考え
「余音さん!!」
早朝からのいきなりの俺の大声に余音さんは少しビクッとして「な、何? 大地くん」と質問した。
「思い付いたんです! 奇蹟を励ます……いや、救う方法を!!」
俺のやけに自信満々な表情に余音さんは少し疑問ぎみに「す、救う?」と口にした。
「はい! アレですよ! 余音さん!」
「あ、アレ?」
「はい! 移植という方法があるじゃないですか!!」
「い、移植!?」
そんな俺の答えにえらく余音さんはびっくりしていたようだった。
「移植って……ど、どれだけ難しいか分かってる? それに目の移植なんて……うちのとこみたいな田舎な所じゃあまず無理よ」
余音さんは半ば呆れ気味な表情で言った。
確かに……こんな設備の整ってない田舎の町じゃあ無理……でも、大きい病院なら!
「で、ですけど! 大きい病院なら可能性が……!」
諦めが悪いようにそう付け足しすると、余音さんはため息をついた。
「ふぅ……大地くん、貴方……やっぱり奇蹟ちゃんのことを」
「……えぇ、好きですよ! だから助けたいんですよ!」
今更ながら心のそこにある答えを俺は口にした。
「……分かったわ、知り合いが大手の病院にいるから、話は通しとくわ」
余音さんは観念した様子で受話器のある廊下へと向かった。
「あ、ありがどうございます!!」
自分自身の精一杯の感謝を込めて俺は余音さんの方向に頭を下げた。
数分後、余音さんが何事もなかったような表情でリビングに戻ってきた。
「ど、どうでした?」
暫くの沈黙の後、余音さんは笑みを浮かべて。
「安心して、大地くん。奇蹟ちゃんは彼らが責任を持って手術してくれるそうよ!」
その一言に安堵しきった自分は「や、やったぁ~」と腰を落ち着かせた。
これで奇蹟に生きる希望を与えることができる……!
俺が歓喜に浸っていると余音さんがいい加える用に口を開いた。
「ただし、向こうにも都合があるらしいから……1週間後ならいいらしいわ」
それは医者なのだ……手術のことがあるから明日から何え話は無理というのは当然だ……。
「そのくらい分かってますよ……でも、奇跡の目が見れるようになれば俺は……!」
「……本当にそれでいいの? 大地君」
再度、自分の意思を確認してくるように余音さんは自分に問うた。
だが、答えは分かりきっている。
「えぇ……もちろん」
だが、余音さんから返ってきた言葉は全く俺の予想外のものだった。
「……でも、奇蹟ちゃんにはまだこの事……言ってないのよね?」
「えっ? ……あっそうですけど?」
確かに。奇蹟には言ってはいないが……それはこの後、奇蹟の所に行って説明するってことでいいんじゃないか? 何せ、奇蹟には断る理由も無いから大丈夫だと思うけど。
「まぁ、それは奇蹟の所に行って説明すればいいだけの話では?」
自分が心の中で思い付いた事をそのまま言うと、余音さんは少しため息をこぼした。
「はぁ~大地君は、女心というものを理解してないようね」
「え?」
女心?
確かに男の俺には分からないことだけど……。
そんな俺の表情を見てか、余音さんは諦めたようにまたため息をつき「まぁいいわ、いけばわかる」と口にした。
「は、はい……」
俺は疑問を抱えたまま、奇蹟のいる病院へと向かった。
しかしそれはすぐに明かされることになることを俺はまだ知らなかった。