瓶詰めの星 【月夜譚No.373】
掲載日:2025/10/26
机の上に置かれた瓶詰めの金平糖が光った気がした。帰宅したばかりの少女は電気を点けることも忘れて机に駆け寄り、また光るのではないかと薄闇に目を凝らした。
しかし、数分待ってみても再び光る気配はない。そもそも、金平糖が光るわけがないのだ。受験も近いし、きっと疲れていたのだろう。
そう自分を納得させてふと顔を上げた時、窓の外がちかりとした。両開きの窓を開け、夜空を見上げて「わあ……」と声を漏らす。
濃い藍の空を、幾つもの光の筋が駆け抜ける。儚くも美しいその光景は、思わず見惚れるには充分だった。
そういえば、と、今夜は流星群が見られると今朝のニュースで言っていたのを思い出す。きっと、帰ってすぐ自室の電気を点けていたら気づけなかっただろう。
後ろを振り返ると、何の変哲もない金平糖の瓶が佇んでいる。カラフルな砂糖菓子が光を放つことはなく、ただ机の上で静かに。
小さな星々が流星群を教えてくれたのではないかという考えが頭を過って、少女は小さく笑う。やっぱり、勉強ばかりで疲れているのだ。
(――今は、もう少しだけ)
首を上げ、流れる星を瞳に映す少女の後ろで、甘い菓子は仄かに銀を帯びた。




