教養としての日本近代文学史④ 自然主義
〇自然主義
現実と人間をあるがままに描く
正宗白鳥
「何処へ」
□http://ameblo.jp/classical-literature/entry-11234605155.html より
「正宗白鳥の魅力は、登場人物のニヒリズム(虚無主義)にあります。何事に対しても批判的で、その中心には空虚感があります。ニヒリズムは「愛」を否定し、「芸術」を否定し、「みんなが当たり前と思っているもの」を否定します。「何処へ」は、正宗白鳥の代表作です。織田が菅沼健次の元を訪ねます。翻訳をしたので、どこかに斡旋してほしいと言うんですね。健次は27歳で雑誌記者をしているんですが、どうも仕事に熱心ではないんです。その前にも中学教師を短期間で辞めてしまったばかりで、学生時代にお世話になった桂田博士に注意されてしまいます。
やがて自分の妹が健次のことを好きらしいと気づいた織田が、妹を健次に嫁がせようとします。ところが、箕浦がこの織田の妹のことがどうやら好きらしいんです。そうした織田の妹の結婚問題が背景で動いていく中、健次、織田、箕浦という若き友人たちのそれぞれの活動が描かれていきます。健次は、仕事にも恋愛にも興味がないんです。熱心にやればなんでもできるのに、やりません。そうしたニヒリズム(虚無主義)な態度が、際立った面白さを発揮している短編です」。
徳田秋声
□徳田秋声記念館ホームページより
「徳田秋聲(1871~1943)は、尾崎紅葉の門下を経て、田山花袋、島崎藤村らとともに明治末期、日本の自然主義文学における代表的作家として文壇に名乗りを上げました。その作品は、川端康成をして「小説の名人」と言わしめた技巧の高さとともに、つねに弱者への視点を忘れぬ、庶民の生活に密着した作風を特徴とします。私生活では、その分け隔てのない人柄が多くの文壇人に愛されたほか、映画やダンスを好むなど現代的な面も持ちあわせていました」。
「新世帯」
<梗概>
立身出世を夢見て上京した新吉は、修行の後小さな酒屋を構える。荒物屋の娘・お作と見合結婚し、酒屋の経営に精を出す新吉。気立てはいいが仕事の呑み込みが悪いお作に腹を立て、悪口を浴びせるなど、夫婦仲はしっくり行かない。いらだつ新吉は、お作が出産で帰郷している間に友人の妻・お国と関係を持ってしまう。新婚生活の現実を描いた夫婦小説。
「黴」
<梗概>
笹村は、その下宿先で働いていたお銀と結婚する。やがて子供が生まれ、住む家が手狭になり転居し、子供が病気に罹る。お銀が元彼と会っているのではという猜疑心に笹村は悩まされる。このような毎日の暮らしが、感情を交えず淡々とした文章で綴られる。
引っ越し先は、じめじめとした黴が生えていそうな家や、殺人が起きた家で、鬱々とした毎日が続く。
田山花袋
「自然を自然のままに描くこと」を主張
「蒲団」
…若い女弟子にひかれる中年作家は、彼女が故郷に去った後、彼女の布団の匂いを嗅ぐ。
□http://ameblo.jp/classical-literature/entry-11017337756.html より
「もう出だしから彼は思い悩むんです。彼女への熱い想いが描かれ、変わってしまった関係に苦しむ。要するに、その彼女に恋人が出来たというだけの話なんですけど。その彼女がどういう女性なのか、彼と彼女はどういう関係なのかに話が戻ります。
竹中時雄という作家。なんとなく平凡な生活に退屈を感じていて、新しい恋でもしたいとぼんやり思っている。竹中には妻子がいる。そんな折に、芳子という学生から弟子にしてほしいという手紙がくるんです。その熱心さに心動かされて、それでもなお女の身で文学を志す危険を書いて返事を出すんですが、さらにまた熱心な手紙が来たので、時雄は芳子を弟子にすることにします。父親に連れられて上京してくる美貌の芳子。時雄の家の二階で生活し始めます。それからというもの、時雄の日々は色合いが変わってくるんですね。同じような風景でも、部屋の中に芳子がいるのといないのではまったく違って見える。ハイカラな芳子は、異性の友だちなんかもいたりするんです。時雄は芳子に心奪われるんですが、別に二人の関係に特別ななにかがあるわけでもない。師匠と弟子の関係そのものです。
やがて冒頭の事件が起こります。芳子は里帰りして、また上京するんですが、どうも出発と到着の日数が合わない。問い詰めると、どうやら京都で恋人と会っていたらしい。時雄は衝撃を受けるわけです。純粋無垢に感じていた芳子に突然現れた恋人の存在。芳子は恋人との関係はプラトニックなものだと言います。」
「田舎教師」
<梗概>
家庭が貧しく進学できない文学青年林清三は、寒村の小学校教師として赴任する。同僚を見て「まごまごしていると自分もこうなってしまう」と焦るが、やがて教員生活に埋もれてゆく。
野心に燃えながら田舎の教師として短い生涯を終えた青年の出世主義とその挫折を、田舎町の風物や生活の中に描いた自然主義文学の代表的作品。
島崎藤村
◇浪漫主義的作品
「若菜集」・「落梅集」(小諸なる古城のほとり、千曲川旅情のうた など)詩集。新体詩。
◇自然主義的作品
「破戒」梗概
明治後期、被差別部落(※)に生まれた瀬川丑松は、身分を隠して生きよ、との父の戒めを受けて育つ。小学校教員となった丑松は、同じく被差別部落に生まれた解放運動家、猪子蓮太郎を慕うようになる。やがて学校で丑松が被差別部落出身であるとの噂が流れ、また猪子は壮絶な死を遂げる。丑松は、遂に父の戒めを破り素性を打ち明け、テキサスへと旅立つ。
※被差別部落…身分的・社会的に強い差別待遇を受けてきた人々が集団的に住む地域。江戸時代に形成され、その住民は1871(明治4)年に法制上は身分を解放されたが社会的差別は現在なお完全には根絶されていない。この差別待遇撤廃を目的とした社会運動が、部落解放運動。
「春」・「家」
「夜明け前」
冒頭「木曾路はすべて山の中である」
父をモデルに明治維新前後を描く歴史小説。
□藤村と花袋
「田山君、死んでゆく気持ちはどうだね」
藤村が、死期の近い友人、田山花袋への見舞いの席で発した言葉。これに対し花袋は、「誰も知らない暗い所にいくのだから、なかなか単純な気持じゃないよ」と答えた。




