到着
それからまた空白の時間が流れ始め、俺はふと病室の時計の針を見るともう針が10時に振っていた。
もう10時か……時間が経つのは早いな…って、10時!?
「あっ」
俺は思い出した、余音さんが10時頃に下準備が終えて家に帰ってくることを……!
「どうしたの?」
そんな俺の様子に奇蹟は気付いたのか心配そうに聞いてきた。
「じ、実はだな、俺今日ここの家に泊まっていくんだけど、その家のひとがそろそろ帰ってくる時間ってことを思い出して……それで早く帰らないと心配するかな~って」
俺が心の中で思ったことをそのまま言うと、奇蹟は笑みを浮かべて。
「じゃあ早くその家に帰らないとね」
と言った。
「……悪いな、奇蹟。もっと喋りたいのに……」
「ううん、大丈夫……って言ったら嘘になるけど、大地君の声が聞けて一緒に喋れただけで私は嬉しいから、気にしないでね」
「……ごめんな、また明日必ずくるから!」
俺が扉の前で奇蹟にそう強く言った。
「うん、待ってる」
「……雨は……大丈夫だな」
病院の外に出ると雨はもう小降り程度に収まっていた。
また大振りにならないように俺は急いで病院を後にしたその十分後、暗いが微かに赤い屋根が少し遠くに見えた俺はさらに急いでその家に向かった。
「はあ……はあ……よ、ようやく着いた」
俺は赤い屋根の家の玄関口に立ち、俺は少し安堵しながらを障子を開けて中に入った。
「結構普通だな……」
俺は家の中を見た感想を口に出すと、近くにあったちゃぶ台にメモが置いてあった。
「何だ?」
俺はふとその紙を見てみると、その紙には食べ物がどこにあるのか、食器とかがどこにあるのかが書いていた。
「これは……ま、まさか、余音さんが……?」
余音さんはまだこの家には来ていない……ということは、初めから俺をこの家に泊めるつもりだったのか。
「……全く、皆優しい人ばっかだな」
奇蹟といい、余音さんといい、10数年振りに会うのにこんなに俺に優しくしてくれるなんて……俺は、幸せもんだな……。
「……まあ、皮肉なことにその幸せは、俺が嫌っているこの家に生まれたことのおかげなんだよな……」
俺はため息を吐きながら紙に書かれている食材や食器を探そうとしたその刹那、障子が開いた音がした。
「うわっ! び、ビックリした~!」
いきなりのことに俺が少し立ちすくんでいると、玄関の向こうから。
「大地君~いる?」
と余音さんの声が聞こえた。
「よ、余音さんの声だ……あっ、いまーす!」
俺が少し大きめな声で答えると、余音さんは。
「ごめんねー! 雨が降ってたから遅くなちゃって!」
と言いながら俺がいるリビングに余音さんは来た。
「あれ? まだご飯食べてないの?」
「え、ええ……実は俺もさっき来たばかりで……」
俺がそう答えると、余音さんは。
「そうなの……じゃあ、ご飯一緒に食べましょうか!」
と答えた。
うわっマジかよ! やったね! と心の中で歓喜した俺は。
「はい! そうしましょう!」
と元気よく答えた。




