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リタという教師

翌日


「ねぇ、リタ先生ってなんでローブで顔隠してるんだろ」


「見られたくないものでもあるんじゃない?」


「突然あんなことを言い出す奴だ、ろくな奴じゃないよ」


教室はリタのそんな話題でもちきりだった。


「やぁ諸君、まさかまだ真面目に授業を受けに来るとはね、数名は来ないかと思ったが、どうやら根性はあるらしいな」


じー


生徒の視線はリタへと集まる。その異変に気づいたのかリタも生徒達を見回す。


「なんだ、私の顔に何か着いているのか?」


「あの、先生、なんでローブで顔を隠しているんですか?」


「悪いか?」


「いえ、気になったもので」


「それで先程からジロジロと見ているのか、別に自慢出来るような顔ではないから見せる必要もないだろう」


「貴方本当にここの教師なんですか?昨日の発言といいその身なりといい怪しすぎます」


「そうだ」


「やれやれ、なら顔を見せれば満足するのか?」


「少なくともここの教師である事は後で確認できます」


リタはため息をつくと、顔に巻いているローブに手をかける。


顔を覆っていたローブが解けると、その下の顔が姿をあらわした。


「どうした、見せてやったぞ」


白髪の長い絹のような髪、透き通るような白い肌はずっとローブを被っていたせいだろうか、日焼けの後すらない。まさに美少女とはこの事だろうか、その容姿とは裏腹に赤く鋭い目はより彼女を美しく見せていた。


生徒達は、そのあまりの美しさにただ魅入っている。


「全く、見せろと言うから見せたのに何奴も此奴もただ口を開けたまま固まりおって」


リタは再びローブで顔を覆った。


「ちょ、ちょっと待ってください。色々言いたいことがあるのですが」


「すっごい美人」


「何あれ、同じ女子とは思えない…」


「なんでそんなに美人なのに隠すのですか?」


「言っただろう、自慢出来るようなものでもないと、顔がいいからなんだ?魔術と関係あるか?私にはもう不要なものなのだ」


「リタ先生っていくつなんですか?どう見ても私達と同い年かそれ以下に見えるんですけど」


「年齢などどうでもいい、お前達の想像に任せる」


「どうでも良くない!!」


そう叫んだのは昨日、自称天才を気取っていたロナックだった。


「僕らと歳も変わらない奴がここの教師だって?そんな事があるはずが無い!!ここの教師は、世界中から選ばれた知名人ばかりのはずだ。その歳でなれるものか!!」


「確かに私はここの教師には相応しくはないかもしれん、だが魔術師としてはお前達より遥かに上だと断言しよう」


「なら、証明して下さいよ。貴方がどれ程の魔術師なのか、今ここで」


「それならもうしているだろう」


「っつ!」


ロナックは何かを察したかのように黙り込んだ。


「なんだよ、何もしてねぇじゃねえか」


「これだから馬鹿は…」


「なんだと!?」


「あいつが昨日お前に使った奴だ」


「声が出なくなるあれか、だがそれだけだぞ」


「お前は本当に馬鹿だな、声が出ないとは詠唱が出来ないと言うことだ、詠唱が無ければ魔法も使えない。それに自分で発動する魔法に対して、相手を強制する魔法は遥かに難しい、そこいらの魔術師じゃ到底無理なんだよ。それを僕達全員に一度に掛けたんだ」


「ほう、流石天才を気取るだけはあるな」


まてよ、奴はあの時詠唱していなかった。なのにどうやって僕達に魔法をかけたんだ?


「顔も見せた、実力も証明したこれで満足か?」


もう誰もリタに反論出来るものはいなかった。


「さてと、今日も自習…と言いたいところだが、ある程度しておかないと何かとうるさいからな、教科書の4ページを開け」




キーンコーンカーンコーン


「む、もう時間か今日はここまでとする。私はこれから用事があるのでな、それでは諸君また明日」


「なんか全然授業内容頭に入ってこなかった」


「俺も」


「すっげぇ可愛かったよな」


「まったく男子はこれだから」


「でも可愛かったのは確かね」


「異国の人かな?この辺りじゃあんな肌と髪の色をした人はいないよね」


「アルビノってやつかな」


「でも目は赤だよね」


「やっぱりあの先生怪しいよ、ロナックが言った通りあんな身なりでここの教師になれるはずないよ。きっとまだ何か秘密を隠してるに違いない、やつが本当にここの教師なのか調べようぜ」


