1.1 宇宙艇デザイア
アーシャの回収は想像より手間取った。
廃棄された宇宙ステーションの残骸でレーダーはかく乱され、目視も妨げられ。
手間取ったと言うより結局一時間捜索しても見つからなかったのだが……。
結局アーシャはデブリを蹴って、自力で宇宙艇"デザイア"に帰ってきていた。
「はあ、疲れたっすよー」
「ごめんね、探して貰っちゃって」
「おう、アーシャ、イヴおかえり」
「おかえりじゃないっすよ、ウェン姐さん! 一緒に捜索に出たじゃないっすか!」
小一時間必死にアーシャを捜索したイヴは、タオルを首にかけ明らかに風呂上りのウェンディを指さし非難した。
「あはは、アーシャのことだから自分で帰って来るって言ったろ」
「うん! 自分で帰れたよ!」
「アー姐さんもウェン姐さんも楽観が過ぎますよっ! おわっ!」
無重力エリアと重力エリアの境目で体勢を崩したイヴをアーシャとウェンディが咄嗟に支える。
「イヴちゃん危ないよー?」
「そそっかしいな、気を付けろよ?」
ぷりぷりと怒ってる状態で躓いて、怒りの矛先の相手に助けられる。
「あんたらの方が危ないんすよー!!」
情けなくて恥ずかしくてイヴは叫ぶしかなかった。
◆◆◆◆◆
「あのバカ…やっと見つかったのね」
イヴからの通信で、エリカは安堵のため息を付いた。
「あの子にはちょっと厳しく説教を…」
「エリカくん、ちょっとカレー見ててくれるかい?」
「喋ってる途中! いつも唐突よね。貴女は」
艦橋でコトコトとカレーを煮込むオリビア。かつて宇宙戦艦の司令室だった艦橋はキッチンつきのダイニングルームとなっている。
「今回の相手は戦争屋、いつも以上に気を付けろって言ったのは君だろうエリカくん?」
「あー…はいはい」
梯子で格納庫へと向かうオリビアと入れ替わりになる形でアーシャ、イヴ、ウェンディが帰ってきた。
「やったカレーだ!」
「あれ? オリ姐さんは?」
「AAの整備に行ったわ」
「そうか。毎度手間をかけてしまうな」
「覗き込んでも早くならないから、ちょっと離れなさい!」
3人そろって鍋を覗き込むアーシャたちにエリカは声を大きくして言う。
この3人、それぞれ有能ではあるのだが、子供っぽさはどうも抜けない。
アーシャとイヴはともかく、ウェンディは子供って年齢でもないのだが……。
◆◆◆◆◆
子供3人を追い返して、カレーがよく煮詰まってきたころ。
「やあ3人ともおかえり」
ちょうどオリビアが帰ってきた。
アーシャ、イヴ、ウェンディ、エリカ、オリビア。レーション以外の食事は5人揃ってから、と言うのが暗黙の了解だ。
「はーい、みんな盛り付けるから手伝って」
「はい!」
「今すぐにっす!」
普段は少し頼りないアーシャもイヴも、この時ばかりはやる気に満ち溢れている。
5皿のカレーライスと大皿のサラダが並び、あっと言う間に食事の準備が整った。
「今日のいただきます係は誰だったかな?」
「オリ姐さんじゃなかったっすか?」
「そうかい。じゃあアーシャくん、よろしくするよ」
「毎回これなんだから、いただきます係はアーシャでいいん…」
「いただきまーす!!」
アーシャの元気の良いいただきますに合わせて、いただきますと3人の声が重なる。
「喋ってる途中!」