第二話:ピエロは憂鬱を転寝に微睡む。
ハッピーエンドが実は違うんじゃないのかなって思い始めたらもやもやしますよね。
何処を終わりとし、どう解釈をするかは自由です。
お楽しみいただけたら幸いです。
This was quite sudden…
[ HEY! CLOSE!! Hands up! …I's family is hate you,Hate to thinking,You is the clown. ]
[Yes!HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHHAHAHAHAHAHAHAHAhaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!]
[Shut up! Freeze!! See you friend!!!]
[ …FRIEND? NOooo!!!!!HA~ha~!!!!!!!!!!]
[Why!? Really!?]
[ …the clown]
[YES!!!!!]
I's fa<パーン>
「何だこれ、くそつまんねーっすね」
<パーン> 『前回までの <パーン> 『大昔、それはまだ <パーン> 『This was quite sudden…
「まだみてないのこれだけかっすね」指で動く絵をはじくのを止めた彼女は【 ネコミー 】さん、私の命の恩人だ。
見たこともない、機械と呼ばれる類のものだろうか?、見たこともない程に重々しく細々い流線型の鉄の陸鯨に私は乗っている。
命の恩人である女神さまのようなこの人は動く絵、初めて見たけど映画だろうか、それを見てぼやいている。
本やこういった映画なんちゃらは共通語システムの対応圏外であるから、この小さなピエロが何を言っているのかは分からないが、彼女のつまんないと言う言葉でだいたい想像出来る。
ピエロが好きだからこそ気に入らないところが出てくるのだろうか、私には分からない。
だから知りたい。
「どんなぁはなしなぁんっすかぁ?」
自分でも分かる、滅茶苦茶な言葉使いだ。
でも、この人と同じ感じで話したい。
「んー、殺人鬼に家族を殺された男のつまらない復讐劇っすよ」
「そうなんっんっすねぇ」復讐は何も生まないと長老が言っていた。
何も得られない話ならつまらなくて当然なのかもしれない、でも、彼女とはどんなことでも話していたい。
私は彼女のお腹に回した腕をぎゅっとした、勿論優しく。
「アハハハハッ、くすぐったいっすよボッポちゃん」
でも、緩めない、緩めたくないから。
ものすごい速度で陸を駆けるこの鯨から振り落とされないために、怖いので話を途切れさせたくはない。
そんな言い訳を自分の心にしながら、助けられたことで憧れてしまっているだけなんだ、と。回した腕をぎゅっとする。
服の上からでも分かる柔らかさに頬を赤くしながら私は風を感じている。
「風が強いっすねぇ」
うまく言えた気がする。
「そうっすねー、風よけでも出しておきますっすかね」
「!?」
驚きだ、助けてくれただけではなく近くの街まで送ってくれるというだけでも驚きだったのに更に驚いた。
「まぁほうってこんなんもあっるうんすねぇ~!!!」
「アハハハハッ、魔法じゃないっすよ」
迫り出してきた鋼蛇の肋骨に飛竜の翼膜を貼り付けたような殻が私達を覆う。
透明?
殻は周りの風景と同化しているように見える、風を感じる事は無く風景だけが流れて行っていて少し不思議な感じがする。
「 Convertible だよっす」
何語か分からない、翻訳されていない… ?
いや、発せられた言葉が翻訳されていないなんてことは無いだろうから、私がそれを知らないだけだろう。
「そおなぁんだぁでっすねぇ」
詳しくは聞かない、難しい話は苦手だから、彼女の前で恥ずかしい思いをしたくはない。
興味が無い訳ではない。
彼女が造ったのか、それとも買ったのかは分からないが、価値の有るものだと思う。
田舎者の私が呑み込むには大き過ぎるだけなのだ。
「あとぉどぉんれぐらいなんですっかぁ?」
話を変えて会話を続ける。
「モジャルートシティまで230KMくらいだから、45分くらいかなっす。ちょっと時間がかかっちゃいますっすね」
「うっへぇ~!? は、はっやぁいっすよぉお!!」
馬車や一人乗り強壮走鳥でもそんな時間で230KMを走破するのは無理だ、体感以上に速度が出ているらしい。
壱ノ月が顔を出し始めている事から助けられて既に5時間近く経っている事が分かる。
世話になりっぱなしだ、初めて飲んだが、回復薬までいただいてしまっている… 。
ネコミーさんは何故あんなところを走っていたのだろうか… ?
百年前より赤き牙虫が荒れ地を巣として顔を利かすようになって以来、陸の孤島となっていた私達の村近くに来ていた理由は何だろう?
(ネコミーさんも勇者様なのかな?)
