六話 ダンジョンの道中
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晴れて綾香さんと僕は恋人同士となり、あの後、手を繋いで部屋に戻った。
綾香さんを部屋に送っておやすみを言ってから自分の部屋に行く。
部屋に戻って扉を閉じた瞬間、僕は人生初の彼女に喜びをを抑えきれず、ベットの上で暴れまくった。ここに来て大きすぎるベットが役に立った。
暴れまくって疲れた僕はいつの間にか寝ていたようで、目が覚めた瞬間昨日の出来事が思い出されてまたじたばたする。
あー…やばい。今日はダンジョンに行くというのにこんなに浮かれてていいのだろうか。
昨日の疲れはさっぱりと消えていて体調は良好と言っていい。僕は寝間着から着替えて、顔を洗い、メイドさんに用意してもらった遠征の荷物を持って集合場所に向かった。
さっき鐘が鳴っていたからあれが起床時間だ。そこから1時間ほどだっただろうと判断した。
僕はまた似合いもしない煌びやかな服をたなびかせ、集合場所の城の門の前に着いた。
そこには既に半数以上の生徒が揃っており、みんな待ちきれないといった表情で雑談していた。
「あ、ゆきくん!おはよう!」
「綾香さん。おはよう」
一人隅の方で本を読んでいた綾香さんが駆け寄ってきた。僕の彼女は今日も可愛いです。
「その本ってこの世界の?」
「うん、そうなの。メイドの人に教えて貰って、すごく大きな書庫があって、いっぱい本があったの!移動中にいっぱい読む!」
綾香さんは興奮して自分の荷物に入っている本を次々と僕に紹介していく。
「…でこれはね!恋愛騎士物語って言ってね!……あ、ゆきくん。ごめんね…自分勝手に喋っちゃって…」
綾香さんは申し訳なさそうに言う。
「いいや、すごく可愛い……え、僕今なんて」
僕は口に手を当てて抑える。綾香さんが、一生懸命僕に伝わるように本を教えてくれる様子が可愛かったと思ってたら、思わず口に出してしまった。
「え、えっと…可愛い…って言いました…」
「う、うん。思ってたことが思わず口に出ちゃった…ごめん」
僕らは顔を赤くして俯く。しばらく動けなかった二人は黙ったまま時間を過ごした。そこには決して居心地が悪い訳ではなく、内気な性格の僕らには心地よい空気だった。
ここでやっとこの止まった時間を流れる。
「みんな!集まったようだな!予定より少し早いが出発とする!ダンジョンは危険度の低いところで国が管理できている場所だ!そこに馬車で向かう!馬車は4人乗りだ!10車用意した!各自乗り込んでくれ!」
アルベルト教官がそう言うと、さっきまで閉まっていた門がゆっくりと開き始める。大きな門を人力で開けているのだ。時間がかかる。
僕は隣にいる綾香さんに話しかける。
「綾香さん、一緒に乗ろうよ」
「うん。もちろん!」
綾香さんは荷物入れから取り出した本を仕舞っていく。門が開けるとそこには既に馬車が用意されていて、綺麗に並んでいた。よく飼育されているのだろう。
「おはようゆきくん!綾香ちゃん!一緒に乗ろー!」
「白石さん!?」「結衣さん!?」
後ろからいきなり白石さんがやって来て僕らはびっくりする。周りも白石さんの大きな声でこちらに目を向けてくる。
「二人で乗ろうとしてるんでしょ?一緒に乗せて!」
白石さんが近づいてきて手を掴んできた。周りから嫉妬の声や視線を感じる。それと合わせて隣から不穏な空気を感じる。チラッと見ると綾香さんがジト目で僕を見ていた。
「分かった!分かったから手を離して!」
「やった!ありがとう、ゆきくん、綾香ちゃんも!」
僕がため息をつくとまたやってくる人が、
「それなら俺も乗せてくれ。俺のチームメイトが二人もいるんだ。不都合はないだろう?」
やってきたのは光の勇者、神崎 誠だった。
◇
日本のように完璧に舗道されていない道を馬車がガラガラと音を立てて進んでいく。外を見ると西洋風の服を身にまとった多くの人が歩いている。街の喧騒がよく聞こえる。
エルドランド王国は人間界でも、栄えた王国として、外の国や村などから多くの人が訪れる。冒険者ギルドや魔道士ギルド、錬金術師ギルドなど、多くのギルドの本部が置かれているそうだ。馬車の御者が教えてくれた。
