第四話:秋の夜空、夢見る少女は戦場に恋をして。
二時間サスペンスドラマのサブタイトルは家事の合間に見ている人の事を想って気を利かせているいるという事に暇人は頭が回らない。気が利かない人は人間関係が暇人になってしまいがちですよね。
鉄の陸鯨はオキアミの群れを丸呑みにする。
「やめてくれ!!!」
「いやぁーーーっ!!!」
「ママァー!!!」
バブルリング、いや、サンドリングというべきそれは120もの命を囲い呑み込まんと口を薄く開いていた。
「皆!あそこから逃げるんだ!早く!!!」
哀れ人の子よ大陸を知らず死に絶える。
「百年間も海上にいたとは、不運っすね」海上で百年過ごしていたなんて化け物だが、疲労困憊で上陸とは哀れっすね。
人は復讐と戦争は何も生まないと言う、なら、私達の人生はいったい何なのだろうか。
私は皆に魔王と指されている。
何なの?何なんっすか?
似ているだけでしょ、私には関係ないでしょ、そもそも私はこんな戦争なんて望んでなんかいない。
こんな戦争で正気なんか保てるわけがないじゃん、馬鹿なんっすか?
何で皆死んじゃったんっすか?
嫌だよこんな事するの… 嫌だよ… お母さん… 。
*
「まるで気分は役者ね」
「ゲームクリアか飽きるまで死んで生き返ってまた死んでの繰り返しか。 よくある話だな」
「ラブストーリーや学園もの、戦争ものなどはジャンルとして認められていますが、異世界転生ものへの風当たりは依然厳しいままですからね」
「風当たりは何処もおんなじだよ。 いや待てよ、熟女好きは公では何も言われないのにロリコンは何でもかんでもこじ付けがましく言われているな。そこは訂正しよう、すまなかった。許してくれ」
「嫌ですわ」
またこの夢か。
「呆れてものも言えないっすよ」
「夢とは、目標であり癒しだよ」
「君が見ている夢なのだから」
「随分と冷める事を言うんっすね」
「戦争自体が冷めるものよ」
「なら、私の人生の大半も冷めたものなんっすね。あー、そうですか。そうですか。ハイハイ」
「今日はやけに喋るわね」
「真っ赤な御鼻が素敵よ」
「何故泣いているの?」
「泣いてない、ウザいっすよそういうの」
「泣いているじゃないの」
「やめろ」
「まあいいわ」
「アハハハハッ」
「愉快愉快」
最悪な気分だ。
「戦争中に夢何か見ているのが悪いんだよ」
「終わりを夢見て何が悪いんっすか」
「悪いよ、なにせ頭が悪い」
「そうねぇ、そうだわ~」
「魔王に会った事も無いのに、決めつけは良くないよ」
「きっととあなたは恋に落ちるわ、深淵なる恋に」
「はぁ?」
「意味はきっと分かるわ、それこそ馬鹿でも分かるものよ」
「愛と恋と戦争と… 、 君も好きだねこういうの」
「恋は盲目、先見えぬ恋の旅路を歩くといいわ、屍ちゃん」
「君が死んでも時は戻らない」
「あの方が死ななければ時は戻らない」
「戻らない」
「戻さなくては」
「繰り返さなくては」
「ならない」
「繰り返さなくてはならない」
「夜長きこの世界でなければ我々は栄えられないのだから」
「意味不明っすよ」
「夢の扉は開かれた」
「旋律は奏でられる」
「点は広がり線は伸びる」
「海は凪、死満ちる」
「夢の中の景色など覚えることができようか」
「できるさきっと」
「君ならきっと」
「つまんない夢っすね」
*
情景も糞も無い、深淵など覗くべきではないのだから。
「第三だけかと思っていた」
「魔王に似た存在よ…どうか…」
「私は魔王じゃないっすよ」
「楽に殺してくれ」
「了解っすよ。 ドーン!」
「第三は生の営みそのものが力の根源、何処まででも進化し続けている。百年は生物進化の暦では短すぎるが奴らにとって百年前など古代と呼べるものなのだ、それほどまでに奴らは強い。最初はちんけな機械人形だったはずなのに、見誤ってしまった。純機械生命体、奴らは―」
「ハイ!ドーン!」
銃の引き金を絞る手が緊張で震えるような感覚はもうない。銃を持たぬ手と肩が居心地悪く浮き、固定すべく力を込められていた手が空に力み小刻みに震えだす、そんな感覚ならある。
私の場合はこの木刀だけど、唯一形が残っている思い出の品。
ハンドルを握っている時も落ち着く、安心する。守られているような気がして、安心する。
こんな世界はもう嫌だ。
震える手に力がこもる。
震えが無くなるまで私はアクセルを回した。
*
また夢だ。
あれ?
