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あざとい美人さん

 先輩たちが私の教室まで送るよ、とぞろぞろ大名行列になった。もちろん私は引きずられる罪人だ。

 廊下を直人先輩とジャイアン先輩とケンタと、一緒に歩くのは辛かった。廊下にいる生徒たちが壁に移動して、私たちに道を譲る。それに噂を聞きつけた教室いた人たちが興味津々でわざわざ廊下を見る。このヤンキーたちの真ん中を歩く私は、ヤバい人の烙印をつけられた。

 

 ついでに、見せ物小屋のパンダ。モブパンダ決定。


「キャー、榊先輩かっこいいー」

(うん、分かるよ。先輩カッコいいねえ)


「ワー、山田先輩だ。カッコいい~」


 何人か目が悪い人がいる。ジャイアン先輩のどこがカッコいいの? 目が腐った末期症状の女の子たちが哀れだ。


「宮田君だ」


 宮田? 確か、ケンタの名字だったような……。


「宮田君、可愛い~」


(終わっている……)


 この学校の女子生徒の目は、悪かったんだ……。牛乳瓶底の眼鏡かけた子たちが増えるだろう。


「えっ、嘘!? 順子、どうしたの?」


 イケメンにすぐ反応する可憐さん。イケメンアンテナがいい働きをしている。このアンテナのおかげで、彼女は最悪性格を上手に隠すことが出来たと思う。

  

「順子ちゃん? 大丈夫?」


 私の心配をしてくれる優しい美奈ちゃんは癒しだ。


 可憐さんも、いい女モードに切り替えて先輩たちに話かける。


「順子が、どうかしましたか?」


 私を見て心配する顔。性格の悪い美人さんは、女優だ。 


「いや、そこで順子とダチになったから、順子の友達ともダチになろうと思っただけ。俺、山田剛。仲良くしてくれ」


 いつこのジャイアン先輩と、ダチになったの? 隣のジャイアン先輩にまた殺人ビームをする。


「まあ、そうなんですか? 私は『鈴木可憐』です」


 キラ~ンって、今、可憐さんの周りから音がした。頭を下げてお辞儀をする姿も、決まっている。イケメン限定で変わるこの態度。私には到底無理な芸だった。もちろんお辞儀をした時にチラッと豊富な二つあるメロンの谷間を見せる谷間があざとい。

 ちなみに可憐さんはメロンで美奈ちゃんはリンゴで、私は……こミカン……ってクラスの醜男どもが言っていた。ミカンにわざわざ『こ』を使うってひどくねえ? もちろん『こ』ミカンと言った奴は私のブラックリストのトップに名前を書いた。もしチャンスがある時はここぞとこいつを殺す予定。


「へえ~、近くで見ると、もっと綺麗だねえ」


 ジャイアン先輩、余計なことを言わないで。可憐さんの性格が、ますます悪くなる。高ビーの被害は、必ず私に向かってしまう。


「えっ、そうですか?」


 ほんのりと頬を染める可憐さん……。さっきの私と大違い。やっぱり、女度が負けているみたい。


「順子ちゃんの友達は、みんな綺麗だなあ。美人には、自然と綺麗な人が集まるんだねえ」


 直人先輩がまたエクボの笑顔を私に向けた。

 やっぱりこんなステキな先輩のことを、諦めるなんて出来ない。


「俺、榊直人。なおとって、呼んでくれ」

「まあ、ステキな名前ですね。なおとさん」


(おい、可憐さん。先輩に、なんて言う呼び方しているの!?)  


「な、直人先輩。は、初めまして、私、美奈。『内田美奈』といいます。よろしくお願いします」

「美奈ちゃんて言うんだ~。可愛いね」


 美奈ちゃんが、先輩の言葉に顔を染める。


(うん、やっぱり美奈ちゃん、滅茶苦茶可愛い)


 それに可憐さんと違って、きちんと『先輩』を付けている。


「本当に可愛いねえ。ケンタ、まじで羨ましいなあ。こんな美人達と同じクラスでえ」


 美奈ちゃんもすっかりジャイアン先輩とケンタの存在を、忘れていた。


「あっ山田先輩、初めまして」


 美奈ちゃんがジャイアン先輩に気付いて挨拶する。その前に気付いていたと思うけど、美奈ちゃんの中でジャイアン先輩は、二番手だったんだろう。

 

「あっ、山田先輩、初めまして」


 可憐さんも続く。

(ん?)


 可憐さんの綺麗な挨拶じゃなくて、普通の挨拶だった。可憐さんは、挨拶までレベル別け出来るんだーと感心する。


「あっ、ういっす! 俺のことも、剛って呼んでくれ」


 誰も馴れ馴れしく、呼ばないと思う。


「あっ、はい。山田先輩」


 ほら、って、可憐さんがとても露骨すぎる。山田先輩は、密かに引き立て役の男? かもしれない。同じ引き立て役として同情のぬるい哀れみの眼差しビームを送った。


「せっかく、こうして仲良くなったんだから、今度どっかに遊びに行かないか? なあ、直人?」


 いきなりジャイアン先輩が言った。

 全然、仲良くなっていないのに……すごい口実だと感心する。


「イイッスねえ。で、先輩、どこに行くんっすか?」


(はっ、! 何でケンタまで一緒なの?)


 って、私たち、誰も了解していない。


「そうだなあ。動物園」

(ブファー)


 よくぞ、笑わなかった。すごいぞ、私。今時、中学生で動物園に行く? これって、女性がお弁当を作る番になる?

 この私の存在を無視して勝手に話が進んでいる。もちろん引き立て役には経験上、自分の意見を言うとハブられるから黙っていた。


「まあ、ステキです」


 美奈ちゃんがキラキラしたお目々で直人先輩を見つめながら言った。


「そうね。じゃあ、お弁当は、私が作ります」


 可憐さんが返事をした。

「そう、そうか。じゃあ、今度の日曜日、朝十時に駅前で待ち合わせしようぜ」


 ジャイアン先輩が、勝手に話を進める。その前にみんなの用事を聞くべきだと思うけれど、俺さまジャイアンには他人のスケジュールなど関係ないようだ。


「あっ、はい。楽しみにしています」


 可憐さんがにっこり返事した。あざとい可憐さんは直人先輩のメルアドをちゃっかりしてた。ジャイアン先輩も携帯出して交換しようとしたが、


『キーンコーンカーンコーン』

タイミングのいいベルが鳴った。



「キャー、カッコいい~」


 と言う、黄色い声の中。「またね」と爽やかな笑顔で手をふった直人先輩とジャイアン先輩が教室を去った。

 放課後なのに今日は教室に残っている生徒が多かった。もちろん私の告白の結果が気になって残っていたみたい。一体いつ私の告白イベントが生徒たちに広まっていたのだろう。結局、プライバシーの侵害って言って可憐さんは直人先輩のメルアドを教えてくれなかった。

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