奇跡
すみません、めっちゃ遅れました……
それから俺は余音さんが用意してくれた服に着替え、疑問を抱いたまま、奇蹟のいる病院へと向かった。
「さて、あとは奇蹟ちゃんの説得だけね」
何をそんなに不安そうにしているのか、俺には分からなかった。
だが、考えるのも面倒なので、そのまま玄関へも向かった。
「さて、行きましょうか! 余音さん!」
「えぇ…」
余音さんの返事を聞いた俺は勢いは付けず、普通に障子を開けて外に出た。
外に出ると、雨が降った後のせいなのか若干湿った暖かさだったが、もうすっかり雲一つも無い晴天に変っていた。
「もうすっかり晴れてますね、余音さん」
「そうね……さぁ、早く行きましょう」
奇蹟のいる病院へと足を前進させた余音さんに自分も「あっはい!」と後をついていった。
そして、数十分後
奇蹟のいる病院に到着すると、俺は早速驚いた。
「えっ? この病院ってこんなに古いの?」
まぁ、俺が立ち寄った時は雨でしかも夜だったからな……気付かなくても無理はないか。
無理矢理納得した自分に、余音さんは「最近建て替えるらしくて、それに費用を回すから清掃なんて勿体ないらしくてしないそうよ」と補足をしてくれた。
「へぇ~建て替えるんですか」
「えぇ、この病院の経営者も一応、宮野家の人だからそういう情報は自然と耳に入ってくるのよ」
「そうなんですか」
その人ケチなんだなと思いながら病院の入口を開き、中に入った。
「えっと……奇蹟の居る部屋は……ってあれ」
そう言えば俺って……奇蹟のいる病室に偶然入ったから病室の番号とか分からないじゃん!
……でも、余音さんに付いてけば問題ないか。
「どうしたの?」
「い、いえ、何でもないです」
「そう……」
ある病室の扉の前で足を止めた余音さんは俺を見つめた。
多分、ここが奇跡がいる病室で、先に行けってことなのだろう。
俺は頷き、104とある病室の扉を開けた。