表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mystic Lady ~完結編~  作者: DIVER_RYU
第二章『旧帝国の落しモノ』
6/40

『旧帝国の落しモノ』 急

遂にエリアγに挑む琉とロッサ。だが遺跡に近づいた時、ロッサに異変が起きてしまい……!?

「ここは……?」


 目覚めた時、ロッサの目に映ったのは辺り一面の焼け野原であった。そして自分の足元には、あのクレーターが広がっていたのである。


「何処、何処なの? ……そうだ、琉は!? ねぇ琉、何処にいるの!?」


 ますますもって恐ろしくなり、声を限りに叫ぶロッサ。と、その時であった。耳を破るかのような轟音が響き、目の前の火の手がますます広がり始めたのである。更に気がつくと自分の周りが、ロッサ自身を連蔵させる赤いゲル状の物質に覆われていたのだ。


「……これは? とにかく、ここを出なくちゃ……」


 ロッサがその場を出ようとした、まさにその時だった。


「た…………て……」


「あ……い……うぅ……」


「いやぁッ!? まただ、またあの声だ……誰? 誰なの? 誰なのよ!?」


 耳や頭を押さえつつ、ロッサは周りを見た。彼女の赤い瞳が見た光景、それはさっきまで赤かった足元のゲルが、次々に黒く変わっては煙を発してくというモノであった。ロッサの記憶の中に、この現象はハッキリと覚えがあった。


「これは……ヴァリアブール? ヴァリアブールが何故こんな目に!? じゃあ、今まで聞こえてたのは……?」



 琉はロッサをカレッタ号に戻すと、再び遺跡に降り立った。いつもならスルーするクレーターだが、今回は違う。アードラーに乗り、クレーターが一望できる場所まで昇ると琉はオセルスレーダーの感度を上げた。


「今のところは反応がないが……ギリギリまで上げてやるか!」


 キリキリとダイヤル状のモノをひねり、レーダーの感度を上げる琉。やがてクレーター一面に微弱な、かつ特殊なハルム反応が見られるようになった。


(何だこれは……パルトネールでも拾わないような反応だ、それもかなり弱い……いうなれば死んで消えかけのハルムで見られるような反応だぞ? それにこのパターン、どこかで見覚えがあるのだが……。よし、採取するか)


 琉は反応の見られる位置から砂利を採取し、瓶に詰めた。だが、その時である。パルトネールが突如、けたたましい音を鳴らし始めたのだ。


(クレーターで反応だと!? 一体何処だ!!)


 パルトネールをあちこちに向ける琉。が、次の瞬間。琉はアードラーにしがみつくとその場から素早く移動した。すると彼のいた地点に、矢のような勢いで何かが突っ込んで来たのである!


「デボノイド!? それもコイツは……!!」


 琉に襲い掛かったデボノイド。本来デボノイドはいくつかの種類が混群を成すモノなのだが、今回のは今まで見たモノとは大きく異なる形をしていた。


「デボノイド・フェンリル!? 厄介なヤツが現れたモンだぜ……」


 他のデボノイドとは一線を画す、大柄な体格。赤銅色の体色に、白く大きな歯が不気味に光る。デボノイド・フェンリル、このハルムはただでさえ強い力を持つにも関わらず他のデボノイドを統率して襲い掛かることで知られ、数あるハルムの中でも特に恐れられているのだ。、


「グオォォォーーン!!」


 咆哮を上げるデボノイド・フェンリル。するとクレーターの周りに、大量のデボノイドが現れ包囲したのであった!


「また大量発生か! まぁ良い……ここんとこメンシェ絡みの事件で鬱憤が溜まってたんだよね。かかってこい! パルトネール・サーベル!!」


 真っ先に襲い掛かって来たのは体表の青いデボノイド、マッカレル。動きが速く、突進攻撃を得意とするハルムである。琉はアードラーに乗り、突撃するマッカレルの攻撃をかわして斬り付けた。


「二手に分かれるぞ、アードラー・フィンスラッシュ!」


 アードラーのヒレの部分から、巨大な刃が出現する。琉はアードラーからわざと離れ、デボノイドの群れに向かわせた。マッカレルの猛攻を防いだ琉に、今度は赤い色のデボノイド、セバストスが立ちはだかる。こちらは動きが遅い代わりに強靭なアゴを持ち、その一噛みは強烈な破壊力を誇るのだ。


「パルトヴァニッシュ!」


 パルトネールの刃が光りを放つ。口を開いたセバストスの下あごにその刃を刺し、真上に投げ上げる。一体、また一体と上に投げられ、宙を舞いながら爆発するセバストス。剣を構えるその背後から、またも何かが飛来する。振り返り様にそれを叩き落とす琉。飛んできたのは針だった。


「パルトネール・チェイン!」


 目には目を、歯には歯を。琉はパルトネールを分銅の付いた鎖に変え、その方向に飛ばした。その先にいたのはヒゲの生えたデボノイド、プロトスス。毒のあるナイフのようなヒレを持ち、これを切り離して投げつけたり直接斬り付けたりと中々芸達者なハルムである。


「パルトショック!」


 突き刺さった分銅。鎖を介し、琉はプロトススに強烈な電流を流し込んだ。更に電熱を帯びた分銅を振り回し、その鉤で切り裂いてはハルムの姿を消してゆく。


「アードラー!!」


 マッカレルを一掃したアードラーを呼び寄せ、その上に乗る琉。なるべく早くその場から離れないと、無駄にエアを消費することとなる。だが、その琉の背後から迫って来るモノがいた。

 突如琉の左肩を襲った衝撃。治ったばかりということを看破されたのか、そこには何とフェンリルの生首が噛みついているではないか!


