【第6章 学園祭と告白】
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学園祭の準備
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中間試験から一ヶ月後、学園は年に一度の学園祭の準備で賑わっていた。
「今年のテーマは『魔法と革新』です」
生徒会長の発表に、悠斗たちのクラスは盛り上がった。
「何をやりましょうか?」
「せっかくだから、ユートの発明を紹介しては?」
マークが提案した。
「でも、一般の人に分かるかな……」
悠斗は心配だった。魔法道具の改良技術は専門的すぎるかもしれない。
「それなら、体験型にしてはどうでしょう?」
エリナがアイデアを出した。
「魔法と科学の体験コーナー」
「いいですね!」
リリアが目を輝かせた。
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企画立案
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「具体的にはどんなことを?」
ルーカスが計画的に尋ねた。
「まず、改良した魔法道具の実演」
悠斗が説明し始めた。
「それから、魔法陣の仕組みを科学的に解説するコーナー」
「現代風のゲームも取り入れましょう」
エリナが提案した。
「魔法クイズラリーとか」
「それから……」
悠斗は現代日本の文化祭を思い出した。
「お化け屋敷ならぬ、『魔法迷宮』はどうでしょう?」
「魔法迷宮?」
「魔法を使った仕掛けがある迷路です。科学的な仕掛けも組み合わせて」
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現代風アトラクション
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「面白そう! でも、どうやって作るの?」
「まず設計図を描いて……」
悠斗は現代の遊園地のアトラクションを参考に設計を始めた。
「光の反射を使った錯覚の部屋、音響効果を魔法で作る部屋、風魔法を使った浮遊体験……」
「すごい発想ですね」
セレナも興味を示した。
「古代魔法の知識も活用できそうです」
「ぜひお力を貸してください」
悠斗は頭を下げた。
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準備期間の奮闘
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次の週から、本格的な準備が始まった。
「魔法陣の刻印、完了しました」
エリナの精密な光魔法で、複雑な魔法陣が教室の床に描かれた。
「音響システムはどうですか?」
「風魔法で音を増幅する装置、完成です」
リリアが得意げに報告した。
「僕は材料集めと設営を担当します」
マークが汗を流しながら働いていた。
「理論面の監修は私が」
ルーカスが冷静に全体を管理していた。
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ダミアンの妨害工作
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しかし、準備は順調ではなかった。
「また材料が足りなくなってる……」
「昨日確かに十分あったはずなのに」
これで今週三回目だった。
「誰かが妨害してるのかも」
マークが不安そうに呟いた。
その時、教室の扉が開いた。
「準備ご苦労様だな」
ダミアンが取り巻きと共に現れた。
「まさか、あなたが……」
エリナが気づいた。
「さあ、どうだろうな」
ダミアンは薄笑いを浮かべた。
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対抗策の実施
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「このままでは学園祭に間に合いません」
悠斗は対策を考えた。
「夜間の警備を強化しましょう」
「みんなで交代で見張りをします」
リリアが提案した。
「それより、根本的な解決を」
悠斗には一つのアイデアがあった。
「ダミアンを直接説得してみます」
「危険です」
エリナが心配した。
「大丈夫。今度は一対一で話してみます」
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ダミアンとの対話
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翌日の昼休み、悠斗はダミアンを呼び出した。
「何の用だ、転入生」
「単刀直入に聞きます。妨害をやめてください」
「妨害? 何のことだか分からないな」
ダミアンはしらを切った。
「エリナさんのことですね」
悠斗は核心に触れた。
「彼女は僕のものではありません。でも、強引なやり方では振り向いてもらえません」
ダミアンの表情が変わった。
「貴様に何が分かる」
「エリナさんは優しい人です。でも、それ以上に意志の強い人です」
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真意を伝える
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「彼女が求めているのは、対等な関係です」
悠斗は続けた。
「力で押し切ろうとすれば、ますます距離を置かれます」
「……」
ダミアンは黙っていた。
「あなたの気持ちは本物だと思います。でも、方法が間違っています」
「では、どうすればいいというのだ」
「まず、彼女の意志を尊重することから始めてください」
