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虹のカナタ  作者: ユウキ
3/5

1-3

猛の運命は!?


「危ない!!」


車のクラクションが大きく響く。

猛の名を呼ぶ男性の大きな声が聞こえた

佐里はゆっくりと目を開けた。

目の前にいたはずの人物がいない。

あたりを見回すと道路にいた少年は

歩道にたおれている。

引かれて飛ばされたのかと思ったが

少年は起き上がった。

人の叫ぶ声が聞こえた。

誰かが倒れている。

佐里はその方向へと歩き出した。

冷たい風が佐里の顔にふきつける。

佐里はしだいにふるえ出した。

遠くから救急車の音が聞こえる。

誰かが呼んだのであろう。

もう少しで倒れている人物が見えるところまで来た。

その人物を見た佐里。

声にならない声で叫んだ。

そう、倒れていたのは公平であった。


「公平!!!」


あの清楚だった佐里の姿はない

まるで別人であるかのように取り乱している。


「公平!ねぇ、公平!目をさまして!」


騒ぎを聞きつけた風太と猛の母・洋子がやってきた。

風太が佐里のところにやってきた。


「公平!」


洋子は猛と猛の父を見つけ事情を聞いた。

少し目を放した隙に道路の反対側に公平を見つけた

猛が公平めがけて走り出したのだ。

そしたら、車が来てひかれそうなところに

公平が飛び込んできて猛は助かったのだ。

救急車が来た。


「公平!起きてよ公平!」

「落ち着いてください」


取り乱す佐里を押さえる風太

救急車に担ぎこまれた公平。

佐里と風太は同乗した。


「公平・・・」


すぐに近くの病院に到着して手術が始まった。

人伝いで情報を聞いた真由も駆けつける。


「理沙にも伝えようと思ったんだけどいなくてさ」

「そうなんだ」

「あの人は?」

「佐里さんだよ」

「あの人が」

「すごい取り乱してて」

「そりゃそうだわ」


佐里の横に腰を下ろした真由


「落ち着いた」

「うん」


真由は違和感を感じた。

佐里が今初めてあったばかりの他人には

思えなかったのだ。


「公平・・・」


そう思い出すと、声までどこかで

聞いたことがあるような気がする。

でも、そんなはずはない。

今自分が思っている人とは

髪型がまったく違うし、公平に聞いてた特徴からは

かけはなれている。

そんな疑問がありながらも

真由は佐里をなぐさめる。


しばらくして、手術が終わった。

依然として危険な状態ではあるが

とりあえず一命は取り留めた。


「よかった」


3人ともとりあえず胸をなでおろす。

しかし、まだ意識は戻らない。

遠くから公平を眺める佐里、

その横顔を見て真由の疑問が再び浮き上がった。


「佐里さん、ちょっと」

「はい」


真由は風太をその場に残し

佐里とともに別の場所に行った。

しばらくして2人は戻ってきた。


「何の話してたの」

「別に、じゃあ、あたし戻るわ」

「じゃあ、俺も」


佐里だけを残して2人は帰っていった。

翌日もそのまた翌日もまだ

公平は目を覚まさない。


「今日はもう帰ったら?」

「そうします」


風太は佐里と交代で病院にいた。

今日は仕事のない風太は

夕方から病院にやってきた。

猛一家も来ていたようだ。


その後何日かが過ぎた。


「公平・・・」


公平の手を握る佐里。

そのうちに佐里は眠りについてしまった。


そのとき・・・

公平が目がしだいに開いていく。

「さ・・・りさん・・・?」


その声に気づいた佐里は目を覚ました。

「公平さん」

そういってしっかりと公平の手を握りなおした。

「よかった、先生呼んできますね」

微笑む公平

連絡を受けた風太がやってきた。

真由は知らせを聞いて微笑んでいたそうだ。


そこからの回復は早かった。

しかし、足へのダメージも大きく

リハビリが必要であった。


「公平さんがよくなってよかった」

「心配かけてすいませんでした」

「いえいえ」


公平は佐里へのあのことをわすれていたわけではない。

しかし、自分が完全に回復するまではよそうと思った。

それからリハビリの日々が始まった。


風太はこの日猛と遊んでいた。

なにやら元夫婦で話し合いをするらしいので

風太が預かっているのだ。


「お兄ちゃんの友達元気になった?」

「おう」

「よかった」


子供なりに心配していた猛。

