◇集結
議会は頑なな沈黙が支配し委員たちを渋い表情を代えない、鳴神大佐と丹羽最高指令官そしてお付きの森特尉が議会最高責任者であるマーフィー・マストマンを見据える。
「つまり、君たちは」
「言いたいことは解る、じゃがお主らに任せておったら手遅れになる」
「独自の判断で動かせる戦力がない私達は指をくわえて見ていることしかできません!だからこそ独立部隊の設立を」
「しかしなぁ」議会がかすかに騒ぎはじめる……もっとも無能な高官が猿知恵の生き残りの話し合いだが。
「しかし貴様等が寝返る可能性が」
「んの!無能野郎!あんたの馬鹿な考えなんて当てにしないわ!」
「か、艦長!」
「よい、森特尉……マストマンと言うことだ我々は独自に動かせてもらう」
マストマンの見下した醜い感情に琴乃がキレた、自分達の命だけを優先的に考えているマストマンに鋭い罵声を浴びせる。マストマンは唖然とし官僚たちも憤怒や驚きなど様々な感情をあらわにさせ議会は騒然とする。
そこにピシャリと丹羽がしめくくりマストマンは正気に戻った。
「貴様ぁ!小娘の分際で!」
「ろくでなしのビビりタヌキは引っ込んでなさい!森君、いくわよ!」
「は!」
「我々を敵にまわすのか!たかがグズ風情の部隊が!」
「好きなように受け取ってください!皆は私の有能な部下です!あなた方よりは」
「失礼」
「げふ!」
あまりの怒りに顔を真っ赤にしたマストマンが琴乃に掴みかかるが森がその手を弾き容赦なくその醜いエゴの塊のような顔面に拳を打ち付けた。
「お前さん達の正義はどこにあるのかのう……マストマン」
気絶したマストマンを秘書に押し付け三人は議会をあとにした。
その頃の鳥井基地では、ナツルがシミュレーションの最中、続々と戦力が集結していた。
マルコキニアスの周りに無数の空母艦がならびMGの整備が技術者によってチューニングが施されていく。
「ジュネーブの連中に……あれはフォックス隊もいるのか意外だなエリート風吹かしてるわりには……んでまさかラオリア・ガートン副議会長が此方についてくれるとわな」
この一時間の間に全体の十分の一の戦力が此方に加わった……戦力差は痛いがこれだけの数がそろう艦長達が喜ぶと彩華は微かに表情を緩める。
「うわぁぁ!」
ナツルがシミュレーションボックスから飛び降りてきた、ふらふらと壁に寄りかかり真っ青な顔のままゴミ箱に直行する。
「しっかりしろ」
「すいません、あと少し時間を」
実際は上出来の成績だ、たった三時間で新型アガレスの速度についてきている……本当に才能の塊のような奴だ。
「反転時の速度と武器の切り換えのタイミングがまだ掴みきれないって言ったところか」
「すいません」
「謝らなくていい、すこし休んでいろ」
ナツルを無理矢理ベンチに寝かせ、帰ってきた艦長達を出迎える。
どうやら上手くいかなかったようだ森の顔が死人みたいだ艦長だけはやけにスッキリした表情だが。
「すいません、連合を敵に回しちゃいました」
「……一応想定していたが、私達はさっそくピンチだな」
「なるようになります!艦長は悪くありません」
「そんな顔のお前に言われんでもわかっているさ、森持ち場に戻れ」
「は!」
黙ったままの丹羽さんが突然口を開く。
「指揮は全面的にお前さんと琴乃にまかせる」
「は!」
「ワシはすこし出かけてくる、アレが完成した」
「良くまわしてくれましたね」
「狩崎の小僧がの」
それだけ言うと何も言わずに出ていく。
艦長も顔を引き締め直しマルコキニアスに向かいだし私は組み立て工場に向かう。