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虹のカナタ  作者: ユウキ
4/5

2-1

Episode2の主人公は

虹のカナタEpisode1で少し登場した

隅五郎とその友人です。


それではどうぞ!


今日も晴れ渡るこの団地。

少し離れた場所にあるのは

MONEY LIFE

金貸しである。

オーナーは隅五郎である。

彼は期限までに返済をしなければ

とんでもないことになるという

噂が流れている。

そんな噂の流れる隅のところには

今日も客はやってくるのであった。


「では、1ヶ月後に20万

 きっちりお返しいただきますよ。」

「はい」


そういって客の男は出て行った。

そのとき電話がかかってきた。


「どうも、MONEY LIFEです・・・

 なんだ、あなたですか。」

「五郎ちゃん、どうしよう」

「今度はなんなんですか」

「今日道歩いてたらさ、石けとばしちゃって

 誰かに当たったんだよ。

 もし、あれが怖い人だったら仕返しにくるかも・・・・

 どうしよ、五郎ちゃん!!」

「はぁ、またそんなことですか、

 そんなことでいちいちきませんよ。

 もういいですか、きりますよ。」

「ちょっとまっ」


ガチャン隅は電話を切った。

電話の相手は昔からの知り合いの

神野勉-ジンノツトム-であった。

彼は極度の心配性である。

ちょっとしたことでやたらと不安になるのだ。

普通の人ではなんでもないことであったとしても

彼にとっては重大な出来事なのだ。

ことあるごとに電話がかかってきたり

いきなり飛び込んできたりするのである。

隅は昔から勉を見ているので

扱いもだいぶ慣れていた。


しばらくして店のドアが勢いよく開いた。


「ちょっと五郎ちゃん!なんで電話切ったのさ

 もう、なんかあったのかと思ったよ」

「別に何にもありませんよ、切ると言ったでしょう」

「そうだけど・・・」


そのあとも勉は不安をぶちまけるだけ

ぶちまけて帰っていった。


「ちぇ、五郎ちゃん最近なんか冷たいや。」


そんな愚痴をこぼしながら

団地へともどる勉。

勉も団地っ子である。

そのまま歩き続けていると

何かにぶつかって倒れた。


「おう、すまんのかばんおおきいて見えへんかったわ。大丈夫か」

「あ、はい」

「うちな、この団地に越してきたんや。

 仙波千恵っちゅーねん、よろしくな!」


声の大きな同い年ぐらいの千恵に

勉はなにも言えずにただ聞いてるだけであった。

そのまま千恵はどこかへと向かっていった。

勉も帰っていった。


その次の日



「だーから、そんなはよう返されへんねんって」

「そういわれましてもねぇ、そんな長い期間

 返済を待つわけにはいかないんですよ」

「なんでや、ええやんけ

 返さん言うてるわけやないねんから」

「はぁ」


そのとき電話が鳴る。


「五郎ちゃん、五郎ちゃん!」

「なんですか、今忙しいんですよ

 声のでかい方がいらしてて」

それを聞いてその客は

「だれが、声がでかいって。

 まだ話終わっとらんやろが

 はよ、こっちもどってこんかいな」

隅はあきれがおをしながら

「はぁ、そういうわけなんですよ。それでは」

「あっ、ちょっとまっ」


ガチャン

隅は電話を切った。


「とりあえず今日のところは

 お引取りください」

「しゃーないな」


そういって千恵はMONEY LIFEを出た。

すると外には勉がいた。


「どうして、ここに」

「あぁ、実はな」


千恵は団地に越してきたのには理由があった。

千恵は母とおじとともに住んでいた。

ある日、そのおじが多額の借金を残して

いなくなってしまったのである。

母はなんとか借金を返そうとした。

毎日来る取立てにも耐えていた。

しかし母は交通事故で死んでしまったのだ。

千恵は借金取りから逃れるために団地にやってきた。

千恵は母との思い出の詰まったあの家で

再び暮らしたかった。

だから借金を返済するのに金が必要なのであったが

そんな金は持ち合わせているはずもなく。

借りてもいつ返せるかわからない、

そんな人には金は貸せないといわれ食い下がっていたのだ。


「そうだったんだ」


2人は虹のカナタに来ていた。


「せやねん。はぁうちはどないすればええねん。」

「僕が頼んでみようか」

「ほんまに?」

「僕五郎ちゃんの友達だし」


そんな会話を真由はグラスを磨きながら聞いていた。


カランカラン


「いらっしゃい」

「ビール1つ」

「あいよ」


店に入ってきた女性は勉たちの

3つ左の席にすわった。

勉はその女性に見覚えがあった。

女性は勉のほうをみた。


「あれ、つとむちゃんじゃない」

「やぁ、悠里-ユウリ-」


彼女は渡辺悠里。

勉の元カノである。


「その人は?新しい彼女?」

「ちがうよ」

「うち、そんなんちゃうで。昨日会うたばっかやしな」

「そう」

「んな、まぁよろしく頼むわ」


そういって千恵は店を後にした。

勉は悠里と一言、二言交わしただけで

店を出た。


翌日、勉はMONEY LIFEへとやってきた。

中に入ると隅はソファにどかっと座っていた。

千恵のことを話した勉。

隅はなにも答えない。

しばらくして口を開いた隅


「いくらあなたの頼みでもそれは無理ですよ。」


と言われると思っていた勉。


「いいでしょう」

「だよね・・・、えっ?」

驚いた表情をした。

「ただし、今後私に関与しないでいただきたい。」

「えっ・・・、どういうこと」

「もうあなたにはうんざりなんですよ。」

「そんな・・・」

「毎回毎回どうでもいいことで

 あーだ、こーだと聞かされる身にもなってくださいよ」


勉はMONEY LIFEを飛び出した。

そのままあてもなく走り続けた。

疲れて歩いて団地のほうに歩いていた。

すると前から千恵がやってきた。


「どうやった?」


しばらく間を空けた後

勉は起きたことを千恵に話した。


「そないなこと・・・」

「五郎ちゃん・・・」

「なんであいつなん?