「調べるって、どうやって?」


「今日は用事があるって言ってたろ?つまり奴は今いない」


「おい、まさか」


「あいつの部屋はこの校舎の中にあるはずだ」


「そんな事したら怒られるよ?」


「バレなきゃいい」


「そんな上手くいくかなぁ」


「嫌な奴は来なければいい、俺は行く」


1番に部屋を出ていったのはシーザーだった。他の者もそれに続くように教室を出た。


「確かここのはずだ」


リタの部屋は四階にあった。ここは普段生徒は立ち入らない使われていない教室や、物置なんかになっている。


シーザーはドアノブに手をかける。ドアノブは簡単に回るとギギギという音が鳴り響く、どうやら鍵は掛かってないらしい。


「ほ、本当に入るのか?」


「なんだよお前ビビってんの?」


「だってあのおっかない教師だぞ?もしバレたりしたら」


不安がる生徒を横目にシーザーは真っ先にドアを開けた。ドアは傷んでいるのかギィーという音をたてる。


「探知系の魔法は使ってない、大丈夫だ」


部屋の中は狭い、と言うより本やよく分からない物で溢れていてそれらが部屋を圧迫しているといった感じだ。


「よし、手分けして何かないか調べようぜ」


「待てよ流石にこの人数で荒らしたらバレるんじゃないか?」


部屋の中にいるのは、シーザー、スカディ、ロナック、イノセンシア、アンブレシオ、ティナの6人。


「じゃあ、3人外で見張っててくれよ」


「じゃあ、俺見張りしとく探索系の魔術得意だし」


真っ先に手を挙げたのはアンブレシオだ。それに釣られるかのようにイノセンシア、ティナが手を挙げる。


「よし、じゃあ行くぞ」


部屋に入ったスカディは、何やら懐から取り出す。それは緑色に怪しく光る玉のようなものだ。


「それ魔道具?」


「うん、もしかしたら罠があるかもしれないし、魔力反応や魔法を使うと赤く反応するの」


シーザーは真っ先に奥にある机へと向かった。机の上にも所狭しと本が積み重なっていて今にも崩れそうだ。その中で1つ目につく。


「時計か?それにしても随分古い時計だなこんな時計見たことないぞ」


時計をまじまじと見るが、壊れているのか秒針は止まったままだ。特に変わったところは無い。時計を元あった場所に戻すと再び辺りを見回す。散らばった本は使われていないのか、ホコリを被っているものも多い。その中でホコリを被ってないものを見つけた。


「アルバム…か?」


ペラペラとめくる。そこには笑顔で写るリタの姿があった。


「おい、コレ見てみろよ」


「何それ、アルバム?」


「うん、でもこれ最初の方のページは卒業式みたいなので同い年くらいの人が写ってるけど、後半は爺さんや婆さんと写ってるのばっかだな」


「ここに来る前は、老人施設にでも居たんじゃない?」


「おい、これおかしくないか」


「ん?」


「確か、この校舎20年前くらいに増築したんだよ、でもこの写真本当ならここには東塔があるはずなのに、写ってないよ」


確かにその写真にはあるはずのものが写ってない。


「ってことは、この写真20年以上前の写真って事?リタ先生何歳だよ」


「本当は40くらいだったり、若づくりしてるんじゃない?」


「…」


おもむろにその写真を取り出す。写真は色褪せていて白黒にしか写っていない。しかし、シーザーは裏を見た瞬間息を詰まらせる。


「どうした?」


「こ、こここれ見てみろよ」


「なに、魔術師学校第1回卒業生…えぇ!?第1回って、確か今年が104回だったよね!?」


「えっと、何年前だ?」


「少なくとも100年以上は前だ…」


「じゃあ何だ?先生はあの見た目で100歳もさばよんでるってか?そんな馬鹿な、いくら若づくりしても誤魔化せないぞ、そもそも人ってそんなに生きられるのか?」


しかし、写真の中で微笑むのは確かに今現在のリタそのものだった。


「分かった。先生の御先祖とかじゃないかな」


「にしても似すぎでしょ、目の下のホクロまで一緒だし」


???「乙女の部屋に勝手に忍び込むとは、けしからん奴らだな」





外に待機している3人は手分けをする事にした。1人は階段、もう1人はドアの前、最後の一人は窓の外を見張る。アンブレシオは探知系の魔術を得意としていた。範囲以内に自分達以外で動くものがあれば即座に感知することが出来る。


ふと3人しか居ないはずのリタの部屋に今まで全く動いていなかったものが高速で移動した。


部屋の中にいた3人はその声に振り向いた。それと同時にドアが開き、アンブレシオと目が合う。


「今、部屋の中を何か高速で移動した…ぞ…」


アンブレシオはその瞬間固まってしまう。どうやら視線は3人の後ろにあるらしい。3人は恐る恐るアンブレシオが見つめている方へと振り返った。机の上にローブを被ったリタが立っている。


「…」


スカディは、手に持っていた魔道具を見るが緑色のままなんの反応も示していない。


「せ、先生どうやってここに」


外には見張りがいた、スカディの魔道具もアンブレシオの探知系魔術も何も反応しなかった。


「私か?私なら最初からこの部屋にいたぞ」


「そんな…」


「さてと、お前達の言い訳を聞いてやろうか、まさか迷子になって入ってきた訳ではあるまい?」


「先生に忘れ物を届けに来たんですよ」


そう言い出したのはロナックだ、勿論それが嘘だとその場の誰もが思った。


「はて、何か忘れたかな?」


「はい、この青いノート先生のですよね」


いつの間にかロナックの手に持っていた物は青いノートだ。


「ふむ、それを届けるためにわざわざ部屋に来たと」


「はい、先生は用事があると仰っていたのでもしかしたらこのノート、大切な物なのではないかと思いまして、一刻も早く届けようと思ったのです。部屋の中に勝手に入ったのは謝ります」


「くくく、あっははは」


「何が可笑しいんですか?」


「いや何、私は先程の授業で青いノートなんぞ持っていないぞ」


「いいえ、確かに持っていましたよ?なぁ、皆」


「う、うん」


「俺も見た」


「ほら、皆見たと言ってるじゃないですか」


「ほう、考えたな。だが残念だったなそれは私のノートではない」


「そんなはずは、だって…」


()()()()()()()()()()か?なら中を確かめるがいい」


ロナックは慌てて中を確認すると、何やら文字が書かれてある。


「これ、今日の授業のやつだ。この字私のじゃない!…あ…」


そう言い出したのはスカディだった。


「いつの間に」


「さて、他に言い訳はあるかな?」


「…」


「君たちには少しお仕置が必要なようだ」


「何をするんですか?退学させる気?」


「そんな事はしないさ、そうだな、今日は天気がいい午後は自習の予定だったが、実技訓練に変更だ。6人とも表に出ろ」

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