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第三章:百年戦争  作者: 赤花野 ピエ露
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第五話:枝伸びたる。

挿絵があります、苦手な方はお気を付けを。

 分岐も歪みも無い枝は真っ直ぐに驚くほどに早く伸びてきた。

 剪定された可能性という名の未来は遺跡となりて世界の幹に降り積もる、世界を肥やし蝕み腐らせ成長を阻害した。

 故に、たる。






     凪、来たれり。






「死の旗を掲げし凪の魂… 」力の膨張、超過したエネルギーが器となりて彼らを呼んだのだとシャーマンは嘆く。


「幾つもの愛を、その手の中でさへも、救えなかった嘆きの王が君臨する未来が見えるわ」占い師は世界の終焉を知る。


「凪は死であったのか… 」世界の平和を願いし集いの長はそっと息を漏らす。


「魔王と名乗っている存在だぞ、こうなる事を俺は、分かっていたのさ」俺は違う風を醸したい男は己を見ない酒を汲む美女に有りもしないものを自慢する。


「神が居ないからか、それとも戦争が長引きすぎた時の為に神が創った存在、元を意そういうシステムなのか、どちらにせよ私たちにはどうすることもできないな」多くの人は諦めた。






     『 俺は魔王だ 』






 言葉でも姿でもない、それは意思。その意志が世界にその存在を知らしめた。

 男なのか女なのかも分からない、強烈な殺意、世界を終わらせんとすその殺意を皆が感じ取った。知性無きものでさえも震え上がるその殺意、彼らがそれを感じとらないはずが無かった。




「これが大いなる神のシナリオなのかもしれませんね」




 七大大陸一の広さを誇る大陸を統べる覇者の長がそう口を開く、彼女は純機械生命体スイガネその原点の型を受け継ぐ者【 初代改良型機体:00《ふたのわ》 】、並び立つは驚愕級の力を持つシングルナンバーを掲げし者達。


 そして対面し座するは生き残っている各代理者達だ。


「次の大いなる神が決まらなければ、皆で手を取り合って美しく死ねってか」

「ありうるな。散り側が決まっていようとはな」

「世界は違えど同じく到達者にして卓越者、神の代理者である俺達が手を取り合えば変えられない未来など無い!さあ!共に戦おうではないか!!!」

「本当にこれでいいのかな?」

「王道ではありますねぇ」

「ヒーロー大集合、的な事ですわよね」

「一時休戦と行こうじゃねーか!」

「胸が滾るねぇ、熱い展開だじゃあねーかよぉ!」

「んじゃ!そうと決まれば!早速―――




     「私はいいっす。 独りでいるっすから」




「ちょっと、冷めること言わないでよ」


「あんたらにとって戦争を始めたのは祖父や祖母の代の事かもしれないっすけど、私にとってはわたしのことなんっすよ」

 今まで死んでいった者達、私が殺した者達、ここで戦いを止めてしまったらその者達の死が無駄になってしまう気がした。

 だから、


「一時的にでも協力――― 「お断りするっすよ」


 知性、そのせいかもしれないそんな愚行を私は取った。

 戦争は何も生まない、何の意味も無い、本当にそうなってしまう気がしてならない。


 戦争なんて嫌いだ。


 意味が無いと言っているのは、何も生まないと言っているのは逃げた者達だ、と。私は思う。

 死んでしまえば意味は無い?生き残っている者が正しい?


 私には分からない。


 けれど、死んでいった者達への、殺してしまった者達への敬意と責任を持って接しなければならない問題だと思っている。

 だから、私は独りでいるし、独りで行くのだ。




「私達と敵対するって事でいいのかしら」


「それでいいっすよ」


「消耗は控えたいので今は見逃してあげましょう」


「はいはいっすー、そんじゃあ、バイバイっすよー」




 探り合いをしながらの共同戦などまっぴらごめんだ。


 居場所を知られていた事への、連絡を取ってきた事への恐怖感と疑心から一刻も早く抜け出したかった。


 嘘で塗り固められた優しき制止を振り払い、私は魔王場へと鉄の陸鯨を走らせた。元の陸鯨の垣根を進んで。






「魔王城って言うよりかは… 巨大な墓場っすね」まあ、魔王っぽいと言えば魔王っぽい。


「うっわ!お花畑じゃん、綺麗っすね~」見た目は女の子だと知ってはいたが、予想以上に女子力が高そうだ。


 女子力だけではなく腕力も高いようで扉は古いせいか重く、<ギィィィッ>、と音を立てて開いた。






     は!? え?!






