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2・弁慶を探し候らゑど

 南下すればいいと言われたので南下していったのだが、途中で僧兵が誰何してきた。


「まて、そこの妖装!」


 そいつは弁慶には見えない。問いたかったが向こうは数が多いのでここは一気に加速して逃げ切ることにした。


「待てと言っておろうが!!」


 少し付いて来ようとしたが、何とか引き離すことに成功した。あの僧兵もやはり妖術使いなんだろうか?


 僧兵を引き離して少し山を下りて進むことにした。琵琶湖畔を進むのだから道を間違えることもない。多分・・・・・・


 異世界かと思ったら1000年前の日本、しかも、なんか魔法みたいなものがある世界らしいというのに驚きもあったが、暮らしぶりはきっと普通に平安末期なんだろうな。でも、田畑の周りにある家は竪穴住居なんだが?どういう事だろうか。


 まあ、あまり考えてはいけないと思い、妖装に任せて山すそを走り抜けることにした。



 気が付くと琵琶湖畔に街並みが見えて来た。この時代の大津だろうか。という事は、ここから山を越える街道があり、京へ入れるはずだ。


「すまぬが、京は五条にツワモノを求めて出没する悪僧が居るという話を知らないか?」


 推定、大津の街でそんな事を聞いて回ってみたのだが、誰も知らないとの答えしか返ってこない。


 時代が時代だけに、そう簡単に京都の噂が大津に広まる事もないんだろう。


 のんびり街道を行こうかと思ったが、どこの武士かわからないが、見回りしているのが居たので山へ迂回するように逃げ込んだ。

 大津から京都は峠を超えればすぐだった気がする。京都に土地勘が無いので確信はないが、たぶん、きっと・・・・・・


 山を下りると都というには程遠い光景が広がる盆地だった。道を間違った覚えはない。


「すまないが、五条の・・・・・・」


「ここは山科やで、都はあの山の向こうえ」


 そんな返事を受けてその盆地をさらに西へと進み、山を越える。


 なるほど、確かにそこには街並みが見える。


 よく見ると街道らしき道と橋が見えており、きっとそれが五条大橋なんだろうと当たりを付け、そこへと向かう事にした。


 そう言えば、山で山賊がくれた路銀も残り少ない。寺に帰る訳にも行かないだろうし、何かするなら弁慶に会うのが近道だと思うが、義経っていったい誰にどう案内されて弁慶に会ったんだ?その後、どうやって奥州まで旅をしたんだろうな。謎ばかりだが、もしかして、あの三郎とか言うヤツを置いてきぼりにしなければ、奥州まで行けるのかもしれないが、今となっては彼を探す事の方が大変かもしれないな。


 弁慶がいつ、どうやって五条の橋に現れるのか分からないのでとにかく待つしかない。弁慶との出会いは偶然だったんだろうか?

 だとすれば、史実だか物語のように僕が弁慶に会うのはなかなか骨が折れることになりそうだが。そもそも、これからどうすべきか、それすら実は考えていない。


 

 街を少し外れてしまえばマトモに生活しているのかよく分からない者達の姿と竪穴式住居が未だに散見できるこの世界。山賊や野盗だろうか?それとも、平氏の見回りだろうか、武器を持った連中が時折うろついているのを見る事が出来る。まあ、他人の事は言えないが。


 数日にわたって目につく連中とOHANASIして銭や食料を恵んでもらいながら弁慶を待った。


 本当に千年前の義経はこんなことをしたんだろうか?あの、三郎とかいうのが実は弁慶のモデルで、こんな偶然を求めて都に下りずに奥州なり関東なりを目指したんじゃないのか?


 僕はそんな疑問に駆られている。本当に此処に居て良いのだろうか?かといって、どう云うアテで奥州へ行ったのか、行くなら木曾義仲とか居るから、木曾に源氏が居るんだろうし、何なら、鎌倉あたりに行けば兄の頼朝が居るんではないのか?