僕ら4人、隣に綾香さん、僕の向かい側の席に白石さん、白石さんの隣に神崎さんが座った。この席順は僕と綾香さんが隣同士を希望して、白石さんが僕の向かい側を希望したことによって決まった。
本当は白石さんが僕の隣に座りがっていたが、神崎さんが白石さんを宥めてくれて渋々諦めたという事情があった。
「橘くん。いつも以上に綾香と仲が良さげだけど、なにかあったのかい?」
「あ!それ私も思ってた!」
神崎さんと白石さんが僕と綾香さんの様子を見て質問してきた。僕はどのように答えるか迷い、隣の綾香さんをチラッと見る。
すると綾香さんがいきなり僕の手に手を重ねてきた。
「あの…私たち付き合ってるの…!昨日から」
神崎さんと白石さんは驚いて目を丸くする。神崎はすぐに得心のいったような顔をするが、白石さんはじっと僕を見てくる。
「そうなんだ。やっぱりゆきくんは忘れちゃったんだね…」
「え…今なんて「ううん!なんでもないよ。おめでとうお二人さん!」」
僕の言葉は祝辞の言葉で遮られる。何か気になるような言い方をしていたが話すのが嫌ならば強くは聞けない。
そこから暫くは4人の中には会話もなく静かに馬車は進んでいった。
◇
馬車が止まるとそこには槍をもった兵士が駐屯していた。
僕らは御者の人にお礼を言い、荷物を持って外に出る。
アルベルト教官が駐屯兵たちに敬礼されている。僕らの教育をしていて感じにくいが、あの人はエルドランド王国騎士団第一部隊隊長なのだ。
「お前ら!ここのダンジョンはE級からC級のモンスターがポップする!スライムやゴブリン、コボルトが主だ!弱いからといって油断するなよ。武器の方はこちらからそれぞれに合わせて用意してある!受け取っていってくれ!」
アルベルト教官はそう言うと荷物を積んだ馬車からメイドが現れ、武器を取り出していく。
「勇者様方。並んでください。武器を渡していきます」
メイドたちに促されて生徒は列をつくる。
「光の勇者様ですね!こちらの剣になります。神剣ソラウクラスといい、先代の光勇者様が使っておられたものです」
「それは嬉しいです。ありがとうございます」
メイドが3人がかりで持ち運んできた神剣を神崎さんは片手で持ち上げる。そしてお礼と言わんばかりに爽やかスマイルを見せる。
その姿にメイドたちは顔を赤らめ、うっとりとしている。さすがはイケメン様だ。
「次の方、剣姫様ですね!こちらの神刀天月です。重いのでご注意を…」
メイド二人で必死に持ってきた刀は綾香さんに渡される。それを綾香は両手でぐっと持つと鞘から軽く抜き、刀身を見る。
その刀身は淡い青色で、少し透けているように見えて美しかった。その刀に魅せられた周りの人は息を飲む。
綾香さんはチンッと刀をしまうと腰に刀を掛ける。その動作は歴戦の武士のような流れるような動きだった。
「ありがとうございます。いい刀です」
綾香さん曰く、剣姫のギフトを貰ってから刀や剣の善し悪し見えて、使い方が何となくわかるようになったそうだ。
綾香さんと一緒に並んでいて、隣に立っていた僕は場違い感が否めなくて少し気まずかった。
「お次の方、あぁ…たちばなさんですね。あなたはこちらになります」
メイドから片手で手渡されたものは紛れもなくただの''木刀''だった。
◇
「そりゃあさ…真剣を持てないステータスだからしょうがないのは分かるよ。でも木刀って…」
「大丈夫だよゆきくん!私がついてるから」
「うん。ありがとう…嬉しいよ」
綾香さんが励ましてくれる。嬉しいのは本当のことだが、悔しい感は否めない。今となっては古い考えかもしれないが男が女を支えていくというのに少しは憧れていたのだ。
それに綾香さんの直後に渡されたので、みんなにクスクスと笑われた。
その僕の次に、聖女である白石さんが神杖エストロットを貰っていた。それで周りは僕のことを一瞬で忘れ、白石さんを賞賛する。不本意だが少し白石さんに助けられたのかもしれない。
木刀を渡されたのはやはり、僕、美鈴さん、直己の3人だけだった。ステータスが低い僕らはみんなから陰で笑われていることだろう。