「アギジャベ(くそ)! まだコイツがいたか!!」


 デボノイド・フェンリル。数あるデボノイドを指揮する高い知能だけが、この亜種の特徴ではない。その首を飛ばしてマッカレル以上のスピードで獲物を追い詰め、セバストス以上の強靭なアゴを持ち、更にはプロトススより強烈な毒をその牙に含んでいるのだ! 噛みついたまま、琉をアードラーから引きずり降ろそうとするフェンリル。


「うわああああああ! アードラァァーーーーッ!!」


 ついにバランスを崩し沈み行く琉。万事休す、そう思われた時、アードラーは琉目がけて近付いた。琉はパルトネールを腰に差し、右腕のスイッチを入れた。エネルギーゲージが指先に達し、琉の腕が高熱を発する。


「ハンディクラッシュ!!」


 そう言って琉は噛みついたデボノイド・フェンリルの顔目がけてその指を深々と突き刺した。高熱で肉が焼け、たまらず口を離すフェンリル。そこにアードラーが到着し、琉は逆さまになったままアードラーに足を下ろして体勢を整えた。


(コイツを倒すには本体を潰すしかない。何処だ!)


 オセルスレーダーの感度を調整し、頭の行方を探す琉。果たしてその方向に、フェンリルの本体はあった。その位置を確認し、琉は構えをとる。


「オセルスフラッシャー!」


 額のオセルスレーダーが光りを放ち、琉の視界にはロックオンマーカーが映る。その先をデボノイド・フェンリルの体に向け、彼は叫んだ。


「発射ァァーーーーッ!!」


 三つのオセルスレーダーから放たれる赤いエネルギー体。螺旋を描いて標的に向かい、遂にその体を貫いた。貫かれた個所が赤く発光し、数多くのデボノイドを率いていたフェンリルは爆発四散して跡形もなくなってゆく。同時に統制が乱れたのかデボノイド達は混乱、その隙を突いて琉はアードラーに乗り、カレッタ号に急いだのであった。



 カレッタ号内部。ロッサは自分に聞こえる声から逃げるのをやめ、精神を集中させていた。


「たす……けて……」


「あつい……うぅ……」


「これは、苦しんでいる? 熱がってるの? 助けを求めている!? じゃあ、今見えてたのは一体……」


 今まで聞こえていた声。それは、ロッサと同じヴァリアブール達の苦悶の声であった。しかし何故こうなったのかは彼女には分からない。だが次の瞬間、耳を突き破るほどの轟音と共に、白い光が眼の前を突き刺したのである!


「きゃあっ! 何、今のは一体何なの!?」


 思わず後ろに飛ばされるロッサ。立ち直り、すぐに光の放たれた位置を見る。だがそのにあったのは、ロッサにとってあまりに辛く、そして残酷すぎるモノだった。


「う……うそ……ヴァ、ヴァリアブールが……!!」


 さっきまで足元を覆っていた赤いゲル状の物体。その光の当たった個所は黒く、煙と炎を発して消えてゆく。消えゆくゲルの中から、助けを求めて腕が伸びて来た。


「大丈夫、今助けるから……ダメか」


 伸ばした腕は届かず、ロッサの手に触れる前に崩れ落ちた。そしてそんなことをしている間にも、ヴァリアブール達は謎の光に駆逐されてゆく。


「……いや……やめて……どうして、どうしてそんなことをするのッ!? そうだ、ここから出ないと……」


 ロッサの悲痛に叫ぶ声が辺りに響く。そしてフラフラと体を起こし、彼女はクレーターを後にしようとした。


「おっと、まだいたのか」


「あ、琉……? いやリベール? ……違う、誰!?」


 クレーターの外にいたのは、大きな銃を持ったヒトであった。銃の先の形はアンテナ状となっており、ロッサはそれに見覚えがあった。そして次の瞬間、その人はロッサに銃を向け、仲間を呼んだのである!


「それはまさか……電撃砲!? いやッ、撃たないでッ!!」


「一匹たりとも生かしてなるものか、やれ!」


 弁解むなしく、ロッサの目の前が真っ白になり――



「……ロッサ、ロッサ! しっかりしろ、おい!!」


「んん……ハッ!?」


 琉の声に気付き、文字通り跳び起きるロッサ。彼女の目線の先には、頭部のみ装備を解除した琉の姿があった。


「驚いたぜ。帰ってきたらいきなり君の『撃たないで』だ……おふっ!?」


「琉……琉ッ!! 怖かったよー!!」


 ロッサは琉に抱きついた。ラングアーマーを着てる上にロッサに飛び着かれ、ガタリと押し倒される琉。見ると、ロッサの目からは黒い涙が流れている。それを見た琉は少し違和感を覚えた後、こう言ったのであった。


「……よしよし、もう大丈夫だから、な? とにかく今は浮上しよう。何があったのかは落ち着いてからで良い、今日はゆっくり休むんだ。良いね?」


第二章完結です。ロッサの悪夢とは一体何を指すのか、エリアγに眠る秘密とは。物語は真相に向かいつつあります。では、次回予告を。なお、著者は大学のテストに入る故、しばらく連載を休ませていただきます。


~次回予告~

ロッサをうなす悪夢。自分が、他のヴァリアブールが惨殺される光景。夢の示す先に待つ事実を探り、琉とロッサは更なる深みに足を踏み入れようとしていた。しかし辛い記憶は想像以上にロッサの心に傷を与えており、遂に彼女はある決断を下してしまう……。


次回『作業後ティータイム』

心の傷を癒す特効薬、それは時間と旨いモノ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