ダミアンは複雑な表情を見せた。
「考えておく」
それだけ言って立ち去った。
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妨害の停止
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翌日から、不思議と妨害は止まった。
「ダミアンと話したのが効いたのかな?」
「かもしれませんね」
エリナも安心したようだった。
「おかげで準備が進みます」
リリアが嬉しそうに言った。
「魔法迷宮、完成間近です!」
「音響システムも調整完了」
「展示パネルも仕上がりました」
チーム一丸となって、最後の仕上げに取り組んだ。
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学園祭当日
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ついに学園祭当日がやってきた。
「緊張しますね……」
悠斗は朝から落ち着かなかった。
「大丈夫です。きっとうまくいきます」
エリナが励ましてくれた。
学園には多くの来訪者が訪れていた。近隣の街の人々、他の魔法学校の生徒、冒険者ギルドの関係者など。
「いよいよ開始です!」
リリアが興奮して叫んだ。
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大盛況の展示
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「魔法と科学の体験コーナー」は開始早々から大盛況だった。
「この魔法陣、普通のものより効率がいいですね」
来訪者の魔法使いが感心していた。
「電子回路の原理を応用しているんです」
悠斗が説明すると、さらに驚かれた。
「魔法迷宮も大人気です!」
マークが報告してくれた。
「順番待ちの列ができています」
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エリナとの時間
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昼休みの時間、悠斗とエリナは学園祭を見て回っていた。
「他のクラスの出し物も面白いですね」
「そうですね。でも、私たちのが一番です」
エリナが微笑んだ。
「エリナさんのおかげです」
「そんなことありません。ユートさんのアイデアがあってこそです」
二人は並んで歩いていた。周囲の喧騒が遠く感じられる。
「あの……ユートさん」
エリナが何か言いかけた時、人波に押されて彼女がよろけた。
「危ない!」
悠斗は咄嗟にエリナを支えた。
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告白の瞬間
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「ありがとうございます……」
エリナが顔を上げると、二人の顔が近づいていた。
「あの……」
「はい」
「私、ユートさんのことが……」
その時、大きな爆発音が響いた。
「何事ですか?」
二人は音のした方向を見た。学園の正門付近で煙が上がっている。
「また襲撃?」
「急ぎましょう」
告白は中断されてしまった。
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再びの襲撃
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正門付近には、黒いローブの集団がいた。
「闇の教団……」
「学園祭を狙ったのですね」
多くの一般人がいる中での襲撃だった。
「皆さん、避難してください!」
教師陣が対応に当たっているが、敵の数が多い。
「僕たちも戦いましょう」
悠斗が仲間たちに声をかけた。
「でも、一般の人たちが……」
「だからこそ、守らなければなりません」
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新戦術の実戦投入
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「魔力共鳴システム、使用します」
悠斗とエリナが手を繋いだ。
「波長同調、開始」
二人の魔力が完全に同調する。
「みんなも加わってください」
リリア、ルーカス、マークも輪に加わった。
「五人同時共鳴……可能でしょうか?」
「やってみましょう」
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五人共鳴魔法
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「今です!」
五人の魔力が一つになった瞬間、巨大な魔法陣が空中に現れた。
「グランド・エレメンタル・バリア!」
火・水・風・土・光・闇の全属性が融合した巨大な防壁が学園を覆った。
「すごい……」
見ていた人々が感嘆の声を上げた。
闇の教団の攻撃は、全て防壁に阻まれた。
「ありえない……あの年齢で五人共鳴を」
敵の指揮官が驚愕していた。
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反撃開始
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「今度はこちらの番です」
悠斗たちは反撃に転じた。
「コンビネーション・アタック!」
五人の魔法が連携して敵を次々と無力化していく。
現代の戦術理論と魔法を組み合わせた新しい戦闘スタイルだった。
「包囲網を形成します」
