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謝罪されると惨めすぎる

 先輩達が、教室へ行って私達の荷物を持って来てくれた。美奈ちゃんと直人先輩が私と話したいと言っていたらしい。でも私は二人と話をしたくない。


「時間が欲しい」


 そう伝えてもらった。その日、学校から帰ると布団に潜って泣いた。 両親には、気持ちが悪いと言った。もちろん晩ご飯は、お母さんが作った。

 

 次に日、熱を出した。今日は学校へ行かないと、美奈ちゃんが心配すると知っている。でも熱が出てほっとしている自分もいた。


『ピーチクパーチク』

 美奈ちゃんからの電話。ボーと電話を見ていた。

『ピーチクパーチク』

 今度はテキストだった。


「順子ちゃん、ごめんなさい。直人先輩も、順子ちゃんに謝りたいと言っているの。お願い、電話で話して」


 どうしてここで直人先輩の名前を出すのだろうと、少しムッとする。美奈ちゃんは優しいけど。優しさついでにいい顔を直人先輩へと私へ両方にしている。こんな中途半端な優しさは、人を傷つける。しばらく電話を無視した。


『ピーチクパーチク』

「もう~」


 頭痛いのにこのピーチクパーチクウルサイのだろう。自分で選んだ着信音にイライラする。


「順子、どうしたの? あんたも、ズル休み?」


 可憐さんからのメッセージだった。仕方なく、可憐さんに電話をする。お母さんが学校へ、連絡したはずなのに……。

「可憐さん」


 携帯を待っていたみたいで可憐さんがすぐに出た。 

 可憐さんは、学校をずる休みしていた。私が熱があると言ったら、「嘘だ」と言う。「泣きすぎて熱を出した」と答えると、「知熱だね。あんまり悩むからだよ。ちゃんと直して、学校へ行くのよ」と、ズル休みをしている可憐さんに言われた。

「可憐さんも、明日ちゃんと学校へ行くのよ」


「もちろん。順子が行くなら行くよ」


 と返事が返ってきた。やっと可憐さんから解放されて、布団に潜って寝ようとしたら、鳥の鳴き声。


「もう!」


 絶対に着信音を、変更しようと決心した。

 でも今は頭が痛いから、明日しようと思う。直人先輩と博人君とケンタからメールが来ていた。どうやら私が本当に病気と知ったみたい。謝罪文と、元気になってと、学校で待っていると言う内容だった。夕方にジャイアン先輩からもメールが届いた。

 次の日に学校へ行くつもりだったけど、熱は下がらなかった。可憐さんが登校拒否になったらいけないと思って、学校へ行くつもりだった。結局、三日間熱で休んだ。学校へ戻った日は、遠足の日だった。

 お姉ちゃんがおやつを買出しに行ってくれて、お母さんがお弁当を作ってくれた。久しぶりのお母さんのお弁当で嬉しい。

「順子!」


 家を出た時に、声がした。道路の反対側に博人君がいた。


「よかった。熱が下がったんだね」


 博人君が、にっこりと微笑んだ。三日ぶりに見る博人君の顔が、少しヤツレている感じがする。


「どうしたの?」

 ここに博人君がいるのが、不思議で尋ねる。


「待っていたんだ。どうしても会って、元気な姿を一番初めに見たかったんだ」

「あっ、おはよう」


 三日間ボーと熱で犯された頭は理解能力がゼロだった。


「ああ、おはよう。具合は、どう?」

「うん、いいよ。迎えに来てくれて、ありがとう」


 寝ぼけた頭を叩き起こして返事をした。

 博人君と私は、無言で学校へ歩いて行く。今日は遠足なので、二人ともジャージ姿だった。

「なあ、兄貴、順子に謝りたがっている。俺は、兄貴が悪いと思う。順子は、優しいよ」


 校舎の玄関の前で、博人君が言った。本当は、博人君と一緒に学校へ来たくなかった。学校の近くで、別々に行こうと言ったら「なんで?」と聞かれた。

「付き合っているって、噂されるよ」

「別にいいよ」

 全然考える暇もなく言った。


 普通だったら、怒って走って学校へ行くのに、今日はもうどうでもよかった。案の条、校門あたりから、生徒達がチラホラ私達を見ている。

 博人君と別れて、教室に入ると女子達に囲まれて博人君と付き合っているのかと尋問を受ける。「偶然、近くで会ったから一緒に来た」と言うと、何人かの女の子達が、安心した顔をしたのに気づく。


(博人君、やっぱりモテるんだ……)


胸がチクリとした。

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