宣告
「……」
余音さんが着替えをしているあろう間、俺はずっと考え事をしていた……いや今もか……。
奇蹟……俺は何故かあいつの事が頭から離れなかった。まあ、初恋の相手だからとか何とかそんな理由かもしれないが、やはり、あいつが盲目だからだろうか? そんな考え事をしている内に扉が開く音がして、余音さんが目の前に現れた。
「あっ余音さん……」
「今から牛乳でもどう?」
「ぎゅ、牛乳ですか?」
「ええ、お風呂上がりの牛乳の味は格別よ、大地君!」
「そうなんですか、それは美味しそうですね……じゃあ、自分もいいですか?」
「えぇ、もちろん!」
飲んだら何かいいアイデアが浮かぶかもしれないしな。
まぁ、お風呂上がってから結構たってるけど、大丈夫だろ。
「……ゴクッ……ぷはぁぁ! 確かに、何かのどが潤されていくみたいな感じで最高ですね!」
俺は美味だった牛乳を飲み干してそう感想を口にした。
「そうでしょ? それに牛乳は健康にいいから一石二鳥なの」
確かに喉が潤されて、カルシウムも取れて一石二鳥だ…………ってあっ!
「し、しまった~!」
俺はとても重要なことに気づき思わず口に出してしまった。
そう、良いアイデアを考えるはずが、この美味たる牛乳のせいで
健康なことばかりを考えていたので、奇蹟のことについて全く考えてなかったのだ。
くそっ毎日余音さんと牛乳一緒に飲むとか、あわよくば余音さんと一緒に風呂に入る何てこと考えるんじゃあなかった!!
「ど、どうしたの大地君?」
そんな俺を心配してか余音さんが聞いてきた。
「い、いえ……何でもないで…」
そう無難に返そうとした刹那、あるアイデア、いや方法が頭のなかに浮かんだ。
そう! 余音さんに聞くという手が残っていたじゃないか!
「や、やっぱり何か変よ? 大丈夫?」
「…………」
どのみち、聞かないことには前に進めないんだ……ここは!
「すみません、やっぱり少し良いですか?」
「な、何?」
俺の真剣な表情を見てか余音さんも少しマジメや表情で俺の話を聞く体勢をした。
「…………じ、実は……き、奇蹟のこと……何ですけど……」
「奇蹟ちゃん? ……それがどうしたの?」
「……あいつ、両目が見えないんですよね……」
俺がそう言うと余音さんは少しため息をついた。
「そう……会ったのね……奇蹟ちゃんに」
「……はい」
「……えぇ、その通りよ。彼女は病の影響で両目が見えない……だからあなたを心配させたくなくて出来るだけ奇蹟ちゃんのことを言うのを避けてきたけど………」
そう言うと余音さんは少し顔を影に落とした。
「これを話すかどうか分かりかねるけど、話すわ」
えっ……まだ奇蹟のことについてあるのか?
一体、あいつの身に何が……。
そう考え事をしていると余音さんからとんでもない宣告を言い渡されることになった。
「実は……奇蹟ちゃんの余命は……あと一年しかないの」
「……えっ?」
それを聞いた瞬間、猛烈なる鳥肌と共に全身の血が逆流するような感覚に襲われた。