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第三章:百年戦争  作者: 赤花野 ピエ露
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第十二話:殺伐と殺戮に救いの手を。

白彦がどのような存在なのか書いてから暫く経ったのでばらすと、湖で白彦が先に行き居なくなったり、白彦が居なくなってから双葉ちゃんが現れたり、挿絵で登場した白彦が言っていた言葉や全身が映っていた意味などなど、伏線は色々ありました。


 白彦、このお馬さんの名前だ。

「魔王を救うため、日輪を倒す為には強くならなければならないでござるよ」

 私もそう思った。なので、一旦魔王のもとから、花園から離れる事にした。

「おぬしの中にある力を解放してあげるでござるよ」

 私は力を得た。元の力を、失われる前の力を。


 私は魔物狩りを始めた。


 なんだかとても懐かしく、それがお馬さんの言っていた私達の過去のお話が本当なのだと実感させてくれた。




「邪菌アンリ、あいつのほうが強かったすよ」私は地を力なく這いずる魔物にそう声をかけた。

「アンリ… しらねぇよ死ねくそったれが… 」私が名を出した魔物、その力で地を這いずらせている魔物、どちらも強者だが、

「知らなくていいっすよ。 どうせあんたは死ぬんっすから」私に比べれば弱者だ。白彦のおかげで私は強さを取り戻し、今回は怠けず強くなることに集中した。


 全ては、魔王を救うために。


 嗚呼、愛しき魔王… 。


 もうすぐ、もうすぐでそちらに戻ります っすよ。






   *






 ニトロハートの真相


 ニトロハート、それは世界最悪最強のウイルスの名前だ。

 あまりにも絶望的な症状を社会全体に世界全土にもたらすウイルスである。都市崩壊型ウイルスならぬ世界崩壊型ウイルスと恐れられ、ある世界では、いや、殆どの世界で神の手によりその情報を改ざんされしウイルスである。

 大いなる神が自らを殺すために創ったウイルスであるから当然の力だ。世界崩壊型殺神ウイルスと言っても過言ではない。

 もしこのウイルス知性があったならば、恐ろしいことだが、大いなる神は死なずとも間違いなく短期間で代理戦争を終結に導いていたであろう。


 このウイルスの特徴を幾つか挙げるのならば、先ずはその極小さがあげられる。パルボウイルスの20分の1のサイズの複合型ウイルスで、空気感染が主な感染経路である。その小ささが故に目の細かいフィルターをすり抜け肺又は口内の裂傷から体内に侵入する。感染者の体液を直接触るなどの接触感染も可能で、感染発症の確率は99.99%であり、致死率も同程度である。一度でも、一人でも、感染者が見つかれば感染者の行動した地域を隔離凍結しなければならない。

 それをしなければならないほどに恐ろしい特徴をこのウイルスは持っている。

 それは、爆発感染である。その名の通りの爆発を引き起こす。パンデミックという意味ではない、物理的な爆発だ。


 恐ろしいことに、このウイルスは爆発物質を生成するという特徴を持っている。


 ニトロハートは体内に侵入するとミオグロビンに結合、長い潜伏期間の後、周辺の筋細胞を変質させ全身に回る。変質した筋肉は動く度にそのエネルギーを利用変換して加熱性のある化学エネルギーを蓄えた極微細な特殊物質を生成し貯蓄する特性を持っている。つまり、ニトロハートは爆発物質と酸素を蓄え筋肉を爆弾に変える。


 考えてみてほしい。


 接触感染と空気感染を行えるウイルスが感染者の血肉を爆発によりまき散らし更に風に乗り汚染地域を拡張させる悪夢を、地獄を。

 ニトロハートは筋肉を爆弾に変える。つまり、心臓もだ。そして、起爆のスイッチとなるのは感染者の死。

 心肺の停止、脳機能の著しい低下、この二つの内一つでも当てはまれば感染者は即座に爆発する。感染者が複数いた場合連鎖爆発を引き起こす。

 ニトロハートの生成する爆発物質は0.002㎎でTNT換算で5トンに当量する爆発エネルギーを持っている。


 感染すれば逃げ場などない。


 人一人で百万人都市が吹き飛ぶ危険性のある爆発を引き起こすウイルス、それがニトロハートなのだ。

 しかし、恐ろしいことにこのウイルスをより凶悪に手を加えた馬鹿な魔物達が居た。

 核ミサイルの発射スイッチをサルや気の荒い子供に持たせる事はしたくはないであろう?

 作らなければよかったのだ。

 だが、


 もう、何をしても全てが遅いのだ。

 戦争ほど引っ込みのつかない意地の張り合いはない。

 大いなる神にとってはどうでもいい話、このウイルスを作った三番目の子の、三番目の分身の死でぬか喜びをさせられて以来自らの子らに期待をするのはやめたから。ただ力の分散としてしか見なくなっていた。

 戦争に参加した者たちの想いなど大いなる神にとってはどうでもよいことなのだ。

 だからこそ、生まれるものがある。

 第三の代理者達はいったい何を神として崇めていたのか、答えは既に出ている。


 タイムトラベルや平行世界、異次元からの来訪者はSFの定番。強欲にもそれら全てを行おうとしている者が居た。




     「罪を犯しておいて楽に死ねるとは思わないでほしいね」




 赤い義手の女、欲深き魂の使徒。最初から居た者の一人が今、神の喉元に迫っていた。殺されることを望む神はそれを止めはしない。






   *






 光を置き去り超常的な現象を与える。

 死散、超過爆散。

 そこにニトロハートが加わる。


 最狂の存在に最強最悪のウイルスが渡ってしまう。


 万物の霧を呑み込んだ暴嵐がこの世界に新たな日の出を、死に起き上がり核少女の絶望的な死の暴嵐が意味を持てない戦争終結をもたらした。


 白彦は嗤う。


 双葉の失敗は自らの親を殺せなかったことだ。だから一度魔王に双葉を殺させて力を還元し元に戻した。

 しかし、ピエロと魔王は殺し合いをしながらも結果を出せなかった。

 丁度いい、大いなる神はそう思った。

 盤上に上げられた一匹の黒猫、黒猫はやはり不吉の象徴なのかもしれない。




「 …何で私まで」


 姉が妹に問い掛ける。

「演技したまま死ぬなんて哀れっすね、さすがはピエロっすよ」

 会話にならない。

 家出少女が久しぶりに家族と会った。が、別人になっていた。

 ドラマチックな展開なんて有り得ない。

 何故なら彼女は男のことしか頭にないから。


「ようやくあなたを救えるっすよ」


 『魂を解放するには、一度殺さなくてはならないでござるよ』

 彼女は後ろをついてきている白彦の言葉を思い出し胸を痛める。

 殺さなければならないのは辛い。でも、これ以上彼に辛い思いをしてほしくはない。


「ただいまっすよ」


 彼からの返事は無い。

 まるで石だ。

 もう一人の私を抱いたまま固まっている。


「今、私の方に振り向かせてあげるっすよ」






「何これ」攻撃が通らない。


 何で?


「透過の能力はどうした?」


 一瞬誰か分からなかった。


「最後の最後で役立たずだな」


 白彦だ。その声にある色は怠惰な憂鬱。


 何で、何で、何で… ?


 魔王を救ってあげられないことに絶望し膝を着く。

 世界はまた繰り返しの渦へと戻ろうとしていた。


 しかし、救いの手が差し伸べられる。


 代理戦争が終わりを告げたことで神の手が差し伸べられる。


「やあやあ、初めまして。 黒鉄翠とは私だ」

お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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