【第7章 古代魔法の覚醒】
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穏やかな日常の終わり
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学園祭から二週間が経ち、悠斗たちは平穏な日々を過ごしていた。
「今日の古代魔法の実習はどうでしたか?」
エリナが研究室で悠斗に尋ねた。
「元素融合がだいぶ安定してきました」
悠斗は満足そうだった。炎と水を同時に制御する技術は、もはや彼にとって自然なものになっていた。
「次は三属性同時制御に挑戦してみましょう」
アルトリア先生が提案した。
「火・水・風の組み合わせです」
「やってみます」
悠斗が魔法を唱えようとした瞬間、学園全体に警報が鳴り響いた。
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大規模襲撃の始まり
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「全生徒は直ちに避難してください!」
魔法で拡声された学園長の声が響いた。
「闇の教団による大規模な攻撃です!」
窓の外を見ると、学園を囲むように黒いローブの集団が配置されていた。その数は前回の比ではない。
「今度は本気ですね……」
セレナが冷静に状況を分析した。
「包囲されています。逃げ場がありません」
「なら、戦うしかありませんね」
悠斗は覚悟を決めた。
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地下遺跡への退避
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「皆さん、地下遺跡に避難しましょう」
アルトリア先生が指示した。
「そこなら古代の守護魔法があります」
しかし、遺跡に向かう途中で敵と遭遇した。
「生徒たちを発見。排除せよ」
「させません!」
悠斗たちは応戦した。五人共鳴魔法で敵を撃退しながら、遺跡へと向かう。
「数が多すぎます」
リリアが息を切らしていた。
「もう少しです。頑張って」
エリナが励ました。
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遺跡の守護魔法
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地下遺跡に到着すると、古代の守護魔法が自動的に発動した。
「侵入者を感知しました」
古代の人工知能らしき声が響いた。
「転移者の魔力を確認。保護モードに移行します」
遺跡全体が光に包まれ、強固な結界が形成された。
「これで一時的には安全ですね」
「でも、永続的ではありません」
アルトリア先生が説明した。
「この結界も、大規模な攻撃を受け続ければいずれ破られます」
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封印の異常
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その時、封印の間から異様な光が漏れ出した。
「封印に異常が!」
急いで封印の間に向かうと、水晶に封じられた災厄の魔王が激しく暴れていた。
「外部からの魔法攻撃で封印が不安定になっています」
アルトリア先生の表情が青ざめた。
「このままでは封印が完全に破れてしまいます」
「どうすれば……」
「封印を強化するしかありません。しかし……」
先生は悠斗を見つめた。
「あなたの力が必要です」
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転移者の真の力
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「僕にできるでしょうか……」
「できます。あなたは転移者です」
アルトリア先生が確信を込めて言った。
「古代の転移者たちと同じ力を持っています」
「でも、制御が……」
「今度は一人ではありません」
エリナが悠斗の手を握った。
「私たちがサポートします」
「そうです。魔力共鳴を使えば、力を制御できるはずです」
ルーカスが冷静に提案した。
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古代魔法陣の起動
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「分かりました。やってみます」
悠斗は決意を固めた。
「まず、この古代魔法陣を起動させてください」
アルトリア先生が床の巨大な魔法陣を指差した。
「これは封印強化の魔法陣です」
悠斗が魔法陣の中央に立つと、陣が光り始めた。
「転移者の魔力を確認。古代魔法陣、起動準備完了」
再び人工知能の声が響いた。
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五人の絆
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「みんな、お願いします」
悠斗が仲間たちに声をかけた。
「もちろんです」
エリナが真っ先に魔法陣に加わった。
「僕たちも」
リリア、ルーカス、マークも続いた。
「セレナ先輩も」
「任せてください」
六人が手を繋ぎ、魔力共鳴を開始した。
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封印強化魔法の発動
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「波長同調、開始」
六人の魔力が一つになった瞬間、魔法陣が激しく光った。
「古代封印強化魔法『エターナル・プリズン』発動」
人工知能が宣言する。
巨大な光の柱が封印の水晶を包み込んだ。災厄の魔王の暴れる力が徐々に弱くなっていく。
「成功しています」
アルトリア先生が安堵した。
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魔王の最後の抵抗
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しかし、封印が強化される直前、魔王が最後の力を振り絞った。
「我を封じるか……ならば、せめて一撃を……」
強大な闇の魔力が放出された。
「みんな、下がって!」
悠斗は咄嗟に仲間たちの前に出た。
「ユート!」
エリナが叫んだ。
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新たな力の覚醒
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闇の魔力が悠斗を襲った瞬間、彼の体から眩い光が放たれた。
「これは……」
悠斗の体を包む光は、どの属性でもない純粋な魔力だった。
「転移者固有の魔力……『創造の光』」
アルトリア先生が息を呑んだ。
「古代の転移者たちが使った、最高位の魔法です」