どこだ此処だろう? いつもとは違うが変な夢だ。
「誰だ?」
こっちのセリフっすよ、 んぅ~… 。
「髭モジャモジャっすね」イケメンなのにジジイ臭い、少しもったいない気がする。
「 …ああ、 …だな」
「気付いてなかったんっすか?鬱病っすか?」
「よく喋る夢だな」砂浜に座ったまま動こうともしない。
私は夢の産物ではない、調子が狂う。
「はぁ… 夢に出て来るイケメンだからって期待した私がバカでしたよ」
「俺は自分の事を男前なんて思った事は無いはずなんだがな… 」
「思っていても口に出さない方がいいっすよ」
「自分が言うとは、な… ハハハ」
笑顔だ、んぅ… 。
「いやー、似ているな。本当に」
「 …魔王に、っすか?」この人もか、がっかりだ。
「いや、違う。 確かに君は少し前の俺と似てはいるけどな」
「 ? 」何言ってんだ、調子が狂う。
「此処は海辺の砂浜だよ」
「え、今答えるんっすね」
「ん、ああ」
「んぅ… 」
「密度と比重の異なる気体が溜まっているような静かな水面だろう」
「そうっすね。 水面で見ながら髭でも剃ったらどうっすか?」
「だな、角もついでに磨くとするか」意外と背が高い、悲壮感漂う雰囲気とは違い頼もしくたくましい肉体だ。
「 」
私は馬鹿だ。彼は悪魔だ。
恋をするにはあまりにも多くの人を殺してしまっている。諦めていたものが目の前に現れ出でた時、人の後悔は最高潮に達するらしい。
「うお!高そうな剃刀っすね」ダイヤモンドのように光り輝いている。
「お世辞はいいよ、今適当に創ったやつだし」
さすが夢の中。
「詠唱無しで物質の創造っすか」
「詠唱する必要性が無いからな。 それに詠唱って格好悪いしな」
「魔法やってます、ファンタジーやってます、って感じがしていいと思うんっすけどね」
「 ? 、 ファンタジーやってます?ってなんだ?」
「 …まぁ、そうっすよね」もとよりファンタジーな世界、更にその夢の中だ。
「悪役が自らの計画を慢心からヒーローに語る事くらいにダサい」
「慢心からの語りは確かにダサいっすよね」
「悪の美学では、計画を語ったうえでの犯行が良しとされてはいるが、慢心からの語りはいただけないな」
「なるほどっす、犯行予告っすね」
「予告が、こんな事をやろうとしていたんだ俺はスゴイ、って言い訳に聞こえてしまうからな」
「詠唱も似たようなものなんっすね」
夢の中、私は考えをまとめているのだろうか?
語り相手が男前系のイケメンとは、私も乙女なんっすかね?
夢に心が表れる。こんな乙女心が私にも有ったとは驚きっすね。
「ああ」
「フフフ、っす」
「君は誰だ? 過去の記憶や私ではないようだが」
「 ? 、 私は私っすよ」夢の中で自分を問うとは…
「君は、Clown=Lord を知っているかい?」
「誰っすか?それ」ロード、王と名の付くピエロ? 「魔王なら知ってるっすけど」
「当たり前な… ん、 …なるほどな、そういう事か」
「え、なんっすか」何の話を― 「ん!」近い、んっぅ… 。
「その見た目ではさぞ辛かろう、反転させる事しか今の俺にはできんが詫びのしるしと受け取ってくれ」
白の反対は黒だと概念付けられている。
「頬の印の色も左右反転してしまったな… 」
「うお!黒い!」夢の中だけでも、って事なのであろうか?「染めても染めても白から変わらなかったのに、スゴイっすね!」
「フッ、弾かれるのは概念のせいだ」
「思い込みって事っすか?」
「フッ」
「 ? 」
「俺は両方赤かった、俺は最初から蚊帳の外だった訳だ。 俺は奴に創られた人形に入っていただけだから当たり前か」
ピエロと人形、だいたい想像がつく。操られたいたって事だろう、実際私はこうしてこの世界で戦わされている。
「霧のような霞のような靄のような存在、か」
「霧霞靄、私の名前と感じが似ているっすね」私の場合は猫たけど。
「似た者同士が三人か。 気を付けろよ」
「 ? 、 了解っす」戦争の真っ只中だ、常に気を張っている。「気をつけるのは当たり前っすけどね」
「フッ、そうか」
「フフフ、っす」
「此処は、流刑の地、復活の因子を抑え込む場でもある。過去でも未来でもない場所でありそういう存在が許される場所だ」
