五話 ダンジョン前日と告白
投稿四日目にしてPV1000を超えました!感無量です!
1週間たったある日、あの筋肉ダルマ教官が集合をかけた。
「みんな!よくきいてくれ!明日、実践訓練としてダンジョンに遠征にいく!」
「おい、まじかよ!」
「よっしゃぁ!テンプレ!」
ダンジョンという単語を聞いてみんな興奮している。かく言う俺も少し期待していた。
「1週間という訓練を得てお前たちは強くなっている!私が保証しよう!あとはレベルを上げることだな。それが一番手っ取り早く強くなれる方法だ!」
1週間で強くなったと言っているが、僕達ステータス低かった組3人はSTRの値が3ほど上がったくらいだった。
「私たち、大丈夫かなぁ…」
「大丈夫だと思うぜ。弱い俺らは後ろの方だろうし。ダンジョンかぁ~。くそぉお!チート能力欲しかったぜ!」
美鈴さんは不安そうに、直己は僕と同じく少しワクワクしているようだった。
◇
今日も僕達は訓練の端っこで細々と腕立てや腹筋、自分の知ってる限りのトレーニングをしていった。
周りを見ると今日は一段と、声を弾ませて魔法の詠唱をしていたり、剣に光を纏わせたりしてすごい勢いで打ち合いをしている。
明日のダンジョンにモチベーションが上がっているのが見てわかる。
そこで一際目を引くのが、神崎さん、白石さん、綾香さんのグループだった。
神崎さんと綾香さんが一緒になって筋肉ダルマ教官と真剣で打ち合っている。
一対二だったが筋肉ダルマ教官は恐ろしく強く、レベル1の勇者ではステータスもそこまで高くなく、2人相手でやっと戦えるくらいになっていた。
綾香さんがすごい速さで剣を振るい、神崎さんが光の鎧を纏わせ強い一撃を与える。この流れが定石のようだ。
だとしても、この王国最上位の騎士に、1週間前まで普通の学生で16歳の少年少女が引けを取らず戦えているのは驚きだ。
「綾香!避けるんだ!」
「了解!」
剣と剣をぶつかって拮抗しているところだった。神崎さんが何やら溜めて放つ術を用意するために綾香さんが刀を押し上げムキムキ教官の体勢を崩す。
「光の神ステイシアよ。我に力を…『光絶』」
神崎さんの剣が眩しく光かり、剣先にその光が集まっていく。そして限界までに集まると眩い光線となってムキムキ教官に向かっていく。
「ぐっ……」
ムキムキ教官は直撃し、膝を落とす。ぶつかった瞬間にムキムキ教官の鎧が焦げ落ちた。
神崎 誠は膝をつく教官に駆け寄っていく。
「アルベルトさん!大丈夫でしたか!?一応力を押えたので怪我はないと思いますが…」
「力を押えてこの威力が…恐れ入るな」
鎧は壊されたがどうやら神崎さんの言った通り怪我はなかったようだ。
「やっぱり誠の魔法、凄いね!」
「さすがです。誠さん」
「いや、みんなのおかげだよ。ありがとう」
白石さんと綾香さんが神崎さんに駆け寄って賞賛している。それを神崎さんは爽やかスマイルで返す。
僕はその光景をただ端っこの方で見ていることしか出来なかった。
◇
「そろそろ今日の訓練は終わりにしよう!明日の遠征のためにしっかりと休息を取ってくれ!」
ムキムキ教官がそう言うと生徒たちは武器を倉庫にしまいに行く。すると美鈴さんが話しかけてきた。
「凄いね、あのグループ。特に神崎さんがなんかこう…すごく見える!」
「美鈴さん…アバウトだね」
サブカルチャーに疎い美鈴さんでも何となく強いというのが分かるようだ。
「大丈夫。私たちだってやっていけるよ」
「……う、うん、そうだね」
美鈴さんは僕からなにか読みとったようで、元気づけようとグイッと顔を近づけてガッツポーズを取っている。
「ありがとう。元気出たよ」
僕は美鈴さんを安心させるように笑ってみせる。
「え?なんのことかなぁー」
美鈴さんはくるっと向きを変えると、とぼけながらスタタと行ってしまった。
僕も自分の部屋に戻ろう。明日はいよいよダンジョンに入るんだ。ゆっくり休もう。
僕は部屋に戻ろうとして歩き出す。城内はとても広く、少し知らない道を行くと直ぐに迷子になりそうだ。
「ゆきくん!まって!」
「あ、綾香さん!?」
綾香さんが息切れしながら僕の背中の服をつかんで呼び止めてきた。久しぶりに声を交した気がする。周りには人はいなく、二人っきりだった。
「落ち着いて、息を整えてからでいいですから。どうしたんですか?」
「ううん…今言いたいから…後悔したくないから…」
後悔?綾香さんが何か後悔するようなことがあるのだろうか。
綾香さんは一度深呼吸をして覚悟を決めたような顔になる。
「ゆきくん…あ、あの…好きです!付き合ってください!」
「え…ええーっ!?僕のことを、綾香さんが…?」
僕は口をパクパクとさせて綾香さんにもう一度聞き直してしまう。
「は、はい。私はゆきくんのことが、す、好きです…」
「そ、そうですか…はいぃ…」
頭が真っ白になって何か返事をしようにも何も話せない。目の前には顔を真っ赤にした綾香さんが俯いている。
「ぼ、僕も…です…」
「え…今なんて…」
綾香は俯いていた顔をハッと上げる。
綾香さんは勇気をもって告白してくれたんだ。ましてや男の僕が逃げてどうする!
「僕も、綾香さんが好き…です…!」
「ほ、ほんとうに…!」
綾香さんは泣き出してしまった。そのまま崩れ落ちてしまいそうだったので僕は綾香さんをそっと抱きしめた。
────
この状態になってどれくらいだっただろうか…たぶん綾香さんには僕の心臓の音がよく聞こえているはずだ。
嬉しくて、嬉しくて…興奮して、頭が血が回りすぎて痛くなって、抱きしめてる綾香さんの体温を感じると心がじんわりと温められていく。
僕の身長は小さい方で、綾香さんは女子の平均より高めだから差はほとんどない。
綾香さんが少し上目遣いする形で綾香さんと僕は目が合った。すると顔を隠すように僕の胸に顔を押し付けて、そのまま話し出す。
「私ね、ゆきくんがどっかに行っちゃいそうで怖かったの。こんなギフトもらって、ゆきくんを守るために強くなろうとするほど、何故か離れて行ってしまうみたいで」
「僕もそうだったよ。綾香さんが神崎さんたちと一緒に行ってしまうかもしれない、とか思ってた」
「そんなことしないよ!」
綾香さんが押し付けていた顔をガバッと上にあげる。また見つめ合う形になるが今度は恥ずかしがらずに僕の目を見ている。
「ありがとう。綾香さん。僕も守られてるだけじゃなくて、強くなるよ」
「うん、二人で互いに守り合うの」
そう言うと綾香さんは幸せそうな顔で笑った。
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