悠斗は無意識に新しい魔法を発動していた。
「クリエイト・プロテクション」
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創造魔法の奇跡
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悠斗の魔法は、闇の攻撃を完全に無効化しただけでなく、それを純粋な光に変換した。
「攻撃を防御に変換する……そんなことが可能なのか」
セレナが驚愕した。
「創造魔法の真髄です」
アルトリア先生が説明した。
「破壊ではなく、創造によって問題を解決する」
「まさに、ユートさんらしい魔法ですね」
エリナが微笑んだ。
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封印の完成
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創造魔法の力で、封印は完全に強化された。
「封印強化、完了しました」
人工知能が報告した。
「予想耐久年数、1000年以上」
「これで当分は安心ですね」
災厄の魔王は深い眠りについた。もはや外部からの攻撃程度では目覚めることはないだろう。
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地上での戦況
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「地上はどうなっているでしょうか?」
「確認してみましょう」
一行は地上に戻った。すると、意外な状況が待っていた。
闇の教団の攻撃は止んでいた。そして、学園の教師陣が敵を圧倒していた。
「どうして……」
「封印が強化されたからです」
グレゴリー教官が説明してくれた。
「彼らの力の源は、魔王の漏れ出る魔力でした。それが断たれたため、急激に弱くなったのです」
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ヴィクターとの最終対決
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しかし、まだ終わりではなかった。
「よくも我々の計画を台無しにしてくれたな」
ヴィクター・ナイトシェードが現れた。
「貴様が転移者か」
彼の魔力は他の教団員とは桁違いだった。魔王の力に頼らない、純粋な闇魔法の使い手だった。
「皆さん、下がっていてください」
悠斗が前に出た。
「一人で戦うつもりですか?」
「大丈夫です。新しい力があります」
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創造 vs 破壊
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「転移者の力、見せてもらおう」
ヴィクターが巨大な闇の竜を召喚した。
「デストロイ・ドラゴン」
破壊の権化ともいえる強大な魔物だった。
「創造魔法『クリエイト・ガーディアン』」
悠斗は光の守護神を創造した。
二つの力がぶつかり合う。破壊と創造の真っ向勝負だった。
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理解という名の勝利
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戦いの最中、悠斗はヴィクターの心を読み取った。
「あなたも……昔は正義のために戦っていたんですね」
「何を知っている」
「この世界を救おうとして、道を誤った」
悠斗の言葉にヴィクターが動揺した。
「魔王の力を利用すれば、確かに強大な敵を倒せるでしょう。でも、それは結果的に世界を破滅に導きます」
「……」
「一緒に正しい道を歩みませんか?」
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和解の可能性
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「転移者よ……」
ヴィクターの表情が変わった。
「私は長い間、間違っていたのか」
「間違いに気づくのに、遅すぎることはありません」
悠斗は手を差し伸べた。
「一緒に、この世界を守りましょう」
ヴィクターは長い間沈黙していた。そして……
「……今回は見逃してやる」
彼は部下たちと共に撤退していった。
「また会おう、転移者よ」
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戦いの終結
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「終わりました……」
悠斗は安堵のため息をついた。
「お疲れ様でした」
エリナが駆け寄ってきた。
「みんなも無事で良かった」
仲間たちも無事だった。
「君の新しい力、見事でした」
アルトリア先生が評価してくれた。
「創造魔法を使いこなせる転移者は、歴史上でも極めて稀です」
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新たな日常へ
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戦いが終わり、学園にも平穏が戻った。
「今度こそ、平和な日々が続きそうですね」
「そうですね。でも、油断は禁物です」
悠斗は新しく覚醒した力を制御する訓練を続けていた。
「創造魔法は強力ですが、扱いが難しい」
「でも、きっと使いこなせます」
エリナが信じてくれていた。
「みんながいますから」
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成長の確認
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「そういえば、ユートの魔力、もう一度測ってみませんか?」
リリアが提案した。
「今度は古代の測定器で」
地下遺跡の測定器で改めて測定すると……
「2500……」
「すごい成長ですね」
「でも、数値よりも大切なのは……」
悠斗は仲間たちを見回した。
「この絆です」
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エピローグ
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古代魔法の覚醒を通じて、悠斗は真の転移者としての力を手に入れた。そして、破壊ではなく創造によって問題を解決する道を選んだ。
闇の教団との戦いは一段落したが、まだ完全に終わったわけではない。しかし、今の悠斗には仲間がいる。愛する人がいる。そして、この世界を守る使命がある。
「これからも、みんなで力を合わせて頑張ろう」
新たな力を得た悠斗の前に、まだ見ぬ冒険が待っていた。
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第7章 了