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2-5


ーギン!!


 ライティエットの剣が鋭い爪によって防がれる。先程までヒトと変わらぬ手の形をしていたというのに、今は1本1本が巨大な鎌のように長く鋭く変形していた。


「クハハハハハハ!!残念だった、な!!」


 薙ぎ払う様に振った指の鎌が、防いでいた剣を身体ごと吹き飛ばす。ライティエットはクルリと空中で回転して威力を殺し、今回は大地を滑ることなく綺麗に着地した。

 だがそんな彼のマントの裾部分が一部、切られている。


「なるほど・・・。その爪がハンター達の傷跡と、阿鼻叫喚のオーケストラというやつを作り出した武器・・・いや、お前としては楽器という訳か」


 改めて見た魔族はほぼ人型と言っていい姿をしていた。何故ほぼなのかと言えば、肌がこの大陸を覆う闇のように黒く、身長は3メートル近くまである巨体。更には手足が異常なまでに長い。その長い腕の先端に先ほどライティエットの剣を塞いだ指の鎌があり、間合いの範囲が剣や槍など比較にならないほど広いと推測出来る。

 この長い腕を鞭のように振るってハンター達を引き裂いたのだろう。山の頂上であるここは少し開けた広場のようになっているのだが、その至る所に花のように散った血痕や血溜まりがあり、まるでオブジェのようにヒトや動物達の臓器が飾られていた。


「その通り!!どうだ、私に奏でられ、舞台に飾られた者達は!!美しいだろう?本来ならこれを私が作り出した素晴らしいダンジョンの舞台でより残酷に!より艶やかに!より美しく飾られていたというのに!!それを、それをよくも貴様は!!!」

「ーーっ!!?(速い!)」


 剣を構えたまま辺りに関心を示すと、魔族は上機嫌になってクルクルとその場で踊りだす。

 だがすぐさま激昂してライティエットに襲い掛かり、その巨体からは考えられないほどのスピードで猛攻撃を仕掛けてきた。


「ほらほら、さっきまでの威勢はどうした!?」

「(強い血の匂いのせいか?頭が、クラクラするー・・・せーー)」


 両腕から連続で繰り出される斬撃にライティエットは防御に徹することしか出来ず。


「所詮ニンゲンなどこの程度よな!!」

「(感覚がおかしい、自分はどうやって敵の攻撃の防いでいる?ー・・ろせーー)」


 体のあちこちに切り傷が増え、追い詰められていく。


「さぁ!跪いて私の素晴らしい舞台を破壊した罪を詫びるがいい!!!」

「(ーあぁ、全てがどうでもいい・・・


ー殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺してしまえ!!!!ーー)」




ーザンッ・・・


 一振りの斬撃の音が辺りに響き、2人の動きが止まった。



「ーぎゃあぁァアアアァァァアァーー!!?!?!」


 魔族がけたたましい叫び声をあげて膝をつく。彼の腕が1本、肘にあたる部分から切り落とされて血飛沫を上げていた。鮮血は空中を舞って雨のように降り、ライティエットと魔族の身体を赤く濡らしていく。


「よくも!よくも私の腕をぉぉおおぉぉぉ!!!」


 片腕を振り上げ、激昂する相手にライティエットは切り落とした腕を投げつける。鋭い爪は巨体の胸に深く突き刺さり、魔族は再び膝をついて大量の血を吐き出した。

 そんな敵に向かって、ライティエットは素早く魔法を唱える。


「新月より降り積もる光の粉。日蝕と共に帰す黒き旋律。紅の嵐に運ばれし破壊の力よ。全てが灰と化す地に罪の言葉を語らん。いでよ、赤き宝玉、炎の柱。燃え盛りて戦曲を舞え!『紅蓮』!!」


 空中に浮かび上がった真紅の魔方陣が粉となって砕け散り、いくつもの燃え盛る炎の弾丸となって飛ぶ。魔族はそれを避けれずに全て受け、黒い巨体は真っ赤な炎の渦に飲まれていった。






 「・・・終わったか」


 ライティエットは息を吐き、まだ少しクラクラする頭を押さえながら燃え盛る炎を見つめる。

 つい加減出来ずに魔法を放ってしまったが、討伐の証明になる角や翼は残ってくれるだろうか。可視化していた魔力の球体が消えたのだから、最悪それで判断してもらうしかない。

 そう考えながら未だ燃え盛る炎に近づいた。

 その時


「ーーがっ!!?」


長い腕が炎の中から湧き出てライティエットの首を鷲掴む。


「ぐぅ・・・い、きて・・いたの、か」

「クハハハハハハハハ!!素晴らしい!本当に素晴らしい!!なんと美しく美味い炎であったか!!だが残念だったね、私は炎に耐性があってある程度なら炎を吸収出来るのだ!!・・・しかし」


 ライティエットの首を締め付けている手に先程まであった鎌は1,2本しか残っておらず、皮膚はあちこち焦げてボロボロになっている。掴む力も普段なら余裕でへし折れるというのに、今は締め付け続けるのが精一杯だった。


「何とも不思議なモノだな?この私が吸収しきれない炎をたかがニンゲンごときが生み出すとは・・・。先ほどの殺気といい、私の攻撃を防ぎながらの鋭い反撃といい、とてもニンゲンとは・・・・・!!?まさか!きさ、ま・・は」


 ドスん、と重たいモノが落ちる音が辺りに響く。

 同時に首を絞めていた力がゆるみ、ライティエットはやっと呼吸をする事を許された。彼が咳き込んで肺に空気を送り込んでいる中でもう一度、先ほどよりもっと大きくて重たい、魔族の巨体が地面に倒れる音が響き渡る。

 首から上が無くなった身体は自らの出血で池を作り出し、身体はもちろん、先に落ちた首もその池に沈もうとしていた。


 それでも、すでに金色の光を消そうとしている瞳がライティエットを捉えて声を絞り出す。


「・・・こう、か・・い・・する・・・か、なら・・ず」



ードスッ!パキン・・・


 声を潰すようにライティエットは沈む魔族の首の根元に剣を突き刺した。そこには骨とは違う、菱形の結晶が埋まっており、剣はその親指ほどの大きさの結晶を的確に刺して破壊していた。


 これこそが魔族の力の源。『核』と呼ばれる、言わば魔族の心臓部分。


 ライティエットはその砕いた核が粉々になるのを見届けながら、聞き手のいない答えを口にする。


「後悔?する訳ないだろう。・・・お前たちさえ居なければ、俺は・・・」


 否定の答えは小さく、どこか悲しく寂しい音を含ませる。

 だがそれは誰の耳にも届かない。言った本人すら気付くことはなく、最早砂となった核と一緒に風に吹かれて消えていく。

 全てが終わった場所に吹く風は、この場で亡くなった者たちへの鎮魂歌となっていつまでも吹き続けるのだった。




読んでくださってありがとうございます。

ギルドマスターの口調を少し変更しました。


誤字脱字ありましたら知らせていただけると大変助かります。


少しでも面白いと思っていただけたら↓から評価していただけると嬉しいです。

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