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第三夜 紅蓮の魔女

誰も見てはくれない

みんな 自分の持つ『血』しか見てくれない

縛り付けられた生活に嫌気がさす

『自由』になりたいと 心が叫ぶ

だから逃げ出すの 此処から

鎖と首輪を断ち切って 

自分だけの『居場所』を探し出す為に



ー某城内貴賓室



「よく来た、では早速詳細を聞こう」

「---・・・何もございません」

「・・・ほぉ?」

「此度の件はわたくしの至らなさが招いたものでございます、弁明の余地など有りはしません。どうぞご自由に処罰くださいませ」

「自分の至らなさ、とな・・・。これはまた、随分と都合の良い言い回しだ」

「・・・」

「千人に及ぶ『闇を司りし柱』がそれぞれに作り出した迷宮(ダンジョン)。その中でも随一の難易度を誇るそなたの無限回廊迷宮が小娘に易々と突破されたとなれば、確かに確かに・・・そなたの至らなさが原因と言えような」

「はい、誠に申し訳ござい」

「ただし」

「ーっ?!」

「もしそれがそなたの手助けによる突破、脱走だというならば・・・至らなさの意味が随分と変わってくると思わぬか?なぁ・・・ルーフェンよ?」

「・・・はて、一体何のことやら」

「くく、まぁ良い。沙汰は追って伝えよう」

「はい。その間、捜索に全力を尽くします」

「必要ない」

「は?」

「捜索は必要ない。今とても、面白いことになっておるからな・・・・くく、くははははははは」






◆◆◆


 鬱蒼と生い茂る黒い草の草原。

 大地の精霊が守護するフェスティア大陸四大中心都市の一つ「アイリー」の周囲は、こう言った土地がいやと言うほど広がっている。アイリーの街は少し高い丘や山などから見下ろすと、広大に広がる草原の真ん中に建物達が綺麗な円が描いて建っているように見える。それはあたかも草原に人工物の花が咲いたように見え、昔はその雄大さと美しさ故に観光客の途絶えない街として有名であった。

 そんな草原の切れ間、本来ならば植林地として丁寧に整えられているはずの場所だが、魔族の襲撃によって放置されてしまった雑木林でライティエットとメーディエはため息を吐いていた。


「・・・やれやれ、やはり今回もか」

「今回もだね」


 呆れた声音で話す彼らの目の前にはおびただしい数のモンスター達が雑木林の隙間から顔を覗かせている。一体一体はそこまで強いものたちではないのだが、ただとんでもなく種類と数が多い。


「最近多いわよね、出産ブームなのかしら?」

「知らん、とりあえず俺たちの担当はこの雑木林一帯だ。さっさと終わらすぞ」


 メーディエが言うようにここ最近、この手の討伐依頼が多発している。今回もアイリーの街のギルドで職員とギルドマスターに揃って懇願され、他のハンター達と共にこの大量発生したモンスターの討伐に駆り出されているのだ。

 団体で狩りをするのが得意ではないライティエットはここぞとばかりに白金ランクの権限を使用。自分が狩る場所の指定と他のハンター達と共闘しないことを条件に今回の依頼を引き受けている。

 そしてこの方法で依頼を受ける回数もそろそろ片手で数えられなくなってきていた。


「・・・いつもの通りだ、お前には指一本触れさせはしない。魔法の構築は任せたぞ」

「りょ〜かい」


 のんびりしたメーディエの返事とライティエットが剣を抜いたのを合図に、モンスター達が一気に押し寄せてくる。地響きが起こりそうな唸り声をあげ、正面から、右から左から、上から下から、あらゆる方向からモンスターが襲いかかってくるのをライティエットがたった一人で全ていなす。

 身体に肉体強化の魔法をかけ、恐ろしいスピードでモンスターを斬り殺していく様はまさに閃光、命を刈り取る為に振り下ろされる死神の鎌だ。メーディエはその美しい、黒い閃光と化したライティエットの剣舞に見惚れながら、それでも魔力を練り上げて魔法の構築を始めていく。


「正を司る翠のつるぎ、静寂を愛する清き流れの詩人よ」


 白色にも緑色にも見える扇型の魔法陣が彼女の真下に浮かび上がり、陣円の大きさを広げていく。

 それは今のライティエットの速さには到底追いつけるものではないが、他の者が見ようものなら腰を抜かすほどの速さで広がって行った。そして大きさも、彼らが指定した雑木林一帯全てを囲い込むほどの大きさに成長していく。更にそこから生まれるようにして球体の立体魔法陣があちこちに浮かび上がり、急速に回転しながら周囲の大気を吸い込んでいった。


「大地を駆ける聖者の囁き、黒き罪を無に帰す白き刃。切り裂きたまえ、深き緑石、真空の逆巻き。吹き荒れて浄化を導け!」


 メーディエの詠唱が最終段階にきたのを察知して、ライティエットは瞬時に剣を真横に一閃する。音速の一閃は衝撃波となって周囲のモンスターを切り刻み、一定の範囲、生きたモンスターがいない状態を作り上げた。ライティエットはそれを確認しながら大きくバックステップしてメーディエの真横、より一歩後ろに砂埃をあげながら戻ってきた。

 メーディエはそんなライティエットを横目で見ることもなく詠唱を唱えきる。


裁きの(トルネードオブ)龍風(ジャッジメント)!!」


更新遅くなりました。

これより執筆再開いたします。


今回短くなりましたが、読んでくださってありがとうございます。

誤字脱字ありましたら知らせていただけると大変助かります。


少しでも面白いと思っていただけたら↓から評価、感想等をいただけると嬉しいです。

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