◇第三世代
日本に帰還し休むまもなく報告書をまとめエリゴールとオリアスの整備を済ませ物資のチェックを済ませ補充のMGを受け取り、彩華さんと共に戦闘シュミレーションを設定し南中尉と葵さんと訓練兵の訓練を見てMGの操縦の基礎を学ばせる。
やっとの事で一段落しぐったり自販機に置いてあるベンチに座り込み溜め息をついた。
「あ!五十嵐さんの手伝いだ」
「いいや、それはいいナツル、少し付き合え狩崎重工にいくぞ」
「え、でも」
「五十嵐もいるから、働きすぎだ、先に駐車場まで行ってろ鍵は刺してある」
頭がやることばかり回転していたのを軽く小突かれて現実に帰る。
疲れてるな……肩がいたいと軽く叩き駐車場に向かう。
「コブラだ……また買い替えたんだ彩華さん」
「いいだろ?高かったんだよ……どうした乗らないのか?」
「あ!いえ作業服なんで汚したらいけないかなって」
「んなのはどーでもいい、早くのれ私も早く済ませて休みたい」
新車のシートを油だらけの作業服で座ることに罪悪感を感じるけど彩華さんは無理やり運転席に僕を座らせた。
「じゃ運転たのむ……ヤニ切れだ」
しばらく走ってすぐに狩崎重工につく彩華さんの顔パスですんなりとおり格納庫に入る、アッチコッテで作業の音が響き活気にみちあふれている。
「お!五十嵐!すまんな」
「いや、大佐さん」
直ぐに彩華さんが五十嵐さんに気付き呼び掛ける、作業に集中しているので手短に答え軍手を外し敬礼した。
すかさず僕も敬礼し、まわりにいた技術屋の人達も愛想よく挨拶をしてくれた。
「よし、ナツル仕事を始めるぞ五十嵐、説明たのむ」
「おう、小尉まずはこいつを見てくれ」
手持ちの端末からデータを引き出し、騎体の情報が写し出された。
「エリゴール?……違うな」
「A・エリゴールって名目で開発を進めている、コイツはシグマの騎体のポテンシャルやエネルギー効率の良さに注目を集めて作った第3世代の騎体、その記念すべき試作壱号騎だ」
「すごい、ジェネレータの小型化に成功して重量がニトン減ってる、その分機動力が向上してるしフレームもそれに合わせて」「そうだ、多目的戦術反応装甲……苦労したよ、愛乃都の協力を得るのは」
「愛乃都?誰です」
「俺が知る限り、世界一の技術屋だ」
「へぇ……じゃ変異粒子核を開発のも」
「ああ、愛乃都だな」
僕が通っていた軍学校にも教科書に載っていた、MGの装甲理論を変える発明だと、もっとも現実に作られることは難しいってなら。
「あいつの脳にはきっと、シワ処か谷があるな」
「彩華さんも認めるようなすごい人なんだ」
一度弟子入りしてみたい。
「で本題だが、五十嵐と私とお前でアドバンスを仕上げるぞ」
「僕もですか!」
「前から興味はあったろう?しばらく任務もない、しっかり学んどけ」
「はい!」
「さぁ、お二方さっさと、始めましょう上の連中が五月蝿い」
上層部の人間が急かすのもわかる、たぶん一騎当千の騎体がシグマに有るって情報を入手したに違いない、彩華さんの話だとソレイユの情報までは掴めてないらしい、まぁ掴んでたら真っ先にアガレスに調査の手を伸ばしているだろう、彩華さんに感謝だ。
「アドバンスかぁ……いい騎体になれよ」
機密であろう新騎体に僕は触れている幸せだ。
さすがにコクピット周りは技術屋が仕切っているけどみんな好い人で、MGについて話が合う。
「よぉ、ちと左腕動かすぞ退いてろ」
「ぐぇ、すいません」
僕を引っ張り作業服で首がしまる、苦しいけど気づいていなかったのを助けてくれたのだ。
「あんた、いい仕事するなあんなに関節部がぎこちない動きだったのに」
「ありがとうございます、僕は榎本夏琉です、階級は小尉です」
「お、あんた軍人か、小生は愛乃都だ」
肩まである黒髪に白いタオルを被り紫のツナギをきた人間が愛乃都さんだとは思えなかった。
よくみると左腕が義手だ。
「愛!来てたのか!どうだコクピットにこいよ」
「豪太!やっぱお前か!相変わらずむさ苦しいな!」
五十嵐さんがコクピットから顔をだし直ぐに此方に近づく。
「お前オッサンになったな」
「お前が若すぎるだけだ、愛、お前の子供の調子をみてけ」
「見ればわかるよ、豪太が整備してると分かれば万全だろ?」
寡黙で仕事人間な五十嵐さんがふざけているのはなかなか貴重な光景だ。
「さて、小生はいくよ」
「もう行くのか?」
「あぁ、空を飛びたがってるのがいてな、ソイツがなかな頑固者でたまったもんじゃないが……ゆっくりやるさ」
「まだあのじゃじゃ馬をイジッテンのか?好きだねぇ」
最後にニッコリ笑うと格納庫から出ていってしまった。
「ナツル、こっちこいAが通る」
彩華さんに引っ張られ、技術屋の集まりに交わる。
左脚の調子は良くないが、それいがいは順調だ。
こうしてみるとグレーの塗装もそうだけどエリゴールとは似ていないスペック的にもアガレスより優れているんだ、マルファスとアガレスの間に出来た子供のようなデザインに親近感がわいた。