ミュンヒハウゼン男爵の語る話は信ずるに値するか?
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※この作品はかつて実在した男爵とは、一切関係がありません。
私はウソつきだ。常日頃からウソをついている。
見破れない完全なウソを考えるのは難しい。だが、ウソの中に事実を少し混ぜると、見破りにくいものができる。
先日もある友人にウソを教えた。「県境にある山は人が寄り付かないから、死体を埋める人がたくさんいる」と。
また別の日には「県境は行方不明が多いらしくて、神隠しにあったと言われている。警察も管轄が異なっているので、仕事がやりづらい」とも――。
そして先程、その友人から電話があった。焦った口調で県境の山について確認してくる彼は滑稽だった。
大方、仲が悪かった彼の妻をついに殺めたのだろう。死体をなんとかしようとして、私に助けを求めたことは容易に分かる。
きっと、電話した彼のそばには、まだ暖かいままの妻の身体が横たわっており、そのことが彼を苦しめていたであろう。
私は彼のためにいくつか助言をした。噂の死体が埋められた穴は誰かに見つからないように、かなり深く大きいらしい。人が二〜三人は簡単に入れるくらい。だから、誰にも発見されていない……などと。
今頃彼は、私の話を信じ、山奥で必死な形相で、穴を掘っているに違いない。
だから、私もその現場へと向かおう。今から向かえば、穴を掘り終わる頃に彼と会えるはず。楽しみだ。
――数日後。
知り合いから、ある夫婦が行方不明になった話を聞いた。この辺りでは、数十年前からそんな事が起きているので、神隠しにあったのではないかと。
一連の行方不明者が神隠しではないことを私は知っている。その者たちがどこにいるかも――。
しかし、私の話を簡単に信じる人はいない。なぜならば、私はウソつきなのだから。
もしも、『県境の山に死体をたくさん埋めた人はいるか?』と聞かれたらば、大多数の人は『そんなヤツはいない』と答えるであろう。
私も自信を持って『いない』と答えるだろう。
なぜならば、私はウソつきであるのだから――。
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