生徒全員に武器が配布され、ダンジョン入口の周りに集まる。ダンジョンは洞窟のようだが、どう見ても自然的ではない作りをしている。そこでアルベルト教官が口を開いた。
「それではダンジョンに入る!だがその前に今回はチームを組んで行う。チーム編成は訓練時に分けたチームとする!」
「ちょっと待ってくださいっ!私は事前にチームを約束をしていた人がいるんです!」
綾香さんが珍しく声を荒げる。周りの人はその光景にビックリしている。僕もその光景のひとつだった。
訓練の時のチームと言うと綾香さんは神崎さん、白石さんと、僕は美鈴さん、直己と組まなくてはいけなくなり、綾香さんと離ればなれになってしまう。すると、綾香さんは僕を守れなくなってしまうと考えたのだろう。
こんなにみんなが注目して見ているというのに、内気な綾香さんが人目を気にせず反論する姿を見ていると、綾香さんが僕を守りたいという気持ちがひしひしと伝わってくる。
「すまないな。強さの近しい人との連携がこのダンジョンの訓練では必要となってくるのだ。だから力の差があるといけない」
「でっ、でも!私はゆきくんを守るって…!」
「大丈夫だよ綾香さん。ここはそこまで強いモンスターは出ないし、危なくなったら逃げるからさ」
「……うん…分かった…」
僕は綾香さんを安心させるように後ろから肩に手を乗せる。綾香さんは渋々だったが納得してくれた。
「本当に、危なかったら逃げてね?」
「大丈夫。分かってるから。それに綾香さんだって気をつけないとダメだよ?」
納得しつつも僕のことが心配な綾香さんの頭をポンポンと撫でる。すると、綾香の顔がほんのり赤くなる。
「ゆきくん…こういうのは、ここじゃあ…恥ずかしいよ」
「それじゃあ帰ってからゆっくりね」
「そ…そういうわけじゃ…」
綾香さんはさらに顔を赤くする。その可愛さに抱きしめたくなる衝動に駆られるが、必死に我慢。
周りに耳を傾けると俺たちのことを「イチャコラしやがって…」「無能と剣姫が釣り合うわけないだろ」など、嫉んでいた。
「ではチームになってくれ!チームが出来たところから出発していいぞ!」
アルベルト教官のその言葉でみんなが動き始める。すると僕らの所に神崎さんがやってきた。
「綾香、行くよ。ゆきくんも安心してくれ。俺がいる限り綾香に怪我はさせないから」
「あ、ああ…よろしく頼む」
神崎さんのその発言は本来、彼氏である僕のものだ。僕は違う意味での不安に駆られる。
「雪くん!こっちきてー!」
美鈴さんが手を振って呼んでいる。美鈴さんの横にはすでに直己もいて準備は既に出来てるようだった。
「ゆきくん、頑張ろうね!」
「うん、頑張ろう!」
綾香さんとそこで別れる。果たしてこの訓練を乗り切れるだろうか。そんなことを考えながら、僕はチームのもとへ足を踏み出した。
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橘 雪 Lv1 性別 男 種族 人間(?)
ジョブ 村人C
HP 20/20 MP 5/5 EXP 0/5
STR 5→8
VIT 3
DFE 7
INT 9
DEX 5
AGI 5
LUK 10
スキル
言語理解 雷魔法Ⅰ(?)
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楠見 綾香 Lv1 性別 女 種族 人間
ジョブ 剣姫 勇者
HP 500→550/500→550 MP 50/50 EXP 0/5
STR 150→165
VIT 100→110
DFE 80→85
INT 50
DEX 90→95
AGI 110→120
LUK 60
スキル
言語理解 経験値上昇 全ステータス補正 全属性耐性I 筋力上昇I 敏捷度上昇I 剣姫刀術l
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基本的にステータス上昇はレベルによるものが大きいとされる。主人公の上がり具合が正常であり、勇者が異常。
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