 夢じゃなかったが、現実は現実だった。


 この世界はくそったれっすね… 。


「何で… こんな所に居るんっすか… ? 」信じたくはない現実、玉座に座するはあの人だ。




「白々しいな。さすがはピエロだ、な」




 魔王が私に似ていないとか、女の子じゃなかったとか、そんなのはどうでもいい… 。

 なんだこれは… っすよ。

「話が急すぎて訳が分からなくなってきたっすよ」

 忘れられている? いや、それよりも質が悪そうだ。

「所詮は愚物に似せた人形か。 こんな悪魔に魅入られた汚れた魂、夏希に似ても似つかない」






     「  はぁ? 誰、それ。  」






 似ても似つかない、やっぱり夢だったんだ。


「最悪な気分っすよ」


 最悪な現実、悪夢だ。






 でも、それは彼を敵視させるための罠なのかもしれない。






 考えが甘すぎる。






 お花畑乙女の恋愛脳はもっと甘く愚かな事を知らないらしい。






「!?」


「フフフ、っすよ」


 んっふぅー♪


「何故俺にキスをした!?呪いか!?」


 はぁ!?


「可愛い乙女のキスを何だとおもってんすか!?」

「乙女はそんな速度で動かない!」


「そんな、ゴ●ブリみたいな言い方はやめて下さいっす… 」さすがに傷つく。






「・・・・・」






「 ? 、なんっすか???」敵視しながらも彼は攻撃してこない。









「何処かで… 」









「おおっ///// 思い出したっすか!?」


 あ… キス、彼にはした事がなかった… え??? 誰かにされたの???

 私の夢の中の人なのに… 誰に? はぁ?


 夏希って奴に、か… へぇー、そうなんだねぇー、ふーん… 。


 女の子にならいいか、いいのかな?いいと思おう、そうしよう。


 …私との初キスで、その事のキスを思い出しているって事? はぁ?


「ごめんっす、敵意はないっすよ。 大好きっすからね」




     < バチーーーンッ!!!!! >




 効果音にビックリマークが五つは付くであろう程に思いっ切りビンタした。

<チュッ>

 勿論、キスもした。


「狂ってんのかお前… 」


「はい… ///     狂おしいほど大好きっすよ/////」


 控えめに言ってドン引かれている…


        はぁ… 






             その視線がたまんない///






「しまった… こいつ変態だ」シリアスな空気で言われているのがミソっすね。

 嫉妬と背徳感がまたたまらなく良い、フフフ。

「んっぅ、フフフ。 私を本妻にしてくれるのならいくら女の子を侍らせてもいいっすよ、私もその子と愉しむっすから」


「いかれた求婚だ、が、残念だったな」


「!!!!!?????」


 私はこの日初めて神様に感謝した。


「俺… わ、私は女だ、です よ」心に嘘を付いているのか、顔が引きつっている。


「 ハァ ハァ ハァ 」


「???」


「こんな美少女見た事ねぇっすよ、ウへへへへッ、フフフ、んぅっ~… あはっぁ////たまらないなぁもう!!!キャー///」

「何!?お前と同じ様な顔だろうが!気味悪がれよ!!!」

「え!?私の事、こんなにも可愛く見てくれてるって事っすか??? キャー!!!     もう、我慢できない。     」




     「【 極大化:金剛魔弾改 】!!!!!」




「ビンタと俺の気分を害した罰だ。   身の危険を感じたのはいつ以来か… いい勉強になったと思い込んで閉まっておこう」


<ポーーーン>


「ん?何だ?」







<ギィィィッ>






「うわーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?」


 それは、魔王の万年の殺意も吹き飛ぶ程の恐怖と狂気溢るる嗤みであった。


 いかれたヒロインによるサイコホラーなラブコメディー、知性有る人の始まりの代名詞アダムとイブ、魔王でさえも掴み留めておけぬ逆流せし魂の持ち主が魔王に押し迫る。


「ウへへへへッ、フフフ、私の事を忘れているのが悪いんですよ。 興奮しました っすよ~… んっぅふぅ~… 」


「・・・・・・・」


 速い怖い黒髪乙女は魔王に跨り押し倒す。


 不吉な黒猫は神に感謝し自らの性格を褒め称える。


 性格や価値観や感性の違いは世界が変わる事で良し悪しも変わる。


 そう、変るのだ。


 ピエロのピエロ、私はカク、書き違えるぞ大いなる神よ、嘘吐きなんて言うんじゃないぞ私は違えさせただけなのだから、直接手を差し伸べずにな。




「魔王、私と契約しましょう///」婚姻届にサインを、そんな空気で魔王に囁き掛ける。

「何のだ… 」突き返しても迫ってくる事を想像し潔く狂った少女の話に付き合う事にした魔王は大人だ。少女の見た目が亡き恋人に似ている事もその姿勢を取らせている一因であろう。

