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教養としての日本近代文学史② 擬古典主義

擬古典(ぎこてん)主義 行き過ぎた西洋化の反動として、古典を再評価。硯友社(けんゆうしゃ)紅露(こうろ)文学。


山田 美妙(びみょう)

夏木立(なつこだち)」…「です」調


尾崎 紅葉(こうよう)

山田美妙らと日本最初の文学結社「硯友社(けんゆうしゃ)」結成。

(「硯」は、「同窓の・共に学んだ」の意。「硯友」は、「同窓の友」の意。東京大学予備門の学生だった尾崎紅葉、山田美妙らによって作られた文学同好会)

機関誌「我楽多文庫(がらくたぶんこ)」創刊。(日本初の純文学雑誌)


二人(ににん)比丘尼(びくに)色懺悔(いろざんげ)

…ある草庵で出逢った二人の比丘尼(女性の僧)が、出家の理由を述べるうちに、偶然に同じ武士を慕っていたことが分かる。


伽羅(きゃら)枕」

…(「伽羅枕」とは、香を焚く引き出しを仕組んだ木枕。髪に香をたきしめるのに用いる。香枕)

かつて吉原にこの人ありとうたわれた花魁おいらんの波乱万丈の人生。


「三人妻」

…豪商・葛城余五郎(かつらぎよごろう)は、生まれが貧しかったが商売で大儲けし、本妻のほか三人の妾がいる。さまざまな障害を乗り越えてタイプの違うこの三人の美女を手に入れる物語。「三人妻」とは、三人の妾のこと。


多情(たじょう)多恨(たこん)

…「多情多恨」とは、繊細であるために、恨んだり悔んだりすることの多いこと。「である」調。

亡妻を慕いつづける青年教師が、友人の妻にいつとはなく魅かれる心理を描いた作品。

<梗概>

 鷲見柳之助わしみりゅうのすけは妻を流行性感冒で亡くした悲しみに打ち沈んでいる。それに同情した親友の葉山誠哉はやませいやは、鷲見を自分の家の二階に同居させる。鷲見は世の中に二人しか心を許した人がいない。一人は亡くなった妻、そしてもう一人は親友の葉山。葉山の妻おたねと柳之助とははじめ性格が合わなかったが、葉山夫婦が出かける時、お種の美しさに柳之助は心打たれる。また、お種の子育てや家事で忙しく、髪型や服装が少し崩れた姿にも心ひかれるようになる。会社から海外出張を命ぜられた葉山の留守中に、それまで冷ややかに接してきたお種に同情するようになり、お種も妻を亡くした柳之助を親切にもてなす。しまいにはお種の寝室に深夜訪れ、淋しいからと話し相手になってもらう柳之助。これを何度も続けるうちに、姦通の疑いをかけられる。葉山は柳之助を信じるものの、世間体があるからと、家から追い出す。


金色(こんじき)夜叉(やしゃ)

…お宮・貫一の物語。「夜叉」は鬼。金にとりつかれた亡者の意味。

<梗概>

 許婚(いいなずけ)鴫沢(しぎさわ)(みや)が金に目がくらんで変心したことを知った(はざま)貫一(かんいち)が、高利貸しになって宮や社会に復讐しようとする話。高等中学生の間 貫一は宮を愛していたが、宮は資産家に嫁すことになる。貫一は、熱海の海岸で宮に「来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月を曇らしてみせる」と悲痛なことばを残し行方をくらます。その後、貫一は復讐のため高利貸となる。結婚後悔悟した宮は貫一に許しを請うが、聞き入れられない。が、その貫一も宮からの手紙を開封するようにはなった、というところで作者死去のため中絶。



幸田露伴

■職人気質の男性主人公が信念により道を切り開く作品が多い。

(つゆ)団々(だんだん)」…大富豪が自分の娘の婿取りのため、世界に広告を出すという奇抜な発想の小説。

風流仏(ふうりゅうぶつ)」…お(たつ)と引き裂かれた彫刻師珠(しゅ)(うん)はお辰を模した仏像を彫り、死ぬ。

五重塔(ごじゅうのとう)」…芸術への情熱を持つ(じゅう)兵衛(べえ)は、独力で五重塔を建立する。


樋口 一葉(ひぐちいちよう)

□樋口一葉について(http://mamamassan.hatenablog.com/entry/HiguchiIchiyou より)

「本名、樋口 夏子(戸籍名:樋口 奈津〔なつ〕) 1872年(明治5年)~1896(明治29)年(24歳)

【死因】肺結核。当時、結核は不治の病といわれていたそうです。医学の進歩に感謝です!