 自分とあいつってなんか全然かかわりなさそうやのに」

「それはさ」


小学校のころ

心配性のせいでうざがられて

いじめられていた勉。

そんな勉に手を差し伸べたのは隅であった。

そのころの彼に今のような面影はなかった。

彼は勉の心配をすべて聞いてしんしに対応してくれた。

そんな隅に徐々に心を開いていった。

しだいに打ち解けた2人はとても仲がよくなった。

しかし高校になったころ突如彼は

今のような性格になってしまったのである。

金のことになると異常に執着する。

それが原因で同級生を思い切り殴り飛ばし

高校は退学となった。

それから数年後今のMONEY LIFEをつくったのだ。


「そうやねんや」

「うん、なんで変わっちゃったんだろうな・・・」

「ええよ」

「えっ」

「もう頼まんでええ、友達なんやろ、大事にせな」

「でも」

「ええって、うち頑張って金貯めるわ。

 仕事もいま見つけてきたしな、結構時給ええねんで」


そう明るく話す千恵に対して

勉は何も言わなかった。

いや、いえなかった。


勉と別れた千恵は

MONEY LIFEへと向かった。


「隅、おるか」

「なんですか」

「お前なんであんなこと言うたんや」

「別に、思ったことを言っただけです。」

「あいつの気持ち考えたれや、

 あいつにとってお前は大切な存在なんや。

 うちに金貸さんでえぇ、せやけであいつには謝れ」

「知りませんよ、ご用件はそれだけですか。

 それではお引き取りください。

 だいたいあなたになにがわかるんですか」

「うちにだってわかるわ。

 金は大事や・・・大事なんや・・・

 せやけど友達も大事やろ・・・」

「・・・」

「・・・金の亡者や、あんたは金の亡者なんや」


この言葉をきいた隅は


「早く帰れ!!」


ものすごく声で千恵をどなりつけて

店の外へと追い出した。


「俺だって・・・」


そのころ

勉は虹のカナタのカウンター席に腰掛けていた。

そこに現れたのは悠里だった。


「何かあった?」


勉は悠里にも全てを話した。


「そうなの。ねぇ、なんで彼がああなったか知ってる?」

「えっ」

「知らないのね、いいわ、教えてあげる」


隅の父親はで酒をのみ

あちこちでギャンブルに手を出して

借金まみれになっていった。

もちろん返せるわけがない。

取り立てもくる頻度が多くなっていた。

母はそんな父に愛想をつかして妹だけを連れて

出て行ってしまったのだ。

運悪く隅自身は交通事故にあい

入院していたために連れて行ってもらえなかった。

後になって探しても母と妹はどこにいるのかわからなかった。

高校生になったある日、五郎はドアを開けた。

すると、男たちが押し入ってきた。

五郎は突き飛ばされ頭を打ち気絶した。

目を覚ますと父親はいなかった。

金目のものもなにもかもなくなっていた。

父親の行方はわからなかった。

あんな父親でも隅にとっては大事な人だった。

それからしばらくしたころに、父親の死体がみつかった。

このとき五郎は決意する。

金を手に入れてやる。誰よりも多く。

そうして隅五郎は

MONEY LIFEを作ったのであった。


「知らなかったよ、そんなこと」

「彼には、お金に対して異常なまでの執着心があるのよ。」


それから勉は一言も話さなかった。

悠里はただ黙って彼の横に座っていた。


翌日

勉は虹のカナタで千恵に

昨日悠里から聞いた話をした。


「そうやったんや」

「僕はいったいどうしたらいいんだ・・・」


「はい、ビール」


目の前に置かれたビールを見て

注文してないと真由に言うと

真由はいいよ、サービスだからといった。

ありがとうと勉は言った。


「五郎ちゃん、変な噂流れてるけどさ、

 別に怖いことするわけじゃないんだよ。

 ただ店につれて行って、お金を貸した人と話をするんだよ。

 その人の相談にのったりして。

 本当はやさしいんだよ、五郎ちゃんは」


「そうだったんだ」

カウンターの向こうで真由がボソッと言った。


しばらく話した後千恵は店を出た。


そのころ

MONEY LIFEでは、


「期限は今日なんですが」

「すいません・・・」

「返せないということですか」


金を借りた男性が返せないということで

MONEY LIFEへと連れてこられていた。

男性に詰め寄る隅に男性はおびえていた。

男性は噂どおりなのだと思った。


「で、いつごろなら返せそうなんですか」

「えっ」


男性は拍子抜けした声で言った。


「待っていただけるんですか」

「しかたないでしょう、返せないのなら」

「ありがとうございます、できる限り早くお返しします」

「お願いしますよ、それからこのことは誰にも

 言わないでいただきたい。そうでないと

 踏み倒すやからが出ないとも限りませんからね。」

「わかりました、本当にありがとうございます」


虹のカナタでは

カランカラン


「いらっしゃい」

「真由、いつものお願いね」

「了解」


真由に話しかけたのは

団地に住む原田桜-ハラダサクラ-であった。


「さっきねそこで声の大きい人が

 怖そうな人たちに絡まれてたの。」


「えっ」

まだ店にいた勉はそれを聴くやいなや

店を飛び出していった。


次話もよろしくお願いします!

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