美園町
不定期更新です。
ガタンゴトンと電車特有の音が鳴りながら木ノ原大地こと俺はただ呆然と窓の外の景色を眺めていた。
時間が過ぎるにつれて景色も段々と田舎に変わっていった。
何故こんなことになっているのかと言うと、俺は昔からしきたりやら規則などが大嫌いな人間だった。
だから当然、俺が代々続く名家に生まれてきたら反発するのは当然でよく家出をしたが、運が悪いことに親が権力者のせいで意図も簡単に見つかってしばかれるというのが俺の日常だったのだが、ある連れ戻された日、家のダイヤル式の電話に一本の刑報が来た。
それは家の親戚である宮野家と呼ばれるある町を牛耳ってる名家の人が病で亡くなったらしく葬式にこいというものだった。
だが、冷静に状況を見つめて判断する木ノ原家とは違い感情と勘で判断する宮野家とは昔から仲が悪かったせいか、俺の親父とお袋は仕事という名目で行かず、叔父と叔母もその口だった。
だから最後に残った俺が強制的に行かされることになり、今に至る。
「はぁ……まだかな」
俺はため息を溢しながら電車の窓の虚空を見ていた。
生憎、葬儀が行われる美園町は随分な田舎だそうで、都心近くに住んでいた俺にとっては凄く遠いが、そのおかげで安保闘争なることに巻き込まれなくて済んだのが唯一の救いだった。
ぼんやりとしていると「美園町、美園町」という声が聞こえてきた。
「ようやくか……」
俺は深いため息を溢しながら電車を降りた。
目の前には美園町と書かれた看板があり、辺りは都心とは比べられないほど、自然が広がっていた。
現に、港があるから海水浴とかも出来そうだ。
おっと、ここにくる目的を忘れるとこだった……ってあれ?
「……切符どこだ……?」
ポケットにもない、辺りを探してもない……まさか。
「電車の中に落としてきちまったぁ!!」
俺は果てしない何かに襲われ、その場に崩れ落ちた。
「……仕方ない、玉砕覚悟で駅員に言ってみるか」
俺は無理だと思いながらわずかな希望を見て改札にいた駅員に切手を電車に落としてしまったと言おうとしたところ、聞いたことがあるような声が聞こえた。
「大地君、こっちよー!」
その見覚えがある声の方向を見るとそこには20代くらいの喪服を来た宮野家の……確か。
「余音さん……?」
俺が無数の記憶の中から探り当てた答えを言うと「そうよ、久し振り!」と笑ってくれた。
どうやら当たったようだけど……。
「…………」
「どうしたの?」
「じ、実は……切符を落としてしまって……」
「そうなの……でも、大丈夫よ!」
「えっ?」
余音さんはそう言ってそばにいた駅員に目をあわせると、駅員はどうぞと言わんばかりに道を開けた。
「さぁ、これで大丈夫でしょ?」
「は、はい……ありがとうございます」
さすが、ここを牛耳ってるだけはあるなと実感しながら俺はその改札口を出た。
プロローグですがありがとうございます。
美園町は一応、沖縄みたいな田舎です。
その中に一つだけ豪邸が山のとこポツンとという感じです。