教養としての日本近代文学史⑧ 現代まで
中島 敦
「山月記」…虎になった男の話
「李陵」…漢の武帝の兵を率いて匈奴征伐に向った李陵は敗退し、自身も捕えられる。李陵を弁護した司馬遷は、宮刑に処せられる。
井上 靖
□北海道旭川で生まれた井上靖(1907~1991)は、天城湯ヶ島、三島・沼津で18歳まで過ごした。伊豆の地が『しろばんば』『夏草冬濤』を誕生させた。『闘牛』で第22回芥川賞受賞。
「氷壁」
切れるはずのないナイロンザイルが切れたために登山中に墜落死した小坂乙彦。その死の原因を、同行していた魚津恭太が追う物語。
穂高山行の直前、魚津は小坂の思いがけない秘密を知る。小坂は、人妻である八代美那子とふとしたきっかけから一夜を過ごし、その後も恋心を抱き続け、美那子を困惑させていた。
小坂と魚津は、吹雪に見舞われる厳しい条件の中、穂高の氷壁に挑む。しかし頂上直前で二人を結んでいたザイルが切れ、小坂は墜落死する。その後、必死に捜索するも小坂は見つからない。失意のうちに帰京する魚津に対し、世間は、「ナイロンザイルは果たして切れるのか」との疑いを持つ。魚津はザイルが切れた真相をつきとめようとする。
「天平の甍」
天平五年、若き四人の僧を乗せた遣唐使船が出航した。その目的は、唐の高僧を日本へ呼び寄せ仏教を広めるためだった。一行は洛陽に入り様々な人物と出会うが、日本に来てくれる僧にいない。十年後、彼らはようやく鑑真と出会う。鑑真は日本人僧の熱意に打たれ渡日を表明する。
「敦煌」
西夏との戦いによって敦煌が滅びると、洞窟に隠された万巻の経典が、二十世紀になってはじめて日の目を見るという史実をもとに描く。
官吏任用試験に失敗した趙行徳は、売りに出されていた西夏の女を救う。その時彼女は趙に一枚の小さな布切れを与える。そこに記された異様な形の文字は彼の運命を変えることになる。
西夏に興味を持ち、西へと旅する行徳だが、途中で西夏部隊に捕獲される。辺境だとばかり思っていた西夏は、シルクロードの拠点として仏教文化の花開く砂漠のオアシスだった。戦乱の中で大混乱に陥る敦煌。行徳は敦煌の文化遺産を戦乱から守ることを決意し、貴重な書籍や経典を敦煌郊外の石窟寺院に運び出していく。
開高 健
「裸の王様」…子どもが描いた裸の王様の絵に対する大人の反応
大江健三郎
「死者の奢り」、「飼育」、「新しい人よ眼ざめよ」、「万延元年のフットボール」、「同時代ゲーム」
「ヒロシマ・ノート」(随筆)
三浦哲郎…「忍ぶ川」
北 杜夫…歌人・斎藤茂吉の二男
「夜と霧の隅で」、「楡家の人々」(斎藤家の医院が舞台)
日野啓三…「あの夕陽」、「夢の島」、「台風の眼」
司馬遼太郎…「竜馬がゆく」、「坂の上の雲」
井上ひさし…「手鎖心中」、「吉里吉里人」
幸田 文…「流れる」、「黒い裾」、「おとうと」
大庭みな子…「三匹の蟹」、「ふなくい虫」、「寂兮寥兮」
竹西寛子…「往還の気」、「儀式」、「管絃祭」
向田邦子…「父の詫び状」(随筆)
宮本 輝…「泥の河」、「蛍川」、「青が散る」、「優駿」
椎名 誠…「岳物語」
村上春樹…「羊をめぐる冒険」、「ノルウェイの森」、「海辺のカフカ」、「1Q84」
池澤夏樹…「スティル・ライフ」、「すばらしき世界」、「セーヌの川辺」
山田詠美…「ベッドタイムアイズ」、「風葬の教室」
よしもとばなな…「キッチン」、「哀しい予感」
(終わり)