一話 クラス転移
初の異世界系です!魔法名やら物の名前に悩んでしまってあたふたしてます…
どうぞよろしくお願いします!
照りあげる真夏の太陽がこのオーブンのようにできた教室の中を容赦なく温めていく。
真夏のもあわっとした空気が顔に張り付く。
俺は額に浮き出た汗をハンカチで拭いていく。
なぜこの高校にはクーラーがついていないのだろうか。今の日本の暑さを上の人達は軽く見すぎだと思う。
「雪くん!おはよう!」
「あ…白石さん、おはよう」
「どうしたの!朝から元気ないよっ?」
白石 結衣さんが僕の机に手をダンッと叩き、顔を寄せてくる。
本当に…周りの目が痛いからやめて欲しい。
隣の綾香さんだってこっちを見てるじゃないか。
白石さんといつもグルーブになって話している神崎 誠が話しかけてくる。
「なー、やめとけよ結衣。橘さんにそんなに構っちゃ…困ってるだろ?」
神崎 誠はイケメン。それでいて運動神経抜群、頭脳明晰。性格もいいと評判だ。
周りからは白石さんとお似合いのカップルだとも言われていて僕の目から見てもお似合いなのでサッサと付き合えばいいのにと思う。
さっき神崎さんが言ってた白石さんが僕に構っていて困っているというのは確かに本当だ。たとえ白石さんのようにどんなに美人な人だとはいえ。
「そんなことないよー!雪くんはいい人だよ!」
白石さんが口を膨らませて怒ったような仕草をする。すると、周りの動きが一瞬止まる。
理由は言うまでもない、白石さんに見とれていたからだ。
白石さんはこの学校で1番と言われるほどの美人だ。毎日男子からの告白が耐えない。1年生のときから始まったことで、今年、2年生になってもそれは続いている。
だからといって女子からは嫌われてるかと言うとそうでもない。白石さんは周りの女子と楽しそうに話していたり、趣味嗜好を共有したりして仲良くしているのが見受けられる。
本当に完璧な女性だ。ただ一つを覗いては。
その一つというのが僕に執拗に関わってくるという事だ。
何故かこうやって朝の挨拶を毎日欠かさずしてくる。周りの男子生徒にはしないのに。
そのせいで学校中の男子、ましてや女子にまで嫌われている。完璧な白石さんのはずなのに僕に関わってくるせいで周りから僕が嫌われてることに気づいていないのか…?
関わって欲しくない理由はもう1つある。
それは僕には好きな女子がいるからだ。
名前は楠見 綾香。僕の隣の席だ。
彼女は穏やかな性格であまり表立って行動する人では無い。いつも丸い眼鏡をかけて本を読んでいる。
彼女に惹かれたのは一重に白石さんの影響かもしれない。
僕は白石さんのような美人な人がしつこく話しかけてくるから綺麗な人に苦手意識をもつようになった。
そこで僕は、いつも隣席で静かに読書をしている彼女に自然と目がいってしまったのだ。
そこで、ふと気まぐれに綾香さんに読んでいる本を聞いてしまった。
するとなんと、僕が好きな作家さんのものだったのだ。僕も人並み以上には本を読んでいた。
それからというもの、僕達は本の感想や、情報交換をし合ったりした。
今では綾香さんから話しかけてくれたり、いつも笑わず仏頂面の綾香さんがクスリと笑う姿を見せてくれた。
もうその時には多分僕は綾香さんを好きになっていたのだろう。
「おらー、おめーらぁ~席につけー」
うちの担任の新井先生がドアを開けて入ってきた。
僕はこの先生のことが苦手だ。
明らかに生徒贔屓している。
クラス上位にいる神崎さんや、白石さんなどと仲良く話しているし、可愛い女子を拘束するかのようにしつこく話しかけているのがよく見られる。影では成績すら贔屓しているのではないかという噂だ。
こんな教師なら嫌われているのでは?と思われるが、実際、クラス上位者たちからすればいい教師に見えるようでそこまで疎まれはしていないのだ。
「ほい、ホームルーム終わり」
新井先生は少しでている下っ腹を触りながら終わりの挨拶を促す。
その瞬間、地面に何やら発光する幾何学的なものが出現した。
「な、なんだこれ!?」
「きゃー!!」
「なに!?なに!?」
光は急速に強くなっていき視界を真っ白に染めた。
◇
僕達は何もない真っ白な場所に立っていた。
言葉通り、何も無い虚無だ。
皆一様に周りを見渡している。
「待っていたよ、勇者たち諸君!」
さっきまで何も無かったのにいつの間にか僕らの目の前に小さな男の子が、、、浮いていた…
「だ、誰だお前!」
新井先生がビクビクと怯えながら叫んだ。
すると小さな男の子はすっと新井先生に目を向けた。
「ん?誰だい君?……あー、間違えて一緒に転移させちゃったー」
「な、なに?転生だって…?」
周りがザワザワし始める。
「転移ってあの異世界?」
「よっしゃぁっ!来たぜ俺の時代!」
「いや!早くおうち帰して!」
さすがは現代の高校生と言えるだろか。転移と聞いただけで早くも『異世界転移』を思い浮かべた。
すると喜ぶ者と帰りたいと叫ぶ者の二者に別れた。新井先生はよく分からないというように思案顔だった。
かく言う僕もライトな小説もかじっていたので異世界転移を分かっていた。
小さな男の子は手をあげるとそれに合わせるようにみんなが静まる。するとそのまま指を鳴らした。
甲高い音が響くはずのない虚無に響いた。すると、少年の両隣りにスっと見目麗しい女性たちが現れた。
その女性の姿は最低限の局部を隠すレベルで細く、そして薄い白い絹で隠され、白く美しい肌と、溢れんばかりの豊か胸が慎ましくも扇情的に収まっていた。
男子生徒からゴクリという唾を飲む声が聞こえる。その目はしっかりと女性に向かれている。
女子生徒は、綺麗…と呟き恍惚としている。
俺はと言うと、その女性の目を見ていた。
どうもおかしい気がする…あの目…鏡のように全てをはね返している。綺麗に見える気もするが、あれは…死んでいる目だ。
すると少年が僕のほうをチラッと見た気がした。
いや、多分気の所為だろう。
すると、少年はその女性らの腰に手をやり抱き寄せて言った。
「君たちには異世界で勇者として転移してもらうよ!そこで僕、神様から異世界で使えるギフトを授けよう!」
美しい女を従わせている者には、威厳が生まれるのか、皆は押し黙りあっさりとその少年の言うことを受け入れている。
その顔はこれからの異世界生活にワクワクするもの。中には不安げに下を向いているものもいる。
少年は手をたたくとその少年の手のひらに淡い光が灯る。それを俺たちに向けると弾けるように飛び散った。
その光が…''僕以外''のみんなに飛んでいく。
彼らに当たると胸のところでじんわりと滲んで溶けていった。
「な、なんだ!?」
「よっしゃぁ!」
「なにこれぇ、、」
少年は両脇にいる女性らを抱きながらニッコリと笑う。
「それじゃあ、君たち勇者の勇姿を期待してるよ!」
少年が笑顔で手を振るのを見て視界がフェードアウトしていった。
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