見えない嘴
掲載日:2026/09/12
どこかに居た──かもしれない、採卵鶏のメンドリさんへ。
見えない嘴 空を歩く
広い広い その空は
たなびく雲が 段になり
思わず乗りたくなってしまう
見えない嘴 川の上
大きな大きな その水は
キラリゆらりと 流れてる
一口飲めば知らない味
見えない嘴 街のなか
不思議な不思議な 線の上
黒い嘴 とまってる
鳴き声聞いて思い出す
見えない嘴 見えてた頃
嘴達は 箱のなか
他とはちがう 「おおきなの」
嘴達を 育ててた
見えない嘴 産んでた頃
嘴達は 泣いていた
他とはちがう 「おおきなの」
嘴達に 黙ってた
時々たまに 「おおきなの」
ひとりきりだと 近づいて
見えてた頃の 嘴に
そうっと静かに手を伸ばす
最初にそうっと触れるのは
あたまの上の 白い羽
お次にそうっと撫でるのは
あたまの後ろの 柔い羽
ゆっくり滲んだ温もりを
見えない嘴 思い出す
夢に空に彷徨って
見えない嘴 探しもの
見えない嘴 ここにいる
どこにいるの? 「おおきなの?」
探しつかれて眠った夜
月の光が 迎えにきた
見えない嘴 花を揺らす
探しものは見つからない
見えない嘴 光と駆ける
探しものはどこにいる?
見えない嘴 知っている
ひとりはさみしい 「おおきなの」
いつかどこかで会えたなら
うれしい気持ちで飛んでいく
きっとそばへ! 「おおきなの!」