「私は他の代理者達を殺したいです」

「俺はこんな世界を殺したい」

「分かってますよそんなことくらい、フフフ。   だ・か・ら♪   こんな契約はどうですか♪?」




 ~凪の魔王と愛の黒猫の共闘契約~


・一つ:何時如何なる状況であっても、互いに互いを攻撃し合わないこと。

・二つ:何時如何なる状況であっても、互いに互いを助け合うこと。

・三つ:何時如何なる状況であっても、黒猫を除く全ての代理者を殺しきるまで本契約が破棄される事は決してない。

・四つ:何時如何なる状況であっても、死さえも超越した愛を毎日確認し合うこと。

・五つ:何時如何なる状況であっても、本契約は黒猫を除く全ての代理者を殺し次第何時でも魔王の意志で契約の破棄が可能であり、如何なる選択であっても、黒猫にそれを拒むことはできない。




「四番以外は概ね認めよう」

「四番が肝っすよ!五番を設けてあるんっすからこれくらい認めて下さいっすよ! 愛してる、って言ってくれるだけでもいいっすから… 」

「・・・・・・・」

「私は老いないし死んでも必ず蘇ります、だから、あなただけを置いて悲しませるようなことは無いって誓います っすよ。だから―――


「ならば、それも誓え」


「 …はい///」


・六つ:何時如何なる状況であっても、黒猫は魔王の傍を離れる事も悲しませる事も無く独りにはさせないこと。


「いや、離れてはいろよ」怖いから、それを引き攣った顔と体の震えが物語っている。

「嫌だ っすよ」

「戦力増強の為だ、戦力増強の為だ」

「フフフ、可愛い… 大好きっす。 男のあなたでも好きになれたのにまさかこんな美少女になってくれるとは… んぅっふぅー… 」


 魔王は即座に男になった。


「変態からはなるべく離れよう… 」

「その視線たまんないっす///」


 魔王はすべてが無意味だと知った。


「どうしよう、やっちまったかも」

「先ずは●●●●からっすね///」


 魔王は流れに身を任せる事にした、以前のように、だが少しだけ自分らしく。


「はぁ、先ずは手繋ぎデートからだろ」得体の知れぬ恐ろしき変態をまともな方へとなだめて行く。

「女子力高いっすね!乙女っす!さすがあのお花畑を造っただけのことはあるっすね」


 魔王は後悔する。


「こんなはずじゃなかったのに、な… はぁ… 」

「私は幸せっすけどね/////」


 魔王は世界はこの狂った少女に黒猫に救われる事となる。


「はぁ… 、 じっとしていても仕方が無い、戦いに行くとするか」

「ならいいとこがあるっすよ」


 二人の最初のデート先がこうして決定した。


 戦争、だからといって暗く生きてちゃ気が滅入ってしまう。明るく生きなきゃ明るい明日の朝日は昇らないと少女は思う、少女はようやく明日の朝日を手にしたのだ。


 歪んだ枝、私達の目が歪んでいない事前提の概念、少女は百年戦争のこの世界を真っ直ぐに生きている。これからも。愛する者と共にずっと、ね。






     第三章:百年戦争






 繰り返しという名の運命の中で、このいかれた戦争で、愛する者を失わざるを得なかった男と不思議で残酷で奇妙で底抜けに狂った女。

 互いに記憶を濃霧に覆われつつも思い合う良き相手。新たな旅路と幸せを願われ旅立つもその旅路は道は逸れ繰り返しの中へ、渦巻く暴嵐の中へ、その中心の凪を求めて。

 共に死のうとする男を止めたい、だから、彼女は彼女に思いを託した。

 ピエロな彼女は本心を曝け出すことができない、ピエロでありたくはない。しかし、大いなる神の愚像であるが故に存在を同じくしてしまったからどうしようもない。

 どうしようもないのだ。

 なんせ敵は大いなる神だから、しかも既に亡き存在。

 この戦争が生むものとは?、自らの道を進む少女は恋を実らせ愛育む為に、霧の中でしか幸せを感じない男に寄り添い歩みを共にする。











 五芒星は美しい、五つの五芒星の角を円を描くように一繋ぎにすればその中央に五角形が現れる。その角を線で繋げば再び五芒星を見ることができる。


 五芒星のペンタゴン


 ある世界では鉄を生むためのサイクルを奏でた。


 ああ、嗚呼、はぁ、つまらない。


 死にたい、死ねない、同じ苦しみを誰かに押し付けてやろう、そうしよう。


 さあ、殺しに来いよ。


 繰り返しの終焉を私は見たいのだ。


 幸せになってしまうのはつまらない、ああ、つまらない。


 死ねばいいのに、思い通りにならないのならまた繰り返しの中に殺すだけだ。


 ああ、殺すだけだ。






     』







挿絵(By みてみん)

お読みいただきありがとうございます。


男姿の魔王は何気に初出しですが、イメージ通りの顔立ちでしたでしょうか?皆様の魔王の御尊顔を見る事が出来たら嬉しいのですが… (;´∀`)イメージを壊してしまっていたらすみません。


次話もよろしくお願いいたします。

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