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【第3章 魔法道具改良プロジェクト】

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魔法工学の授業

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「皆さん、今日は魔法道具の基礎について学びます」


魔法工学の教室で、ベアード・ギアハート教授が古い魔法杖を手にしていた。白髪の小柄な老人だが、その目は好奇心に輝いている。


「この基本的な魔法杖は、約200年前の設計です。魔力増幅率は1.2倍程度ですが……」


悠斗は手を挙げた。


「先生、質問があります」


「はい、ユート君」


「この杖の魔力伝導路なんですが、もしここに分岐回路を作って並列処理できれば、効率が上がるのではないでしょうか?」


教室がざわめいた。悠斗は電子回路の並列処理の概念を魔法に応用しようとしていた。


「並列処理……面白い発想ですね。しかし、魔力の制御が非常に難しくなります」


「でも、もし制御できれば……」


ベアード教授の目が輝いた。


「よろしい! では今日の課題として、ユート君には既存の魔法杖の改良案を考えてもらいましょう」


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図書館での研究

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放課後、悠斗は図書館で魔法工学の文献を漁っていた。セレナが推薦してくれた古代魔法の資料も含まれている。


「魔力の流れは電流と似ているな……」


悠斗は現代物理学の知識と魔法理論を照らし合わせていた。


「あの、ユートさん」


振り返ると、エリナが心配そうな表情で立っていた。


「エリナさん、どうしたんですか?」


「その……お手伝いできることはありませんか?」


「手伝って?」


「私も魔法工学に興味があるんです。でも一人で学ぶのは難しくて……」


エリナの申し出に、悠斗は喜んだ。


「ぜひお願いします! 一緒に研究しましょう」


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共同研究の始まり

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次の日から、悠斗とエリナは放課後に図書館で共同研究を始めた。


「ユートさんのアイデアは本当に斬新ですね」


エリナが感嘆の声を上げた。悠斗が描いた魔法陣の設計図は、従来のものとは大きく異なっていた。


「これは……魔力を二つのルートに分けて、最後に合流させるんですね」


「そうです。現代の……じゃなくて、理論的にはこうすることで効率が上がるはずです」


悠斗は現代と言いかけて慌てて誤魔化した。


「でも、この制御部分が難しそう……」


エリナが指摘した部分は、確かに複雑だった。


「光魔法が得意なエリナさんなら、精密な制御ができるのではないでしょうか?」


「私が?」


「はい。光は直進性が高いので、魔力の流れを正確に制御するのに向いていると思います」


エリナの表情が明るくなった。


「やってみます!」


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実験開始

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一週間後、二人は実際に魔法杖の改良実験を始めた。魔法工学の実習室を借りて、基本的な杖に改良を加えていく。


「魔力伝導路の刻印は私がやります」


エリナの光魔法による精密な刻印は見事だった。髪の毛ほどの細い線を正確に刻んでいく。


「すごい技術ですね」


「ユートさんの設計図が分かりやすいおかげです」


二人の息は完璧に合っていた。


「制御回路の部分、もう少し複雑にする必要がありますね」


「こんな感じでしょうか?」


エリナが新しいパターンを提案した。悠斗の目が輝く。


「それです! 完璧です!」


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完成と実験

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三日後、改良版魔法杖が完成した。見た目は普通の杖とほとんど変わらないが、内部the魔力伝導路は複雑な回路になっている。


「いよいよテストですね」


「はい。まずは私から」


悠斗が杖を手に取り、簡単な火球魔法を唱えた。


「ファイアボール」


杖の先に現れた火球は、通常の1.5倍ほどの大きさだった。そして魔力消費は普通の杖とほとんど変わらない。


「成功です!」


「すごい……本当に効率が上がってる」


エリナも杖を手に取って光魔法を試した。


「ライトニング」


放たれた光の矢は、従来の杖の2倍近い威力を示した。


「魔力増幅率は1.8倍……これは驚異的な数値です」


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教授への報告

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次の日、二人はベアード教授に改良杖を見せた。


「ほう……これが君たちの改良版ですか」


教授は杖を手に取って詳しく調べた。


「この魔力伝導路の設計は……見たことがありませんね」


「どうでしょうか?」


悠斗が緊張して尋ねた。


「素晴らしい! 理論的には完璧です。実際の効率も……」


教授が実験すると、やはり高い増幅率を示した。


「これは学会で発表すべき発見です。君たちの名前で論文を書いてみませんか?」


悠斗とエリナは顔を見合わせて微笑んだ。


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研究室への招待

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一週間後、二人は教授の研究室に招かれた。そこには高度な魔法工学の実験設備が並んでいる。


「君たちには特別に研究室の使用許可を出します」


「本当ですか?」


「もちろんです。才能を無駄にするわけにはいきません」


研究室には他にも興味深い魔法道具が置かれていた。


「これは?」


エリナが指差したのは、複雑な形状をした装置だった。


「魔力測定器の試作品です。現在のものより精密な測定ができるはずなのですが、まだ完成していません」


悠斗はその装置を見て、ある改良案を思いついた。


「もしかして、ここにフィードバック回路を追加すれば……」


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新たな挑戦

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「魔力測定器の改良ですか?」


エリナが興味深そうに尋ねた。


「はい。現在の測定器は一方向の測定しかできませんが、もし双方向にすれば、より詳細なデータが得られるはずです」


「双方向……」


「つまり、魔力を測定するだけでなく、その人の魔力の特性や潜在能力も分析できるんです」


ベアード教授が驚いた表情を見せた。


「それは……革命的なアイデアですね」


「やってみましょう」


エリナが意欲的に言った。


「この研究が成功すれば、魔法教育の方法も変わるかもしれません」


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仲間の反応

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夕食時、悠斗とエリナは研究の成果をリリアたちに報告した。


