位を持って行かなければ本当に倒したかどうかを証明出来ない。

 だったら殲滅しているところを見ておけば、お互いに面倒が減って楽になるじゃないか、と言うことなのだ。


「理屈は分かった、とっても合理的ね。でも・・・」


 うんうん、と頷きながらメーディエはこれまでの依頼の概要を正しく理解したことを態度で示す。

 だが、すぐにライティエットをギロリと睨みつけて、怒りながら彼を追い詰めるようにズンズンと迫って来た。


「そういうのはキチンと説明しといてよ!もし魔力消費が激しいからって私が『完全なる(パーフェクト)変化魔法(メタモルフォーシス)』を解除してたらどうするつもりだったの!!?」

「え、いや、その場合はちゃんと解除前に止めるかマントで隠せば良いかと」

「魔力切れで急に解除しちゃう可能性だってあるでしょうが!!これはあなたの評価に関わる事なのよ!その辺り分かってるの?!」

「・・・・・俺?」


 まさか自分のことを言われるとは思っておらず、ライティエットは目を丸くした。

 そしてそんな反応を返してきたライティエットにメーディエも目を丸くする。





読んでくださってありがとうございます。

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