第1話 始まりの景色
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夢の中なのだろう…か。
「うっ」
まばゆいばかりの黄金の朝日があたり一面を照らす。
手を傘にして目を凝らすと目の前に壮大な景色が広がっている。
はるか彼方には青々とした山々が眼下には一筋の大河が流れている。
その木々の葉一つ一つ、川の水面の波の一つ一つに朝日が反射して光を増し加えている。
「ほぉ」
ため息がもれる。
その美しさに。
カチャリ
と隣から音がする。
その音にそって視線を横に向けると、薔薇色の鎧に身を包んだ騎士がたたずんでいる。
同じタイミングでこちらに顔を向ける。
表情は兜に覆われていて伺い知ることはできない。
しかし、唯一見える瞳は温かさをたずさえている。
自分もこんな騎士になりたかったのだとふと思う。
それを目指していた今の自分を確認しようとする。
自分に意識を向けようとする…
ここで意思が途切れる…
再度深い眠りについたのだった…
「………」
窓から差し込む朝日で目が覚める。
「ううぅ」
何かとても重要な夢を見ていた気がする。
思い出したいのに思い出せない…
しかし、1つだけ心に残っていることがある。
『こんな騎士になりたかった』
俺は昔から騎士に憧れていた。
俺が騎士に憧れたのはいつからだろう…
そうだ…
それは子供の頃親父から聞いた昔話だったかな。
親父の話を思い浮かべる。
親父が20代だった頃。
ちょうど20年前、世界中にダンジョンが出現した。
突然のこと、そして未知との遭遇とのこともあり世界は混乱を極めた。
初めは多くの人たちが刺激と好奇心に導かれダンジョンに殺到した。
その結果、あるものは財宝を、あるものは名声を得た。
自分の命を失った者も少なくなかった。
それだけで済めばよかったのだが、それで終わりではなかった。
ダンジョンは命を吸っていた。
命を吸いすぎたダンジョンはモンスターを吐き出した。
ダンジョンはモンスターが溢れ、外の世界に出れるものまで現れた。
そして、人は世界の1/10を失った…
混乱と被害を受けたのは親父もそして当時付き合っていた母親も同じだった。
ちょうどそのころ手元に謎のオーブがすべての人に届いていた。
そして、そのオーブからモンスターを召喚できることを究明者と呼ばれるグループが突き止めていた。
親父には究明者の友達がいていち早くその情報を教えてもらっていた。
親父と母親は家に立てこもり侵入してくる敵を召喚したモンスターと共に撃退していた。
「もう限界だわ、アズマさん!」
「しかし!」
食料も少なくなり、モンスターもどんどん強くなっていく。
そして、二人も世界も絶望したとき…
白銀の騎士が現れた。
世界のいたる所に現れた彼ら、彼女らは瞬く間にモンスターを殲滅し地上に平和を取り戻した。
それから20年、世界は大きく変化した。
世界はダンジョンとの付き合い方を学び、安定した。
よくある話だが、モンスターによる被害が出ないように冒険者という職業ができた。
白銀の騎士は平和を見届けるといつしかいなくなった。
親父のモンスターもいつの間になはぐれてしまったらしい。
そう熱く語る親父を見て俺は騎士に憧れた。
最近は冒険者になることばかりに気を取られていて、長いこと忘れていた夢だ。
恥ずかしくて誰にも言ったことはないけれど。
「…」
そんな俺の名前はアズマ ヒガシ。
1週間後の入学式を迎えると晴れて高校生になる15歳だ。
今日は俺にとって記念になる日だ。
何故からその冒険者になれるかどうかの運命の日だから…
世界では16歳になる年の3月の最後の日に一つのオーブと2枚のカードがどこからともなく届くようになった。
オーブには共に生きるパートナーが、カードには身を守るアイテムが刻まれていた。
「今日は、待ちに待った日だ。高望みはしないから、せめてEランクのモンスターが欲しい。」
パートナーとなるモンスターはA~Gランクまであり、Eランクなら冒険者となりダンジョンに挑戦することができる。また、冒険者になる必須条件でもあった。
オーブやカードの中身は定まっておらず、ランダムだった。若者たちにはこう呼ばれていた人生の決まるターニングガチャと…
いいパートナーに出会えたら来週からの高校で自慢できるなーとか、かっこいいのがいいなーと期待を膨らませ妄想していると。
「!」
突然、目の前に小さな魔法陣が現れ、パッと見も眩むような光を放った。
「…」
目を開けてみると…
そこには黒色のオーブと2枚のカードが落ちていた。
そう、黒色だ。
「あっ、ブラック!! 終わった…」
吾妻 東の輝かしい青春は砕け散った。
なぜなら、黒色のオーブは最低ランクのGランクなのだから。
ちなみに。
A 白色
B 黄色
C 黄緑色
D 緑色
E 深緑色
F 灰色
G 黒色
となっている。
もちろんGランクのモンスターでは冒険者にはなれない。
高校でもいじめられる可能性すらある。
膝から崩れ落ち、一筋のきらめきが頬を流れ落ちる…
そこには、少年と太陽の光を反射して赤黒く輝くオーブが残るばかりだった。
そして、少年は思った。
来週から始まる高校生活をどうしようかと…
初投稿になります。
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