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1・何かとんでもない事になって候

勢いあまってやった。後悔はしていない。

 あ~あ。


 気が付いたら山の中にいた。いや、正確には寺だ。僧門に居るようだが、シャナオーとか呼ばれているので自分は王様なんだと思っていたんだよ。


 しかし、どうやらただのガキでしかないらしい。


 少し違う事と言えば、周りの目が異様にギラギラしていて、気を許すとすぐに迫ってくるハゲが沢山居た。男に寄って来るとか何なんだ此処は。


 何とかケツを守りながらその中で耐えてみたが、そもそも僧侶なんて柄じゃない。そこで僧兵の修練を願い出てみたが、なぜか許可が下りない。と言っても、勝手に参加することは何故か黙認されたので、参加してみたが、周りに比べてひ弱なせいか付いて行けなかった。


 ただ、ある時、自分が長刀(なぎなた)に魔力みたいなものを流せることに気が付いた。


 長刀が軽くなると、ついでと思って防具にも流してみたら、軽くなったどころか、力も出せるようになった。


 僕は思ったね。「コレ使えば具足がパワードスーツになるんじゃね?」って。


 そこでありあわせの材料で骨格化してより強固なパワードスーツを作り上げてみたんだ。


「遮那王よ、其方、僧兵になると言いながら、妖術を用いた妖装を作ってしまいおって。まさか、山を下りて父の敵を討とうというのではあるまいな?」


 偉い坊さんにそんな事を問われてしまった。シャナオーって誰か分からないんだけど、父の仇?やはり、僕は何かおかしな異世界に来たことをこの時確信したんだ。




 それからしばらくは寺で妖装と呼ばれたパワードスーツの改良に勤しんだ。何故か下界との関係を遮断された気はしたが、気にはならなかった。父の仇とやらの話が出たのだからきっと誰かが接触して来るという事なんだろうと思った。


 僕はそんな事はどうでもよかった。なにせ、この世界の住人ではないのだから。父は日本に居るはずだ。ここの人間ではないだろう。僕の名前はシャナオーとかいうアニメの主人公やどっかの王様ではないのだから。多分・・・・・・


 というのも、21世紀前半に生きた記憶はあるんだけど、誰だったかの詳細は覚えていない。日本に生きた記憶というのがあるだけ。まさか、ラノベみたいに転生できるとは思っていなかった。気が付いたらここに居た。

 ラノベ特典よろしく言葉は通じるし文字も日本語にしか見えないが、日本というより中国っぽい気がしてならない。

 言葉や文字が分かるのは、認識()()()()?とか言うヤツで日本語と認識しているに過ぎないのかもしれず、ここが中国や朝鮮みたいに思えるのも、実はその()()()()かもしれない。もしかしたらヨーロッパや中東なのかもしれないんだ。



「遮那王様」


 ふと、小声でまたシャナオーと呼ぶ声が聞こえた。しかも、夜中にだ。まさか、とうとう堪え切れない変態に襲われるんだろうか?と身構え、長刀を手にした。


「誰だ」


 小声でそう返すと、姿を現したのは見慣れない僧だった。


「私は唱門と申します。いえ、三郎と言った方が良いでしょうな」


 そう言ってその僧は俺が源氏の血筋で牛若という者だと告げた。


 牛若ってお前・・・・・・


「お前、私にそう吹き込んで何がしたい?父の仇うちか?」


 そういうと、わずかに驚きながらも顔を喜色に染めた。


「存じておいででしたか。ならば話は早うございますな!」


 牛若、牛若、誰だっけ?


 あ!弁慶だ!そう、弁慶の泣き所!!


 という事は、僕は義経?イヤイヤ、冗談はよせよ。


 コイツが夜な夜なやって来るようになると他の僧や僧兵も何を勘違いしたのか僕に言い寄ってくるようになった。一体何がしたいのか分からないが、とにかく長刀の修練に励み、言い寄る連中を練習台にして構わず弾き飛ばしてやった。喜ぶ奴が居なかったのは幸いだ。


「若、どうやら平氏に私の事がバレたようにございますれば、ここを出て身を隠した方がよろしいかと」


 三郎が言うには事が露見したとか。どうやら僕たちの身が危ないそうだ。


「何?寺に居ては殺されるというのか?」


 そう言うと頷くので、僕はすぐに妖装を纏い、寺を抜け出すことにした。


 ん?あれ?三郎どこ行った?


 妖装で全力疾走したら三郎がどこにも居なかった。今までわざわざ寺を逃げ出そうとか考えていなかったので気にしなかったが、ただの強化鎧という一般的な妖装とはけた違いのシロモノになっていることを忘れていたんだ。


 しかも、当てもなく飛び出した結果、山で遭難している。ここがどこかも分からない。


「まず、そういえば、弁慶に会う必要があるんだよな。義経と言えば弁慶だから」


 などと、僕にはこれと言った知識はないが、義経と言えば弁慶なので、京のどっかの橋で弁慶と戦う必要があることに思い至った。


 弁慶と言えばそう、強い奴を橋で待ち構えて試合をして武器を奪ってるんだったと思う。この頃は。なんだかただの盗賊にも思えるが、それが何で美化されたんだろうな?


 とにかく京へ行きたい。そう思って弁慶の事と京への道を会う人々に聞いてみたが、要領を得ない。いや、ここは京ではないというんだ。


 とにかくよく分からないが目の前の山を越えることにした。妖装ならばそんな事は容易い。


「ここは海?じゃないな。琵琶湖か?」


 目の前に広がる光景を見てそう思った。京って琵琶湖からどう行けば良いんだっけ?土地勘が無いからさっぱりわからん。


「山ん中に······、なんだ、悪僧か?一人だ!囲んじまえ!!」


 悩んでいると山賊っぽい連中に囲まれた。まあ、見るからに僧兵然とした外装にしているからそう見えるし、それは事実と言って差し支えが無いだろう。


「その刀と金目のモンを置いて行け」


 そう言う山賊たちと少しOHANASIすることにしたが、彼らは非常に素直だった。


「すまないが、京への道案内と路銀を恵んではもらえないか?」


 そうお願いしたら、クマやコブだらけの顔で素直に応じてくれた。山賊なのに素直な人たちで良かった。


 彼らが言うには、ここから南へ下れば良いらしい。なるほど、山を縦走するか。 

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