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独身男性とバイクと

30代後半の会社員、未婚で趣味に生きた男の毎日は充実した生活だった。

平均的な給料、週10時間程の残業、10年程住んでいる賃貸、昔の友人達は結婚し子供が出来て家を買い会う事も少なくなった。

周りからこの生活が幸せなのか?と聞かれるが、少なくとも男にとっては幸せな生活だった。


そんな日々も急に終わりを迎える。

男が趣味の古いアメリカンバイクに乗って出かける休日、目的地も無く走り出す、気になった店に入りまた走り出す。

朝から色々な店を回り特に何も買う事もなく時間は昼過ぎになっていた。

山間部の道沿いで昼食を終えて再び走り出したバイク、信号で止まった男は急に宙を舞っていた。

回る視界の中でバイクだけは鮮明に見えていた。

弾き出されたバイク、ガードレールに刺さり、止まらない車に押し潰される。

その時の男は「治るかな、廃車かな、まだ、あのバイクで走りたかったな」そう思っていた。

その思いが声が出る事は無く、バイクから弾き飛ばされ、倒れた男は朦朧とする意識を手放した。

そうして男の今生は終わりを迎えた。


「さて、君が本当に大切なモノは何だい?」

現実なのか夢なのか、意識が有るのか無いのか、寝てるのか起きてるのか判らない。

だが質問は確かに自分に向けられていると思う。

「自分の大切なモノ、大切な者、大切な物」

「聞き方を変えようか?、連れて行きたい人や物は有るかい?」

「友人達とは疎遠になり、両親からは諦められ、会社でのコミニュケーションは最低限、そんな俺に聞かれましても」

「有るだろ、趣味の古いバイクとか!」

「そうですが、事故で」

「事故で?」

「自分の目で見ましたから、ああ、多分治らないだろうな、廃車かな」

「そう、なら諦める?、元の状態で再び乗る事が出来るとして」

男は言葉が出なかった、実際に見た光景、元の状態で乗れると言う言葉、そうして何より自分の今の状態と話している相手の事。

「まず、今の状態から聞いても良いですか?」

「まあ、廃車だね、ガードレールと車でサンドイッチでペシャンコ」

「そうじゃなくて、自分は今死んでいるのですか?生きいているのですか?」

「そこからかぁ、じゃあ説明しようか?」


そうして男は愛車と共に転生させられた訳だ。

新しい世界に新しい命、愛車と共に自由に生きる。

そんな男の異世界旅行が始まった。

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