*
到達者、代理者、そう呼ばれる者達は酷く歪んでいる。
強すぎるのだ。
物理限界、人知を超えた力を持っている。
荒野の中央にて巨力が顔を合わせる。
「我々ハ、第十九ノ代理者。汝ハ何番目デアルカ」
血のような赤で塗り潰された全身に口を持つ巨大な蟲の軍隊が長が口を鳴らす。
「18っす」
18、赤き蟲に問われた者が答える。潤いのある声の主、18、それが年齢のようにも感じる朝靄のような輝きと不気味さを漂わせる白麗少女が独り蟲に近寄る。
「答ヲ聞ケテ良カッタ。 頼ミタイ、我々ヲ殺シテクレ」
「いいっすよ」
「愚カデハアルガ、戦ッテ死ニタイ」
「了解っす」
罠ではない、知性有る者の純粋な、殉教者がごとき狂い無き瞳で見据えた己が死に華。
赤き蟲は知った、己の見ていた世界の愚かさを。己が神に捧げることを誓いし世界には怪物が居た事を知った。
「第三、奴ラニハ気ヲ付ケロ」
「知ってるっす」
奴らの乗っていた禍々しい芋虫がごとき鉄の塊に乗って来た者には大きなお世話であったなと蟲は己を笑う。
そして、赤き蟲は誰にも迷惑をかけない荒野にて赤き死に華を咲かせた。
一瞬の出来事、その言葉さえも遅く感じる時間で決着がついた。
目は光を捉える。物体に反射した光を。
つまり、目で見たものがそこに有るとは限らない。
『残像だ』テンプレとしてネタとしてこの言葉を使っている世界があったが今は昔の話だ。
音どころか光を置き去りに、正確には、透過し貫通し核融合炉体内保有生命体としての利点を生かして前に出た。
拳などではない、人間サイズの物体が通過した、という事象を与える一撃だ。
視覚不可の透過し貫通する程の速度で持った一撃、超過による破裂、事象の反映は少女の足が止まった直後に起こった。
「見事ダナ、悔イ無シ!!!」
肉体無き後弾け残った口のみで話せる生命力に驚く、直後に死したが驚きだ、あれをくらっていていきているとは驚きである。
攻撃を放った本人でさえも死しているのだから。
< ポーーーン >
「生き残りは居ないみたいっすね」
呪い、錬金術、等価交換、魔力保存の方程式、何かを得る為には相応の何かを犠牲にしなければならない。
魔王は業を、ピエロは運命を、愛を幸せを、どんな者にも科せられている理。
犠牲が大きければ大きいほど呪いや魔法は上手くいく、彼女は、少女は己の命を犠牲にし一撃を放ったのだ。
デフレな一撃、感覚狂いの粋狂は国を亡ぼす悪手となる。
少女はそれを知っている。
代理者だから、到達者だから。
自分の居た元の世界の時が止まっていない事を手持ちが消えぬことから察している。
彼女は代理者だ、箍の外れた到達者だ。
百年もの時の流れが彼女をより歪めた。
自ら死を望んだ神、リスペクトとオマージュ、彼女は己が神をも殺すであろう。
何故ならば神がそれを望んでいるからだ、だが、魔王はそれを望まない。
何が現実で何が嘘なのかも分からない世界で魔王は独り神を恨む、花咲かる墓地の中で愛する者達の増え行く新たなる亡骸と共に。
延々と淡々と刻々と霧の中で濃霧へと微睡昏睡し行く…
*
天高く手を伸ばす欲深き摩天楼の針山の影に根付かず揺蕩い流れ溜まった浮浪者の峰をかき分け鉄の陸鯨が進む。
「・・・」
「怖いっすか?」
「 …んだぁっす」
虚ろな瞳に晒されている気分を味わいたいような奇人ではない少女は霧に縋りつく。
「フフフ、外から中は見えないので大丈夫ですよ っす」
「んだっす…」
ピエロは嗤う。
借りている宿屋へと向かう道中、彼女はわざとダウンタウンを帰路に選んだ。
「あ、あれわぁ、…」自分と似た民族衣装、部族は違えど神獣崇拝の先住民であることに違いない「 …んなぁ、 … 」言葉を失う。
誇りと高潔さを失った同胞のくすみを目にし、死にかけてしまっていた己の弱さを感じ、心細さで弱り切った少女には己を包み込むこの濃霧が心の支えになっていた。
虚無が村に迫っている、巨大な魔力の消失を感じ取った為にそう思った少女と村人達は悪手、時を先んじたのだ。
急ぎ回った足が縺れ倒れ込んだ先に居たのがピエロであったこの事は運命なのだろうか… 。
哀れ、今宵少女は純潔を奪われる。
少女の純潔など毎夜毎晩失われている。
この少女はましなものだ、自ら開いたのだから、自ら足を進めたのだから… 唯一頼れるこの霧に見放されないようにするために。
哀れなのは少女の行動の全てが霧の中であったということだ、自ら濃霧に足を踏み入れたのではなく、もとより霧の中、濃霧の手中。
明日の朝日は昇らない、上にも横にも後ろにも霧が立ち込め光を遮っているから。
少女は夜を待ち望む、 朝日が昇るのを拒むほどに。
流れた時は四五日、穢れを知らぬ少女は欲に塗れてしまう。
純潔が故に。
「今日は何処に行くんっだすかぁ」ぎゅっと抱擁を交わす少女の胸と胸が、霧のように白い柔肌と小麦色の柔肌が重なり広がり合う。
「少し離れたところで獣退治っすよ」柔らかい唇が艶やかに歪み艶めく、意思のこもった舌先が快楽に浸った柔らかき舌を持ち上げすくい込む、撫でる様に入って来る舌先を拒む意思は歯には無い、少女、彼女自身にも無い。
「いつ帰ってくるんですぅかぁ」喋る吐息がくすぐったさを感じさせる距離で目と目を合わせる少女と少女の腿と股が吸い付くように絡み合う。
「お昼には帰ってくると思うっすよ」言わずもがな、少女は少女の柔らかさと若き張りをその口で味わい桃色を愛でつつ答えた。
「待ってますっすねぇ」
「フフフ 、 っすね」
朝日と共に頂を迎えた少女はこれも悪くないと思いつつ、昼に備えて眠りについた。
お読みいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。