プロローグ(仮)
これはある勇者の冒険譚。
魔王を討つための、少年の冒険譚。
ある日ある小さな村の少年は特別な力を持っていることがわかった。
その切っ掛けは些細な友達との喧嘩であった。
その切っ掛けにより少年の友達は一生残るであろう怪我を負ってしまった。
だが、村人はたちはそんな事は一切気に留めなかった。
そう少年の「特別な力」に目が留まりすぐさま勇者として世間に認知され、人類の「希望」となった。
そうなるのも無理はなかった。
何故ならその時代には人類に仇なす魔物を率いる魔王と呼ばれる支配者が居たからである。
魔王の名は「アオイ・イブリース」。
性別は女性。その姿は見る者全てを魅了し、彼女の目に魅入られた者は支配されてしまうと言う。
ーーかくして、少年・・・いや美少年勇者「レイ・イフリーゼ」の魔王討ちの旅が始まっt。
「カットカットカット!おい、こら!何だその語りは?!」
レイ・イフリーゼこと如月 黎が椅子をガタッと引きながら勢いよく立ち上がる。
「何で止めるんですか先輩。ここからが盛り上がる所なのに」
アオイ・イブリースこと不知火 葵が不機嫌そうに頰をプクッと膨らませる。
「当たり前だろ!名前そのままだしテーマから完全に逸れてるだろ。テーマ覚えてるか?」
「勿論ですよ〜。テーマは『恋愛』ですよねっ」
葵は何故か頰を紅潮させ、鼻息を荒くし自信満々に頷く。
「今の話の流れでどうやったら恋愛の話に繋がるんだ・・・?俺達、演劇部は二人だけなんだぞ?まさか、魔王と勇者が繋がるってストーリーか?」
もしそうだとしたら、葵の事だ。魔王に勇者が支配されてあんなことやこんなことをする内に魔王に恋慕の情が生まれてめでたく結ばれてエンド・・・そんなストーリーが想像出来る。
ストーリー自体は良い。問題なのは「あんなことやこんなこと」の再現である。
そんな物大会で見せられたものじゃない。
次の日から俺達演劇部は・・・うん、辞めよう。バッドエンドな未来の想像しか出来ない。
「そうですよ。当たり前じゃないですか」
うん、予想通りだわ。
「一応聞くがあの後の展開は?」
「えーと・・・」
葵はそう言って自分で打ち込んで作ったのであろうやけに分厚い台本を開く。
「大雑把に説明しますと、まずは勇者が一つ目の村へ向かいます」
「ふむ、それで?」
「着いてすぐ戦闘です」
「おー燃える展開だな。魔物と戦闘か・・・ふむ魔物はどうやって再現するか・・・」
それを聞いた葵は不思議そうな表情をする。
ん?なんかおかしなこと言ったか、俺?
「違いますよ?戦うのは魔物じゃなくて村人ですよ?」
「勇者が村人と戦ってどうすんだよ!?あー、もしかして魔王に操られたって奴か?初っ端から大丈夫か・・・」
「?操られたんじゃなくて村人になりすました盗賊という設定です」
「何でそんな展開にしたんだ!?」
「むー、別に良いじゃないですか。続けて良いですか?」
もう良いや、俺が次の台本作ろう。うん、こいつに期待した俺が馬鹿だった。
いやね、内容はいいんだよ。じゃあ何が問題かっていうと人数がな、圧倒的に足りないんだよ。せめてそれを考えた上で書いて欲しかった。
とりあえずこいつの気がすむまで聞いてやろう。そうしないと拗ねるからなぁ、葵ちゃん。
「ああ、悪かった。続けてくれ」
「では・・・勇者は盗賊に騙されているとは知らずその村で一旦休憩することにしました。しかしさすが盗賊汚い。勇者は気を抜いた隙を突かれて盗賊に襲われます」
俺が勇者だったら完全に人間不信になるぞ。
「何とか勇者は「特別な力」で盗賊を撃退することに成功します。ですが戦闘は素人だった為大怪我を負ってしまいました。そこへ・・・魔王と出会います」
「それ、運が無いってレベルじゃないぞ!?」
「もう絶体絶命・・・そう思った時何を思ったのか魔王は勇者の傷を治しました。理由は一目惚れです」
まお○うかよ?!
「そして・・・」
「そして?」
「襲われます(性的な意味で)」
「18禁じゃねえか!」
「それから、5年後。魔王と勇者には家族が出来ました。めでたしめでたし」
「急展開すぎるわ!」
今日も俺達演劇部(二人)は通常運行です。
こんなんで大丈夫かな、俺達。
お読み頂きありがとうございます(^ω^)