「すごいじゃないですか!」


リリアが目を輝かせた。


「ユート先輩とエリナ先輩が共同研究だなんて」


「興味深い研究ですね」


ルーカスも関心を示した。


「僕も魔法理論には興味があります。今度、研究に参加させてもらえませんか?」


「もちろんです」


悠斗は仲間が増えることを喜んだ。


「僕も手伝います!」


マークも手を挙げた。


「君は実習が得意だから、実験の助手をお願いできるかな」


「任せて!」


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ダミアンの妨害

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しかし、研究が順調に進む中、問題も起きていた。


「また実験道具が紛失している……」


研究室で、悠斗は困惑していた。これで今週三回目だった。


「偶然にしては多すぎますね」


エリナも心配そうだった。


「誰かが意図的に……」


その時、研究室の扉が開いた。ダミアンが取り巻きと共に入ってくる。


「研究ご苦労様だな、転入生」


「ダミアン……何の用ですか?」


「別に。ただ、平民風情が生意気な研究をしていると聞いてな」


ダミアンの視線が改良した魔法杖に向けられた。


「その杖、貸してみろ」


「断ります」


悠斗がきっぱりと言うと、ダミアンの表情が険しくなった。


「貸せと言っているんだ」


「研究中の試作品です。許可なく触らせるわけにはいきません」


「ダミアン様、やめてください」


エリナが間に入った。


「エリナ、君は関係ない」


「関係あります。これは私たちの共同研究です」


ダミアンは舌打ちして立ち去った。


「覚えていろ」


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セレナからの警告

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その夜、図書館でセレナが悠斗に声をかけた。


「ダミアンのことで相談があります」


「どんなことでしょうか?」


「彼があなたの研究を妨害していること、把握しています」


セレナの情報網の広さに悠斗は驚いた。


「気をつけてください。彼は手段を選ばない人です」


「ありがとうございます」


「それと……」


セレナは古い本を取り出した。


「この本に、あなたの研究に役立つ情報があるかもしれません」


『古代魔法工学概論』と書かれた厚い本だった。


「これは……」


「禁書に近い扱いを受けている本です。古代の魔法技術について書かれています」


悠斗は本を受け取り、お礼を言った。


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古代技術との出会い

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その本には、現代では失われた高度な魔法技術が記載されていた。


「魔力共鳴回路……」


悠斗は興味深い記述を見つけた。複数の魔法使いが魔力を共有する古代技術についての説明だった。


「これは古代で使われていた技術か……現代では失われているが、もしかすると復活させることができるかもしれない」


現代工学の知識と組み合わせれば、新しい形で実現できるかもしれない。


「エリナさんに相談してみよう」


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新技術の開発

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翌日、悠斗はエリナに古代技術について説明した。


「魔力を共有する技術があったんですね」


「これを現代の技術と組み合わせれば、今まで不可能だった魔法が使えるかもしれません」


「例えば?」


「複数人で一つの大きな魔法を使ったり、魔力の弱い人が強い魔法を使えるようになったり……」


エリナの目が輝いた。


「それは素晴らしいアイデアです!」


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研究発表会

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一ヶ月後、学園では年次研究発表会が開催された。各学年の優秀な研究が発表される場だ。


「次は2年生のユート・アルフォード君とエリナ・フォン・エルドリア君による『魔法道具の効率化に関する研究』です」


壇上に立った二人は、これまでの研究成果を発表した。


「従来の魔法杖の効率を1.8倍に向上させることに成功しました」


会場からどよめきが起こった。


「また、古代技術を応用した魔力共鳴システムも開発中です」


発表が終わると、大きな拍手が起こった。


「素晴らしい研究でした」


審査員の一人が評価した。


「最優秀賞は……2年生のユート・アルフォード君とエリナ・フォン・エルドリア君です!」


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成功の喜び

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発表会の後、仲間たちが祝福してくれた。


「おめでとうございます!」


リリアが嬉しそうに駆け寄ってきた。


「すごかったよ、二人とも」


マークも興奮している。


「理論的にも実践的にも完璧でした」


ルーカスが冷静に評価した。


「これで君たちの研究は学園公認となります」


ベアード教授も満足そうだった。


「より多くの予算と設備が使えるようになりますよ」


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エリナとの時間

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夜、悠斗とエリナは学園の中庭を歩いていた。


「今日は本当にお疲れ様でした」


「こちらこそ。エリナさんがいなければ成功しませんでした」


「そんなことありません。ユートさんのアイデアがあってこその成果です」


二つの月が優しく二人を照らしている。


「これからも一緒に研究を続けましょう」


「はい、ぜひ」


エリナの微笑みに、悠斗は胸が温かくなった。


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新たな目標

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寮の部屋に戻った悠斗は、今日の成功を振り返っていた。


「魔法道具の改良は成功した。次は……」


机の上には、セレナから借りた古代魔法の本が置かれている。


「魔力共鳴システムの完成を目指そう」


そして、この技術が将来、大きな危機を救うことになるとは、この時の悠斗はまだ知らなかった。


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第3章 了

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