「お、急になんっすか?」
「いいから聞け」
「んっぅ~、了解っす」まあ、此処が何処か聞いたのは私だし。でも、答えて来るのは二回目だ。
そもそも、夢の中っすけど。
けどまあ、話せるなら何でもいいっすかね。
「俺は何度もここへ来ている。 繰り返している。 君はおそらく逆流の力を持つ王の因子なのだろう、見た目がまさにそれを現している。俺が関わってしまったからなのだろうがな。 だがそれも運命、大いなる神のシナリオか… 」
「逆流… ? 」リスポーン、これも逆流の力なのだろうか? ここは夢の中だ。幻想に責任を押し付ける程に弱ってはいない。「全部私のしている事っすよ、何か悪い事が起こってもアナタは関係ないと思うっすけどね」
「俺の責任は大きく重い」んっ、ウへへへへッ。
「 …お、俺が責任を取るってやつっすか。クッ、フフフ」黒髪が余計に私を女学生な気分にさせているのかもしれない。
夢は心が表れる、洗われるようだ。
「ああ、取るさ」
「んっぅ~… 」
欲望をむき出しに服を着たままの私を褒めてあげたい。
夢の中だから、夢の中だけは、乙女でありたいのかもしれない。
彼の前だからかもしれない、夢の中だけどね。いや、夢の中だからか。
ああっ… 、 やっぱりな… 、 これは夢なんだ。
「アハハハハッ… 、 嬉しいっすけどいいっすよ。自分でどうにかするっすから」
「そうか」
「そうっすよ」
「そういえば、まだ君の名を聞いていなかったな」
何で今更私が私の名を夢で問うのだろうか?というか、まだ彼の名も聞いていない。夢の中の住人だから無いのかもしれないっすけど、ね。
なら、せめて私だけでも答えようかな。
「私の名前は―――
波の音にかき消される。
先程まで凪だったはずなのに。
「間が悪いっすね」海を見た。凪の海だ。
彼は消えていた。
やっぱり、な。
夢は夢なんだ。
だからせめて理想を描くのだろう、現実が現実だから。
また同じ夢を見たい、彼に会いたい。
会えたらいいな。
初めてだ、夢を見ていて名残惜しいのは、いや、ヴァイオリンに次いで二回目か… 。
*
魔王に似ていると指される事は無くなった。
「会いたいな」
黒髪を愛でながら彼を思う。
「もしかしたら、夢じゃなかったのかもしれないっすね」
木刀を握る手の力が少し抜ける。角度の緩まった一振りが戦士の頭部を砕く。
「夫と一緒の所に行かせてください」
今ならこの気持ちも少し分かる気がする。
「はい、了解っすよ」
人の命を奪う事が怖くなってきた。
「夢の中、そうであってほしいっすね… 」
会いたい。だけど、こんな事をしている私はあの人に嫌われるんじゃないのかな、って怖くなってきた。
「同僚から聞いていたより随分とお優しい人のようですが、夜が激しいタイプなのですか? それは、それも、また。それはそれでそそりますわね」
悪魔が私に囁き掛ける。
私は女の子が好きだ。男性経験など無いが、私は女の子が好きだ。男は嫌いだから。
そう、あれはおかしな夢だったんだ。
私はその夜狂って眠った。
悪魔を悦ばせる程の狂い、気持ちが良かった。
愉しんだ、また、愉しんでしまった。
私はまたおかしな夢を見る、変な夢だ。
海辺の変な夢、だ。
「やっぱりな、そうっすよね」
「また、君か」
私の見る夢は、私をおかしくさせようとしてくるようだ。
「また、来ちゃいましたっすよ///」
「 ? 、 此処に座るか?」
「はいっす/////」どうせ、これは夢なんだ。
「 好きっす アナタのことが大好きです っすよ 」
「あっそ」
「えええ///// …そ、それだけっすか???」夢の中だ、でも、夢の中だけど少し傷つ―
「 」
「んっぅ///フフフッ/////」
頭を撫でられた… フフフ 。
狂った私の狂った夢の中、私は彼に寄り添い座り抱きついた。
乙女のように抱きついた、抱き合ってはいない、私が一方的にしているだけだ。
夢の中だから、いいよね。
夢の中くら、いいいよね…
「 キスしてもいいっすか? 」
お読みいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。




