二話 祝福
気がつくと僕達は真っ白な大理石の上に立っていた。確か教室にいたはず。
周りを見渡すと煌びやかな鎧と槍を持って慄然として立っている人達に囲まれている。
「お待ちしておりました!勇者様!」
囲まれていた兵士の間からバタバタと走ってやってくる女性…いや、少女が来た。
その姿は美しいドレスを纏い、長く綺麗な赤い髪をしている。あの髪色は染めた色では表現出来ないことが見てわかる。
兵士達はその少女に敬礼している。
「あの…勇者というのは?」
ここで質問をしたのは神崎 誠だった。
神崎 誠はみんなの1歩前に出てその少女と向かい合った。
「失礼いたしました。私はエルドランド王国第2王女の エルカ と申します。最高神ラウル様からご神託がありまして、勇者を召喚なさるとの事でしたので私一同、勇者様方を心よりお待ちしておりました!」
最高神ラウル…?誰のことだ?
……ん、、あれ、なんか忘れているような…
……思い出してきた…たしかあの不思議な少年にギフトを授けるだかなんだとかで…
周りを見渡すとみんな一様にさっきの出来事を思い出したような顔をしている。
神崎が目の前の少女、エルカ に話しかける。
「エルカ王女様、最高神ラウル様とは…あの小さい少年のことですか?」
「まさか、最高神様の御身を見たのですね!さすが勇者様です!あと私はエルカ、でいいですよ♪」
エルカは神崎の手を取ってにっこりと微笑んだ。
男子一同はエルカの笑顔にデレデレになり口元が緩んでいる。あの神崎でさえ少し顔を赤くしている。
でも自分にはその仕草がわざとらしくて好かなかった。単に僕が美人嫌いなだけかもしれない。
「勇者様方には私たちの危機を救って欲しいのです!」
「危機…と言いますと?」
神崎さんがエルカ王女に問いかける。
するとエルカ王女は悲しそうな表情をして
「私たちは今、魔界に住んでいる邪悪な魔王に宣戦布告されているのです…」
「なっ…そんなことが」
「はい…魔界にも私たちのように知性ある種族、魔人が文明を作り、繁栄しております。その彼らが領土を広げようと人間界にいる私たちに宣戦布告したというわけなんです」
僕はエルカ王女の話を聞いて本当によくあるあるの異世界だななんだなと感心していた。
すると誰かに肩をトントンと叩かれる。
「ゆきくん…これ、どうなっちゃうのかな…?」
後ろから綾香さんが話しかけてきた。
「テンプレだと…ステータスでもみるのかも?」
綾香さんもライトノベルをかじっているので異世界転移というものが何なのかは理解しているはずだ。
「生きて帰れるようなスキルがあるといいな…」
「…うん。そうだね」
綾香さんは少しでも早く帰りたいようだ。
気の弱い綾香さんだから仕方ないと思う。
だけど僕は少し、ワクワクしていた。現実とはかけ離れた世界を自分の持っているチート能力で生き抜いていくというものに。
◇
俺たちはエルドラド王国第2王女、エルカの後に続き移動させられた。どうやら転移させられたのはこのクラスだけで人数は40人だった。
しばらく移動していくと広い空間に出た。
そこには少し空中に浮きながらゆっくりと回転している10メートルほどのひし形の水晶のようなものが周りの光を反射しながら、いや、自ら発光していた。
「これは真実のクリスタルと呼ばれるもので皆さんのステータスを見ることができます。このクリスタルではステータス偽造が効かなく、世の中に出回っているステータス鑑定機はこのクリスタルの欠片を使っているんですよ!」
どうやら俺たちはその出回ってる欠片ではなく原石で鑑定されるらしい。すごい好待遇だ。
「勇者様方はこのクリスタルに手を触れてください。そこで一人一人にステータスを記録する人をお付けいたします。そのものに勇者のステータスをお教えてください」
そう言うと俺たちの横に記録用紙のようなものとペンを持った記録係がやってきた。
「それでは勇者様、お願いします」
エルカ王女のその言葉を境に一斉に我先と男子がクリスタルに手をつけていった。
さすがに全員がステータスチェックできる大きさはない。憧れだった異世界転移だ。先に男子が行ったのは、男のロマンがあったからだとでも言うべきか。
「お!すげぇー!!風魔法!」
「これチート能力かな!?」
「俺魔法剣士だってよ!」
僕は綾香さんと一緒に後ろから和気あいあいとしてステータスを見せあっている男子を眺めていた。
「こ、これは…!!」
「え、なんですか?」
するといきなり記録係の大きな声が響いた。
「どうしたのですか」
エルカがその記録係に問いかける。
「この勇者様は…光…光の勇者様です!」
「な、なんですって!?あの光の勇者様!?」
周りがザワザワし始める。記録係は一様にエルカ曰く光の勇者、''神崎 誠''を見ていた。
「え、俺なんかやっちゃいましたか?」
神崎は不安そうな顔で頭に手を当ててポリポリとかいている。
「光魔法を授かった者は、どの年代の勇者様でも圧倒的な強さを発揮して、光の勇者、と呼ばれているのです!」
「へぇー、そうなのか」
エルカは神崎の手を取って興奮して手をブンブンと振っている。神崎は当たり前だと言わんばかりのすまし顔だ。
まぁ、地球でもなかなかのチートを発揮してたからな。悔しいが、神崎がこの異世界転移の主人公かもしれない。
「この様子だと今回は凄い勇者様が多いかもしれませんっ!女性の勇者様も早くステータスチェックをお願いします!」
エルカは女子たちにステータスチェックを急かす。その女子たちの流れに乗って残っていた男子1名である僕もステータスチェックに向かう。
すると隣についていた記録係が笑顔で話しかけてきた。
「勇者様方はこの世界の私たちよりも基本ステータスが大幅に高く、ジョブが「(ギフト名)勇者」という形で付いています。安心してください。ジョブが勇者である限りどんなギフトでも強いですから」
「そうなんですか。強いギフトであることを願いますよ」
僕は一応、あの少年 ラウル様に強いギフトであることを願いながら真実のクリスタルを触れる。すると頭より少し上のところに半透明の板が現れた。
「んーと…」
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橘 雪 Lv1 性別 男 種族 人間(?)
ジョブ 村人C
HP 20/20 MP 5/5 EXP 0/5
STR 5
VIT 3
DFE 7
INT 9
DEX 5
AGI 5
LUK 10
スキル
言語理解 雷魔法Ⅰ(?)
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………ん?なんだこれ?
思った以上に読んでくれている方がいたので嬉しいです!ブクマまでしてくれた方、感謝です!