 そうすれば、いや、そうならないように僕たち源氏の有力子孫をバラバラにしたんだろうと思う。ならば、どこかで合流したと知れた時点で追討令が出るのかもしれない。歴史は良く知らないからその辺りは良く分からないけど。いや、記憶がないだけかもしれない。


 寺を出てすでに半月くらいになるだろうか、妖装と長刀を持つ以外に持ち物は道中で山賊、野盗に恵んでもらってばかりだ。


「お前、五条の橋でツワモノを待つという悪僧か?」


 また恵んで貰えないかと野盗を探していると、少年から声を掛けられた。どうも同じくらいの年に思える。


「そうだ、五条の橋に居れば、寄って来るらしいから、こうして待っている」


 弁慶って小柄な少年だったのか?昔見たドラマやマンガだと巨漢の僧兵であったはず。これではまるで、コイツが牛若丸じゃないか。


「そうか、では俺と力比べをしようじゃないか」


 いや、色々待ってくれ、そうなると、俺が弁慶でこいつが牛若。物語どこ行ったよ?いや、妖術なんてのがあるのが問題なんだ。俺がシャナオーとか呼ばれる存在なのが問題なんだ。多分・・・・・・


 だが、この少年は俺の困惑など無視するように手にした刀を振り上げた。


 仕方がない。いつものようにOHANASIすればそのうち通じるだろう。


 刀を避けて僕も長刀を振り回す。OHANASIメインなので刃先を相手に向けたりはしない。


 が、そんな事を考えている間に刀を翻して斬りかかってきた。なんだコイツ。マヂで牛若じゃね?つか、牛若って僕のはずなんだが。


 躱し、弾き、そして突き入れるがひらりと躱していく。ヒラヒラと舞、一気に刺してくる姿は本当に蜂か何かだよ。まさに牛若とはコイツの事ではなかろうか?


「チッ」


 避け損ねた僕は石突ではなく刃で相手を薙いだ。そうしないと余裕が無かったからだ。


「やるな、悪僧」


 どうやらあれを躱した・・・・・・


「おま・・女?」


 相手は着ていたモノが切れていた。肩口から腹まで丸見えな訳だが、男じゃないよね、どう見ても。


「だから何だ・・・って、やりやがったな」


 今気づいたらしい。


 どうやら冷静さを失い猪突してくる少女へと長刀を振り、力任せに突進を続ける体を弾き飛ばした。


 見事に横へ弾かれて着地に失敗したところへ僕も飛んだ。


「くっ、俺が負けるか。頸を取るなり辱めるなり好きにしやがれ」


 そう言って大の字になる少女。


「それより、弁慶という名を聞いた事は無いか?」


 覚悟を決めた顔をしていた少女は呆気にとられ、そして、ハッと気づいてはだけた布で胸を隠した。


「べんけい?聞いたことが無いな。ここでツワモノを待つ奴が居るというから力比べに来たまでだ。お前がそのツワモノなんだろう?そのべんけいとは何者だ?」


 こちらを窺うように聞かれたが、どう答えれば良いのか分からない。いや、素直に聞いてみるか。


「弁慶というのは、ここでツワモノを相手している巨漢の僧兵のはずだが」


 そういうと、呆れた顔で見返してきた。


「巨漢の僧兵とはお前ではないか。しかも、ここ最近、この辺りで野盗や無頼の兵を相手にしていたのではないか?」


 まあ、そうなんだが、話がかみ合わねぇ~


「それはそうだが、僕は牛若という。まさか、君が武蔵坊とかいう名前ではないよな?」


 そういうと、ため息をつかれた。


「むさし坊?そんな訳あるか。俺の名前は・・・・・・、一応静といった。白拍子などに興味は無いから武芸の修練をしている身だ」


 おいおい、静っておま・・・・・・



 なぜかここで静御前かもしれない少女と出会ってしまったのだが、これは日本の歴史として正しいんだろうか?

 



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