破完
「アイコサマ。
最期になるから教えます。
アイコサマのシニカタは『破』でした。
棺に入ったまま、焼かれる予定だったんです。
焼却炉の中は経がかかっていて、棺にくくりつけられたアイコサマは身動きひとつできない。
パチパチと木の焼ける音、火の音、耐えきれなくなった木は音をあげて破裂します。その時に、腕がちぎられ、足が飛び散り、頭が焼却炉の天井まで飛び、中身が天井にはりつく。
打ち上げ花火のように頭蓋は割れて、真っ赤な血が花火のように広がる。
綺麗ですよ、とても。
それをアイコサマは死にゆくまで体験できたんです」
聞いただけで、全身の毛穴が開き、下腹がうずいた。
「それをお見せできなくて、加穂留とっても残念。でも。やはり加穂留、アイコサマのこと嫌いになれないので一瞬で逝かせてさしあげますね。ほんと一瞬です。だって、加穂留とアイコサマって少し似てるから」
銃を構え、私に狙いを定める。赤いマークが私の左胸で止まる。
やめて。
やめて。
やめて。
恐怖に声が出ない。
恐怖を充分に味わえるようにそのまましばらくそのままで、恐さになんともいえない獣のような声が自分の口から垂れ流される。
目の前の鏡には左胸からどくどくと血が流れている自分の姿が目に入る。
チャッと音がして、そっちを向くと、加穂留が笑顔で私の顔の前に銃口を向けている。
にっと不気味に口角が上がった加穂留の口元を見たのが、
私の最後の記憶となった。