九話 芽生えた恋と不穏
短いですがここから急展開です!ご期待ください!
──ゴブリンって強いな…いや、僕が弱いだけか。みんな無事に逃げられたかな…心配だ。
──あれ、なんであれこれ思考できるのだろう…
僕は目を開けようとする。すると、眩しい光が眼球の裏側に刺さるような感覚に目を閉じる。
「──ゆき…ん…雪くんっ!」
──なにやら声が聞こえる…この声は、
「………美鈴さん…?」
「雪くん!よかった…!」
目の痛みを我慢して開くとその瞬間、美鈴さんが抱きついてきた。寝ている状態の僕は起き上がることもできず、しばらくわんわんと泣く美鈴さんにされるがままだった。
しばらくたって、美鈴さんが僕から離れた。目元は少し赤くなり、恥ずかしそうにして俯いている。
「ご、ごめんなさい…私、雪くんの目が覚めたの嬉しくって取り乱しちゃった…」
「いいや、大丈夫だよ」
俺は首を振る。すると少し体が重いのを感じた。多分長い間眠っていたのだろう。
「あのね…!伝えたいことがあるの」
「ん?なにかあっあの?」
「ううん、そういう事じゃなくて…雪くん、助けてくれて…ほんとうに、本当にありがとうございました!」
椅子に座っていた美鈴さんは立ち上がって深々と頭を下げる。
「あっ、いや……うん。無事でよかったよ」
ここでお礼の言葉を受け取らない方が失礼だと感じたので素直に受け取る。しかしなかなか頭を上げない美鈴さんに話を変えるように促す。
「ところでさ…僕が倒れたあと、どうなったの?」
この部屋は見る限り僕が貸してもらっている部屋で、美鈴さん一人だった。
美鈴さんはようやく頭を上げると、話してくれた。
神崎さんたちが地上に戻っている途中でゴブリンに襲われていた僕達と遭遇して、助けてくれてたそうだ。僕は丸一日寝ていたらしい。身体が重いわけだ。
「白石さんが魔法で雪くんの胸の傷を治してくれたんだよ」
「あ…」
そう言えば胸を切られていたことを思い出し、胸を触ってみる。傷口は完全に塞がっていて、傷跡すら残っていない。
白石さんにはこの後お礼を言わなきゃいけないな。
「あのさ…綾香さんって何処にいるか分かる?」
「うん、分かるよ。綾香さんならアルベルト教官のところに、今回の事故の原因は武器のせいです!って言って談判しにいったの。30分前くらいに出ていったから多分そろそろ帰ってくるんじゃないかな?」
時間があれば綾香さんとこうして見舞いに来ていたそうだ。
綾香さんと二人でいる時に、僕の木刀がゴブリンにあっさりと切られてしまったことを話したら怒って出ていってしまった言う話だった。
「綾香さんも泣いて悲しがっての。目覚めたって聞いたらすごく喜ぶと思う」
「そっか……僕、綾香さんを探してくるよ」
「えっ!?待ってようよ!一日寝込んでたんだから身体もきついだろうし…!」
「ごめん。行かなきゃ」
綾香さんは僕を守るって約束をした。それを守れなかった綾香さんは自分を責めているかもしれない。
もしそれが杞憂だったとしても、いち早く無事だと伝えたかった。
「雪くん…あ、あのさ…もしかして雪くんと綾香さんって付き合ってたりする…?」
立ち上がろうとする僕の袖を美鈴さんが引っ張って止める。なぜこのタイミングで聞くのかよく分からなかった。
しかし、美鈴さんの真剣な表情にちゃんと答えないといけないと感じた。
「……うん、そうだよ。一昨日から付き合い始めたんだ」
口に出すと小っ恥ずかしくて僕は美鈴さんから目を背ける。
「そうなんだ…。いや、綾香さんも雪くんもお互いのことすごく心配そうにしてるからなんでかなーって思っただけだから!引き止めてごめんね?」
そうだったかのか。綾香さんも僕のことを思っててくれたことに自然と口元が緩んでしまう。
「だからさ!早く行ってあげよ!」
「ちょっ、押さないで」
美鈴さんは僕を立ち上がらせて急かすように背中を押してくる。
僕の部屋なのに追い出されたみたいな形で外に出て、バタンとドアを閉められた。
様子がおかしかったけど…僕が何かしてしまったのだろうか?
アルベルト教官のいそうな訓練所へと少しもたつく足で歩いていった。
──────
「────私…好きになっちゃったよ……」
その言葉は一人部屋に静かに消えていった。
──────
「あの準備はできてるか?」
「はい。こちらに準備しております。」
「──それと、あれはそろそろ不快になってきた。計画の邪魔だし、あれ、お願いね」
「承知しました。明日に実行致します」
「ああ。頼む」
「あっ…あの。準備するのに大変だったんです…卑しい私にご褒美を…」
「しょうがない雌豚だな。時間が無いんだ。ほら、さっさと服脱げよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
服を脱ぐ音が薄暗い部屋に響くと思うと、脱ぎ終わるを待たぬまま女の嬌声が聞こえ始めた。
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