自分のせいであるということも薄々わかっているようだ。


洋子と猛の父は何の話し合いをしているのだろうか。

風太はそんなこと特段気にしていなかった。


「疲れたな~」

「うん」

「飲み物でも飲みにいくか」


そういって風太は猛を虹のカナタへと

連れて行った。

昼間だったので他に客はいないと見越し

連れて行ったのだ。案の定他の客はいなかった。


「この子か、猛って」


猛とは初対面の真由。

店に来ない人とは関わりがあまりない、

特に子供の知り合いなんてほとんどいない。

猛はオレンジジュースを一気に飲み干した。


「はは、いい飲みっぷりだな」

「ほんと」


そういって笑う真由と風太

なんで笑ってるのかあまり理解できでないけれど

つられて笑う猛。

風太と真由は公平がいなかったら

この笑顔は失われていたかもしれない。

心の中でそうおもった。


「そろそろ、迎えに来る時間かな」


そういって風太と猛は帰っていった。

どうやら洋子と猛の父は再び一緒に暮らすという

決断にいたったらしい。


翌日

猛の父は公平の病院へとやってきた。


「伊野さんですか」

「はい、そうですが、どちらさまでしょう」

「私は猛の父の戸田幹夫-トダミキオ-です。

 後藤さんに聞いてこちらに伺いました。」

「あ、猛の」

「先日は、本当にありがとうございました」

「いえいえ」

「あなたがいなかったらいまごろ猛は・・・」


しばらくの間2人は話していた。

この時はたまたま他にはだれもいなかった。

話を終えると幹夫は最後に深いお辞儀をして帰った。


長かったリハビリのおかげでだいぶ歩けるようになった。

この日は退院の日である。

この日佐里と風太が迎えに来た。

真由は店で待ってるよといっていたらしい。

そうして長かった病院生活が終わった。

そのまま3人は虹のカナタへと向かう。


「ここが虹のカナタですか」

「そうですよ」

「さぁ、入ろう」


店に入ると

真由と猛そして洋子に幹夫がクラッカーをならし

退院祝いと書かれた紙がはられているのが見えた。

退院祝いのパーティは夜まで続いた。


「じゃあ、そろそろ帰りますね。

 猛も寝ちゃったし。」

「今日はありがとうございました」

「いえいえ、そんな・・・

 こちらこそ本当にありがとうございました」


こうして

猛一家は帰っていった。

残っている4人はその後もしばらく

楽しんでいた。

さらに遅い時間になり

公平は佐里を送っていくことにした。

佐里はまだ完全に治ったわけではないのにと

遠慮したが公平は送りますと佐里の言葉をはねのけた。

なぜなら公平にはあれを実行しようと思っていたからだ。


「じゃあ行きましょうか」

「はい」

「またな、公平」

「おう」


公平と佐里は店を出て

川沿いの道を歩き出した。

しばらくして


「あの、佐里さん・・・」

「はい、なんでしょう」

「いや・・・理沙」

「えっ・・・」


公平はなぜか佐里のことを理沙とよんだ。

戸惑う佐里


「もう隠さなくていいんだ」

「何を言ってるんですか」

「病院に来てくれてたときに見た寝顔

 間違いなく理沙だった。」

「・・・」


病院のベッドの横で眠る佐里の顔が

理沙にしか思えないという公平。

そのころ虹のカナタでは・・・


「公平のやつ今頃告ってるのかもな」

「そうかもね」

「ほんと綺麗だったな、佐里さん

 あんな人見たことないよ。」

「ほんとにそうかい?」

「え、どういうこと」


道で立ち止まる2人

公平の言葉に黙る佐里

うつむいたままで公平に言葉を返そうとしない。

公平は佐里からの言葉を待つ。


虹のカナタでは


「えっ、嘘!?」

「そうだよ、気づかなかったのかい?」

「そうか、だから。ってそれ公平は・・・」

「どうだろね」


黙っていた佐里の口が開こうとしている。

公平はただそれを見つめる。


「そっか・・・、気づいてたんだ」


そういうと佐里いや、理沙は長髪のかみをとった。

そしていつもの理沙のショートの髪型になった。


「気づかれてなんて思ってなかった。」

「あのさ、理沙・・・」

「へへっ、だましててごめんね」

「あのさ、理沙・・・」

「ほんとごめんね、悪気はなかったんだけど」

「理沙!」


公平は話を聞こうとしない理沙を

大声で呼んだ。

理沙は話すのをやめた。


「理沙・・・

 俺が事故にあって倒れてたとき必死に名前呼んでくれたよな。

