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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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神様になった大男

作者: 鳥柄ささみ
掲載日:2026/03/12

 とーちゃんに川に落とされて流されたおらをずぶ濡れになりながらも救ってくれたその人は、神様のように輝いて見えた。



 ◇



「神様! 神様! お腹空いた!」

「そうかそうか」


 神様はそう言って笑うとおらにたんまりとご飯をくれた。


「神様! 神様! 草むしり頑張った!」

「そうかそうか」


 神様はそう言って笑うと、おらの頭を大きな手で撫でてくれた。


「神様! 神様! 寒くて寝れねぇ」

「そうかそうか」


 神様はそう言って笑うと、布団の中に入れて一緒に寝てくれた。


 神様はあまり喋るのは得意ではなさそうだった。

 けれど、おらの言葉をしっかりと聞いていつもおらのお願いを叶えてくれた。


 神様はとても働きもので、狩りも料理も洗濯も大工も何でも上手だった。

 おらも神様の役に立ちたくて、見よう見まねでやったら神様はいつも笑って「えらいえらい」と褒めてくれた。


 神様は、いつもおらを幸せにしてくれる暖かいお日様のようだった。



 ◇



 ある昼下がり。

 おらは神様と一緒に川で魚釣りをしたあと、家に帰ろうとしたときだった。


 ガタガタガタガタ……!


「うわぁ!? なんじゃ!? なんじゃ!?」


 大地が大きく揺れ、立っていられないほどの衝撃におらはぐらりと身体をよろめかせる。

 すると、おらを支えるように神様がおらの腕をグッと引き寄せてくれた。


「神様、ありがとう」

「……っ!」

「え?」


 神様が声にもならない声を上げる。

 ふと顔をあげれば、頭上から大きな岩が次々に降ってくるのが見えた。

 そして、それから庇うかのように神様がおらに覆い被さった。


「ありがとう。楽しかった」



 ◇



 衝撃で気を失っていたらしいおらは、何か重いものがのしかかってることに気づいてハッと意識を取り戻した。


「……神様? 神様……! 神様、無事か!?」


 自分の上に乗っていたのが神様だと気づいてグッと押し返す。

 すると神様は力なくひっくり返った。

 その姿は真っ赤に染まり、ズタボロであった。


「神様! 神様! 神様は神様だから、死なねぇよな!? すぐに元気になるよな!? だって神様なんだからな!」


 神様は神様なんだから絶対にまた元気になるとそう信じて声をかけるも、神様は喋ることもなければいつものように笑うこともなく、ただぐったりと光のない虚ろな瞳でどこかを見つめるだけだった。




 ⬜︎




 遠い山奥に大男がいるという。

 そいつは奇病にかかって肌が爛れ、大きな瘤があったせいで親に捨てられたものの、死なずに山奥にひっそりと一人で孤独に暮らしているらしい。


 その大男のところに、最近まだ年端のいかない童が住み着いたようだと猟師達が口々に言っているのを聞いた。

 どうもその童も、口減らしで親から捨てられた子らしい。

 大男は自分の生い立ちもあってか甲斐甲斐しく世話をしているそうだ。

 童は大男を「神様」と呼んで慕っているらしく、村の人からはあんな醜男に大層な名がついたもんだと笑い種にされていた。


 ある日、大きな地震があった。

 地割れや土砂崩れが起きたせいで村のどこもかしこも壊滅的で、多くの人が死んだ。


 数日が経ち、村がようやく落ち着いてきたときにふとあの大男達がどうなったのか気になった。

 あの地震のせいで、山崩れがあったようで、きっとあの大男達も全く被害が出ていないわけではないだろうことは想像に難くなかった。


 童はいた。

 だが、大男は既に朽ち果てた状態だった。

 蛆が湧き、腐敗し、人だったとは思えないほど原型を留めてないそれに吐き気を催すも、童はそんなこと気にもとめない様子で近くの土をひたすら掘っていた。


「何をしてるんだ」

「穴を掘ってる」

「穴?」

「神様を埋めるんだ」

「どれ、手伝おう」


 手でずっと掘り続けていたらしい童の手は、爪の中まで泥だらけ。

 どれほど掘っていたのだろうか。指先の皮は裂け、血が混じっていて痛々しかった。



 ◇



「よし。これでいいだろう」


 大きく掘った穴に、大男だったものを埋める。見上げるほど大きかった大男は想像以上に小さくなっていて、何とも言えない気分になった。


「……神様。神様じゃなかった」


 童がぽつりと溢す。

 その声に覇気はなく、自分に言い聞かせるような声だった。


「神様だと思ってたんだ。何でもできて、おらに優しくて、お日様みたいな……でも、死んじゃった。神様だと思ってたのに、神様じゃなかった……おらと同じ人間だったんだ」

「いや、あいつは神様じゃ」

「え?」

「おめぇを助けたんじゃろ? だったら神様じゃ。誰が何と言おうとあいつは神様じゃ。救いの神じゃ」

「救いの神様……」

「あぁ。信じるものは救われるというじゃろ? おめぇが信じなくてどうする。あいつは神様じゃ。だからおめぇが今もこうして生きていられるんじゃろ?」

「……うん」


 童は目にいっぱい溜めていた涙をぽろぽろと溢す。

 先程まで虚ろだったその瞳には薄っすらと光が灯っていた。


「神様はやっぱり神様だった」

「あぁ。正真正銘の神様じゃ。神様になってずっとおめぇのことを見守ってくれるさ。だから神様にもらった命を大事にしろよ」

「うん」







 終

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