ぬか漬けと小説で犯した失敗 ~なんでも入れればいいってもんじゃない~
皆様はぬか漬けを作った経験があるだろうか?
実は最近、ぬか床を作り野菜をつけている。これが始めてみるとなかなか面白く、アレを入れてこれを入れてと試しているうちにドはまりしてしまった。
ぬか床を準備するには、煮干し、昆布、しいたけ、唐辛子、山椒の実などを一緒に入れ、葉物野菜を捨て漬けしてぬかを馴染ませなければならない。
数日後、捨て漬けの野菜を取り出して、みそくらいの固さになれば準備完了。
いよいよ野菜が漬けられるようになる。
きゅうりをつける時は塩を振って水を抜き、両端を切り落としてからつける。
ニンジンはそのまま、大根は三分の一くらいにカットしてつける。皮は剥かないで長めにつける。
なすは半分に切ってミョウバンと塩を皮に刷り込み一日じっくりと。
他にも、カブやオクラなどをつけてもおいしい。
今年の夏は高い気温の日が続いていることもあり、ぬか床が発酵するペースが速く、少しでも長く野菜をつけていると酸っぱくなってしまう。酸っぱさを抑えるための方策をネットで調べ、重曹を入れたり、ビールを入れたり、砂糖を入れたりといろいろと試した。
やはり酸っぱさを抑えるにはからしが一番らしく、市販の糠漬け用のからしを買ってきて、毎日少しずつ入れて様子を見る。
こう書いててみると、実に充実した糠漬けライフを送っている。
われながらよく頑張っていると思う。
しかし……よくよく考えてみると、私の悪い癖が出ていると分かる。
タイトルにもあるように、入れすぎているのだ。いろいろと。
唐辛子は業務用スーパーで買ってきた輪切りの物をひとつかみどばー。
昆布は同じく業務用スーパーの刻み昆布をつかんでどばー。
からしもどばー、干しシイタケどっかんばっこん、ビールどぼどぼ。
野菜もつける前に塩をこれでもかとふんだんに。
これを食べてもらった人から、つけすぎ、入れすぎ、塩気強すぎ。との感想をいただく。
……ごっもっともで。
はい。というわけでここから小説の話。
導入が無理やりでも気にしない。
ぬか漬けの話にもあるように、私はいろいろと入れすぎてしまうタイプだ。それは小説を書く時も同じだった。
次々と追加される新キャラクター。更新される世界観に魔法関係の設定。妙に凝った国家運営システム。その世界にしか存在しないモンスターや生物。エトセトラ、エトセトラ。
設定をもりもり追加するのもアレだが、それ以上にストーリーもどんどん広がる。
あれがああして、これをこうで、伏線はりーの陰謀張り巡らせーの。
気づけばとても消化しきれないような超大河ストーリー。プロットも次々と更新され、あちこちに追加ストーリーが発生。当初の予定から大きく外れ、ハッピーエンドははるか彼方。
お前それ、本気で最後まで書く気あるの?
もう一人の自分が突っ込むような気がしたが、聞こえないふり。だって設定やストーリーを考えるのたのしいんだもん!
とまぁ、こんな感じでお話を考えるのは大好きなのだが、それをいざ文章に起こすとなると頭を抱える。
プロットを組もうとしてから何やってんだと我に返っても、もう遅い。そのストーリーはあらゆる妄想を詰め込んだ黒歴史ノートそのもの。小説になんて絶対にできない。
というわけで、なんでもかんでも入れればいいってもんじゃないよって話。
うーん……全くもって説得力がない。
小説を書くにしても、ぬか床を作るにしても、私の悪い癖が出てしまっている。どうにかならんのこれ?
ぬか床の調整方法を調べているうちに、色々な考え方があると知った。なすをつける時にミョウバンを使わないとか、味が変わるので重曹やビールは入れないとか、酸っぱくなっても身体に悪いわけじゃないのでそのままにしようとか、色々な人がいろいろな知恵をネットに公開している。
様々な考え方があり、それぞれに違った価値観があるわけだが、彼らに共通している点が一つ。
それは何でもかんでも入れていないということ。
私のように考えなしにあれこれ追加している人なんて一人もいない。ぬか床に関しての知識を披露している人たちはそれぞれにこだわりを持って、何を入れて、何を入れないかを決めている。
つまりはポリシーを持っているわけだ。
これは小説を書く時も同じなのかもしれない。
なんでもかんでも詰め込んで面白くなるはずがない。
大切なのは自分にとって譲れない要素を見極め、適切に取捨選択することだ。
ちなみに、私が作ったぬか床は今も現役で頑張っております。
最近はあまりいじらず、毎日かき混ぜて水を抜くだけ。塩分も控えめ。
食べてくれた人はおいしくなったとほめてくれた。