ルーカスの指示で、敵を追い詰めていく。
「逃がしません」
リリアの風魔法が敵の退路を断った。
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敵の撤退
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「覚えていろ……次はこうはいかない」
敵の指揮官が撤退の合図を出した。
「逃げるな!」
グレゴリー教官が追撃しようとしたが、敵は煙幕を張って姿を消した。
「また逃げられましたね……」
「でも、学園祭は守れました」
悠斗は安心した。
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祭りの再開
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襲撃騒ぎは収まり、学園祭が再開された。
「さすがアルカディア魔法学園の生徒たち」
来訪者たちが悠斗たちを称賛した。
「あの五人共鳴魔法、見事でした」
「将来が楽しみですね」
嬉しい評価の声が聞こえてくる。
「私たちの展示も大成功です」
エリナが報告してくれた。
「最優秀賞間違いなしです」
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夜の告白
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学園祭が終わった夜、悠斗とエリナは再び二人きりになった。
「今日はお疲れ様でした」
「こちらこそ」
中庭のベンチに座り、二つの月を見上げていた。
「あの……昼間の続きですが」
エリナが勇気を出して話し始めた。
「私、ユートさんのことが好きです」
ついに告白の言葉が出た。
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気持ちの確認
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「僕も……エリナさんのことが好きです」
悠斗も素直に答えた。
「本当ですか?」
「はい。この世界に来て、エリナさんに出会えて本当に良かった」
「私もです。ユートさんと一緒にいると、新しい世界が見えます」
二人の手が自然と重なった。
「これからも、一緒にいてくれますか?」
「もちろんです」
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新たな関係
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翌日から、二人の関係は恋人同士になった。
「おめでとうございます!」
リリアが祝福してくれたが、どこか寂しそうだった。
「リリア……」
「大丈夫です。ユート先輩が幸せなら、私も嬉しいです」
彼女の健気さに、悠斗は胸が痛んだ。
「僕たち、今まで通り仲間ですから」
「はい! もちろんです」
リリアが明るく笑った。
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ダミアンの変化
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驚いたことに、ダミアンの態度も変わっていた。
「エリナ」
「ダミアン……」
「君の気持ちは分かった。もう無理強いはしない」
「ありがとうございます」
エリナがほっとした表情を見せた。
「だが、転入生」
ダミアンが悠斗を見た。
「彼女を幸せにできなければ、その時は覚悟しろ」
「分かっています」
悠斗は真剣に答えた。
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学園祭の結果発表
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学園祭の結果発表で、予想通り悠斗たちのクラスが最優秀賞を受賞した。
「おめでとうございます」
学園長が賞状を手渡してくれた。
「革新的なアイデアと、実際の成果を高く評価します」
「ありがとうございます」
悠斗は代表として賞状を受け取った。
「ユート君の発想力と、皆さんのチームワークの勝利ですね」
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新たな脅威の予兆
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しかし、喜びもつかの間だった。
「また襲撃がありましたね」
セレナが心配そうに言った。
「敵も本格的になってきています」
「そうですね。次はもっと大規模な攻撃があるかもしれません」
アルトリア先生も表情を曇らせた。
「準備を急がなければなりませんね」
悠斗は古代魔法の修練を思い出した。
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エピローグ
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学園祭を通じて、悠斗とエリナは恋人同士になった。そして仲間たちとの絆もさらに深まった。
しかし、闇の教団の脅威は確実に増している。平和な日常は、もはや過去のものとなりつつあった。
「でも、みんながいれば大丈夫」
悠斗は仲間たちを見回した。そして隣にいるエリナを見つめた。
「次の戦いも、きっと乗り越えられる」
愛する人と仲間たちのために、悠斗は戦う決意を固めた。
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第6章 了