 そのときあれって思ったんだ。

 そしてそれは病院で確信にかわったんだよ。

 最初わかったときは驚いたよ。

 性格なんてまったく変わっちゃってたし。」

「・・・」


虹のカナタでは


「あの子ね、昔から公平が好きだったんだよ。

 でも、あまりに身近にいるから伝えることが

 出来なかったんだって。

 だから、まったく違う人物になって公平に近づいた。

 ホストもやめて欲しくて、ホスト嫌いってことにしてたらしいよ。

 だからお金も理沙が渡したの。

 あたし病院で気づいたんだよ、だからあんとき本人に確かめた」

「そうだったんだ」


昔から公平のことを思っていた理沙。

その気持ちを伝えることが出来なかった。


公平の言葉を黙って聞く理沙


「理沙、俺が好きなのは佐里さん」

「・・・やっぱそうだよね

 公平おとなしい人が好きなんだもんね。

 あたしとは真逆・・・。

 へへ、ごめんね。偽者で変に期待させちゃったね。」

「理沙・・・」

「ごめんね、あたし帰るわ。じゃあね」


理沙は走って帰ろうとした。

そのとき・・・

待てよといいながら理沙の手をとる公平。

驚く理沙。


「勝手に帰るなよ、まだ話は終わってない」

「でも・・・」

「確かに俺が好きになったのは佐里さんだ。

 でも、事故にあったときも入院してるときも

 全部してくれたのは理沙だ。

 俺の意識が戻らないときいてくれたのは理沙だ。」

「・・・」

「確かに理沙は嘘をついてた。

 でも、その行動全てが嘘なわけがない。

 そうだろ?」

「・・・」

「理沙・・・好きだ」

「えっ・・・」


公平はついに告白した。

相手は佐里ではない理沙だ。


「・・・私でいいの?」

「あぁ、もちろんさ」

「公平・・・」

「理沙」


理沙は公平に抱きついて

ありがとう

その一言を言って

こらえていた涙が溢れ出した。

公平はただただ理沙を抱きしめた。



1週間後

カランカラン

「いらっしゃい、おや、理沙じゃない」

「真由~」


理沙は今日もいつものテンションである。


「最近どうなの理沙」

「公平ったらバイトばっかりなんだよ。

 お金のことなら心配しなくていいのにって言ってるのに」

「それは公平としてはだめなんでしょ」

「そうみたいなんだよね~」


あれから

公平はよりいっそうバイトに励むようになっていた。

理沙の家は金持ちの家なので

そんなこと心配しなくていいといいくら理沙が言っても

公平はそれはだめだよ

俺いまは無理かもしれないけど

ちゃんと仕事にも就くからといって聞かないのだ。

それでも公平と理沙は幸せな道を歩いていくのだ。



5年後


カーンカーンカーン


この日は理沙のウエディングドレス姿が見られる日である。

2人が出てきた。

公平と理沙は幸せそうな顔をしていた。


「結婚おめでとう、理沙!」

「ありがとう!それじゃいくよ~」


ブーケをなげた理沙

ブーケは真由の下へと落ちてきた。


「さんきゅー、理沙」

「今度は真由さんの番だね」

「うるせーよ、猛!あ~あ、昔はもっとかわいかったのにな

 こんな中坊になりやがって。」

「ところで、風太兄さんは」

「さぁね」


その後

公平と理沙そして真由と猛一家は

虹のカナタで祝いをしていた。


カランカラン

「すいません、今日は貸切で・・・」

「おやおや、お幸せそうで」

「風太!」

「ただいま!」

「おかえり」


3年前風太は急に

ホストの仕事を辞めて旅にでると言い出した。

旅といっても行く先があるわけでもない。

何を思ったのかはわからないがそういった次の日

風太は旅立ったのだ。

それ以来の再会である。


「猛、大きくなったな」

「風太兄さん、久しぶり」

「公平と理沙おめでとう、これ」


そういって渡したのは大きな袋

なかをあけてみるといろいろなものが入っていた。

どれもがらくたにしか見えないが

風太からの贈り物らしい。


「金全部使っちゃったからまたあの店で働くことになったんだ」

「またかよ」

「いいじゃん、俺公平と違って人気だし」

「それをいうなよ・・・」


みんなが笑う

それぞれがそれぞれの形で幸せになる。

今日もここ虹のカナタは笑顔があふれるのだった。

更新遅れましたが

読んでいただいてありがとうございます。

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