お正月は私の誕生日
冬休みに入ってクリスマスがきた。美奈ちゃんは直人先輩と過ごした。可憐さん、ジャイアン先輩、博人君、ケンタと私は、ワイワイとバカ騒ぎをして過ごした。また以前のようにみんなと過ごせて楽しかった。
美奈ちゃんと直人先輩がいなくて寂しいけど、二人も楽しい時間を過ごしているだろう。
ジャイアン先輩は十二月誕生日で、やっと単車の免許が取れると喜んでいた。
直人先輩とジャイアン先輩は別に不良じゃないんだって。バイクが好きで不良の先輩とバイクの話で盛り上がり、一緒にいるだけと言っている。そしいたらいつの間にか不良グループのメンバーになっていた。よくバイク乗りたいから、集まりに行っているらしい。
一月二日は私の誕生日だ。初商いお正月でこれまで何度、自分の誕生日を恨んだだろう。おせち料理の残り物を食べて、みんな初商いに行って。誕生日は二の次。私自身も朝早くに福袋を買いに出かけて、夜はクタクタになって誕生日を祝ってもらう体力もなくなった。もちろん他の家族も私の誕生日を忘れている。
結局いつも五日に家族で誕生日の祝いをしてもらう結果になる。生まれた時から自分の誕生日の日に祝ってもらったことがない。これって、モブ要素は誕生日のせいなのかも。
でも今年の誕生日は、ケンタが私と買い物に行くことになった。ケンタは私の誕生日を覚えていてくれた。
私の買い物に付き合うと電話してきた。
「荷物持ちするんだったら一緒に買い物に行っていいよ」
ケンタに「ああ、もちろんだ。俺は今年最初にデートできて嬉しい」と言った。
あっちこっちと好きな店を見て歩いた。私のわがままをケンタは嫌な顔をせずに付いて来た。そして私の荷物持ちをニコニコした顔でしてくれた。
サンリオのお店が見えたけれど、中に入らない。
「ここ見なくていいのか?」
「うん、見たいけど、きっと欲しくなるから、今日はいいよ」
「そっか。俺、実は、サンリオの店に用事があるんだ。だから、付き合え」
「えっ、そうなの?」
「ああ、まあなあ……」
歯切れの悪い返事がした。
ケンタって可愛い物好きなんだ……。
お昼過ぎだったけど、福袋がまだ売っていたけれど買うのを我慢した。ケンタの買い物はすぐ終わった。
(もしかしたら、ケンタは新しく好きな人ができたのかな……)
ケンタの持っているサンリオの袋を見ないようにした。
少しモヤモヤした気持ちでケンタに家まで送ってもらった。
「誕生日、おめでとう。これ、やる!」
目の前に、サンリオの袋があった。
「ッ!?」
ビックリして声が出ない。
「な、何で!?」
やっと声が出たと思ったらこんな言葉しか出ない。
「誕生日だから……」
「で、でも……私……もらえないよ……」
ケンタが私の顔を見て泣きそうな顔をした。
「俺だって、こんな女の物を持っていても、どうすることが出来ないんだよ。だから、もらえ!」
ケンタの辛そうな顔を見ていたくない。
「あ、ありがとう。じゃあ、この中身、一緒に見よう」
「あ、ああ」
私達は近くの公園へ行ってベンチに座った。ケンタは私の隣に座るのを遠慮したけれど、彼の腕を引っ張って隣に座らせる。
「わー、すごーい」
福袋はサイコー。次々に出てくる物に感動しいてはしゃぐ。品物を一つづつ、ケンタに見せた。やっとケンタも笑ってくれた。福袋の中に「キキとララ』のケータイストラップがあった。
「ケンタ、ララあげる」
「っ!? なんで?」
「いいの。私がキキもらうね」
男で不良のケンタが、ララを携帯につけるのは変かな? と一瞬迷ったけれど、彼に持っていて欲しかった。
「お、お、おそろい……」
「お揃い? ギャッハッハッハッハー。意識するんだったらこれあげない。カップルじゃなくて友情ストライプ。
もしケンタが彼女できて私とお揃いが嫌って言ったら外してね」
ウブなケンタが可愛くて笑ったら、ケンタは怒った顔をしていた。
私はかなり無神経で嫌な女だと思った。ケンタはすぐにいつもの顔になって「笑うなよ。もういいだろう! ほら、帰るぞ」と言った。
どうして私はケンタに恋をしないんだろう……。
「ねえ、ケンタの誕生日、確か夏休みだよね?」
ケンタが立ち止まった。
「覚えていたのか?」
「うん。夏休みで、誰にも祝ったもらえないと言った言葉を覚えている」
夫婦と、イジメられていた時に、ケンタとたくさんの話をした。あの時の私たちは気付いていなかったけれど親友だった。一体いつ私たちは距離を置いてただのクラスメートになったんだろう。
「……そっか。ありがとう」
「今年は、ケンタの誕生日の時に、お祝いしに行くね」
明るく返事をする。
「順子。俺と付き合って。お願いだ。俺、順子のことが、好きで好きでたまらないんだ。
どんなことでもする! だから、お願いだ。付き合ってくれ!」
ケンタの真剣な顔。
「ケンタ……ごめん。私は……」
まだ先輩のことが好きと言えなかった。確かに先輩を好きなのに、もう以前のように先輩が好きと言う言葉が出ない……。
「ケンタは、あまりにも近すぎるの。兄弟のような、感じがするの……」
最低な断り方。でもケンタは、ずっと友人だった。一緒にいて楽しいけれど友人で兄妹だった。対等なんだけど、そうでもない不思議な関係だった。
「お、俺は、順子の家族じゃない! もういい。俺、もっといい男になって、必ず順子に惚れさせるからな!」
ケンタが怒って去って行く姿を見ていた。どうして、人の気持ちはこんなに難しいのだろう……。