挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
「モンスター使い」を愛する人に捧ぐ小説 作者:ヒツキノドカ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1/58

モンスターパレード


 闘技場は熱気に包まれていた。

 周囲をぐるりと観客席に囲まれた楕円形のバトルフィールドでは、二体のモンスターが接戦を繰り広げている。


 白銀の竜。
 虎に近い外見の、巨大な獣。


 どちらもモンスター使い(テイマー)に従う使役獣だ。

 その日はテイマーの実力を競う大会の決勝戦だった。
 それぞれの使役獣を戦わせ、一番優秀なテイマーを決める。そういうイベント。

 大掛かりで、いろんなところからたくさんの人が見物にやってくる。国内全土を探してもこれ以上に盛り上がる催しはないぞと父親に焚きつけられた僕は、そのお祭り騒ぎの渦中にいた。

 竜が目もくらむような灼熱の息吹をまき散らせば、獣も負けじと大地を割るほどの咆哮を叩きつける。フィールドはその人智を超えた戦闘の余波でめちゃくちゃに荒れ、攻防の一つごとに観客席から大歓声が巻き起こる。


 僕はといえば、観客席の最前線でかじりつくようにしてその光景を凝視していた。

 視線の先には二体のモンスター。

 竜の、獣の、一挙手一投足に目を奪われる。

「どうだ、ラタ。なかなか見ものだろ?」
「……」
「なあ、ラタ。楽しんでるか?」
「……」
「おお、竜種のブレス、とんでもない威力だな。あのテイマーはやり手みたいだ。そうは思わないか、ラタ?」
「……」
「ラタ、どっちが勝つと――」
「ちょっと静かにしてて」

 視線はフィールドに注いだまま、隣に座る父親の言葉をぶった切る。
 今はそれどころじゃない。

「……すまん」

 しゅんとする父親に少しだけ申し訳なさを感じなくもないけど、このときの僕に他ごとに割く余裕はまったくなくて。

 僕はただただ目に焼き付けていた。

 竜の魔法による暴虐。獣の四肢による圧倒的な破壊。それらは相手を倒すために全力で振るわれる。モンスター同士の頂上決戦。大戦争。僕は我知らず自分の服の胸あたりを鷲掴みにしていた。

 苦しい。焦がれるような感覚がある。足りない。もっと、もっと見たい。もっと近くで見てみたい。もっと、もっと、もっと、もっと、その迫力を、余すところなく味わいたい。


「……あ」

 それでも、やがて戦いは終わる。

 竜の放った業火の熱線は獣を薙ぎ払い、勝負は決着。

 今度こそ割れんばかりの歓声に包まれ、竜は勝ちどきの咆哮。

 竜のほうのテイマーは拳を高く掲げ、獣のほうのテイマーはがくりと膝をついていた。

 僕はド迫力の決戦の余韻に浸り、高鳴る胸の鼓動を抑えつけるように息を吐く。

 勝負が終わっても、授賞式が終わっても、なぜか少し落ち込んでいる父親に連れられて家に帰っても、その興奮は冷めることがなかった。

 これが、最初。

 大昔の記憶だ。

 分水嶺とか、転機とか、契機とか。人生における重要なターニングポイントのことをそう言ったりするんだろうけど、僕にとってはまさしくこの日がそうだった。

 モンスターの格好よさ。迫力。勇壮さ。そういうものに心を奪われて。


 ここに、来よう。
 もう一度、次は観客としてじゃなく。

 幼い僕は、熱に浮かされた頭でそんなことを想った。

 モンスターテイムものです。
 書き直し版になります。こ、今回こそはキリのいいとろまで行きます!
 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