引き立て役と便利女は同じ
次の日は朝一で、先生が来るまで、クラスの女の子達に「いいなあー」「羨ましい~」と言われた。
クラスの女達に囲まれて、直人先輩のことを聞かれた。出会いから、全部細かく聞かれた。別に話すことなんてないのに。
たまにジャイアン先輩のことも聞かれる。本当に、ジャイアン先輩を好きな人達の趣味、最悪だ。
私は先輩たちのことを聞いていないのに、周りの女の子達は勝手に先輩達の情報を話す。よくここまで知っていると、感心する。
女の子達の情報摸は、侮れない。情報を話す女の子達はいいけど、嫌味を言ってくる女の子達。
どうして私にそんなことを言ってくるのだろう。決して可憐さんや美奈ちゃんに言わないで、いつも私に言ってくる。
「順子。日曜日の計画立てるから、こっちへ来て」
嫌味を言われてムッとしていた所を、可憐さんに助けられる。
「順子、何か言われた?」
「ううん!」
どうも私は、かなりチキンだ。
可憐さんにあの子達のことを言うと、どんな反撃をするか知っている。だから、決して可憐さんには言わない。
「あっそう。もし何か嫌味言われたら、私に言うのよ。一応順子は私のものだから、守ってあげる」
「う、うん。ありがとう……」
可憐さんの中で、彼女の下僕に認知されているんだ……と新たに認識した。
「だから、日曜日のお弁当。順子が作ってね」
「えっ、なんで?」
「だって、私、料理出来ない。まあ、材料費は出すよ」
中学一年の私だって出来ないよ。と言いたいけど、母親は料理が上手だけど、かなりの怠け者。
「女の子が三人もいるんだから、どうして私が料理をしないといけないの?」
と母は言って、料理をほとんどしない。その他の家事も、しない。
「私は外で働いているんだから、家事をする暇ないわ」
母はキャリアウーマンだ。
幼いころから私は部屋が汚れているのが嫌で、自然と掃除をするようになった。お腹も空くから、いつの間にか料理をするようになった。
「順子ちゃん一人じゃ大変だから私も手伝うよ」
「ううん。朝早く、私の家に来るの、全部は大変だからいいよ。それに、私のお母さん料理上手だから、大丈夫よ」
つい美奈ちゃんに言われると、彼女に迷惑をかけたくない気持ちになる。これが、可愛い女と引き立て役の違い。かもしれない。
可愛い女の子には、自然と助けたいと思わす何かがある。引き立て役の女には、こき使いたくなる、なにかがあるのかな?
土曜日の午後、ずっと料理していた。
「あなたが受けたことでしょう。自分で料理しなさい」
少しは手伝ってもらえるかな?と、期待していた母親に、あっさり否定される。
仕方なく土曜日に、冷凍食品を中心に買い出した。
その晩、作った煮込みがたくさん余ったから、よかった。これで、少しはマシなお弁当を用意出来そう。
土曜日の夜は、ほとんで眠れなかった。だから、日曜日の朝は早く起きれて、お弁当を作れた。六人分を重箱に入れた。 その晩、作った煮込みがたくさん余ったからよかった。これで少しはマシなお弁当を用意出来そう。
水筒にお茶を入れる。料理が終わった時は、待ち合わせまで後三十分しかなかった。
急いで、ジーンズとTシャツを着る。動物園へ行くし、重い弁当を持たないといけないと言うことしか頭になかった。
オシャレをしようと言う気持ちが、全然なかった。
肩まである髪の毛も、いつもの通り。スニーカーを履いて、重たいカバンを持って駅へ急ぐ。
「順子。おっそーい。こっちこっち」
待ち合わせ場所には日曜日なのに、人が多かった。
何度か人にぶつかりながら、やっとみんなの所へ着いた。
(シマッタ!)
可憐さんのすごく決まったオシャレな恰好。黒のサブリナパンツでカッコいい。美奈ちゃんは花柄模様のフレアスカートを着ていた。
「遅い」
挨拶も忘れてボーっとみんなの恰好を見ていた。
直人先輩の私服姿で、いつもより何十倍カッコいい。ジャイアン先輩も、あのケンタだってカッコいい。
私は、私は……どこの田舎モンと言う恰好だった。
「お弁当持って来てくれたの。ありがとう」
手に持っていた大きなカバンに気付いた直人先輩が、笑いかける。
「そうなのー。私達も、作るのを手伝うって言ったのに、順子が、一人で作るって言ったから~」
可憐さんが私が返事をする前に言った。
「順子ちゃん、料理が上手なんだ。いいお嫁さんになるね」
嬉しくて、目に涙が沸いた。