【出身地】現在の東京都千代田区内幸町。この周辺には「一葉」の付くお店がやたら多いんですよ! ちょっと探しただけでも、スコッチクラブ一葉バー、銀座一葉(日本料理)、一葉煎餅(和菓子屋)、一葉式生け花、石挽き手打ち一葉(そば屋)、一葉松(中華料理)、一葉セレオ(喫茶店)…。

【家族】父、母、長女ふじ、長兄・泉太郎、次兄・虎之助、二女・一葉、三女・くに。

父の死後、多額の借金のあった樋口家。借金を返すために母と妹は懸命に針仕事をこなしたけれども、一葉は針仕事を蔑視し、別の収入源を探していたのだそうです。実は作家生活はたったの14か月だったということを知り、驚きました。文学界を風のように駆け抜けた人だったんですね。

半井桃水なからいとうすいとの出会い~樋口一葉おしるこ物語~】

1891(明治24)年、一葉は半井桃水の門下に加わりました。新聞に小説を連載する小説家だった桃水は、長身のイケメン、そして ものごし柔らか。一葉は日記の中で、桃水に初めて会ったときのことを「耳が火照り、唇は渇き、言うべき言葉も忘れて、ただお辞儀をするだけだった」と述べています。12歳も年上だった桃水に一目惚れしてしまっていたのでした。

 1892(明治25)年2月4日、みぞれ混じりの雪の降る寒い日のことでした。一葉は桃水を訪ね、同人誌「武蔵野」に掲載されることになる「闇桜」を読んでもらいます。そして二人は火鉢に向かい合って座り、語り合うんですね。このとき桃水が作ってごちそうしてくれたのが「おしるこ」だったわけです。17歳にして父の遺した多額の借金と共に一家を背負うことになり、貧しさとプレッシャーに押しつぶされそうになりながら日々暮らしていた一葉にとっては、どれだけ心にしみたことでしょう。日が暮れかかり、雪の帰り道を案じた桃水が、やさしく、「泊まっていきなさい」と声をかけます。勝手に勘違いして激しく動揺する一葉を見て桃水は、「私は近くの友人宅に泊まる」と付け加えました。結局その日、桃水は人力車を呼んで一葉を自宅まで送らせるのですが。当時、桃水は31歳の男盛り、一葉は19歳のうら若き乙女でした。でもね、このとき桃水は奥様を亡くされた「やもめ」だったんですよね。で、そこへ足しげく通ううちに、ウワサになってしまい、家族にまでも白い目で見られるようになった一葉は、もう会わないでおこう・・・と決意するわけです。ところで、半井桃水ってどんな人? 

東京朝日新聞の記者で、一葉と知り合ったときには既に新聞小説家の地位を確立していたのだそうです。

長崎県対馬市の生家跡には「半井桃水館」が建設されています。一葉との「おしるこ」エピソードにちなんで、毎年2月4日、半井桃水館ではおしるこが振る舞われるそうですよ。

みぞれ混じりの寒い日に、雪をいとわず訪ねた憧れの人。桃水が起き出すのを寒い玄関先で2時間も待っていた一途な一葉。その人が作ってくれた甘くて温かいおしるこを、その人と一緒に食す。優しくて甘い、至福のひとときだったことでしょうね。」


「大つごもり」

…「大つごもり」は大晦日のこと。薄幸の少女おみねの、女中生活の哀感。

<梗概>

 大金持ちだが奉公人に冷たい山村家に奉公するお峰 (十八歳)は、不平も言わず働いている。両親と死別した後、お峰は伯父一家に養育されていたが、伯父は病床に臥し、一家は貧苦にあえいでいる。高利貸しに借りた10円の支払い期限延長のための借金を伯父から頼まれ、お峰は山村家から借りる約束をする。山村家の奥様はいったん金を貸すことを承知しながら、大つごもりの日になると、そんな約束はなかったと冷然と言う。お峰は怒り、途方にくれ、こたつで眠り込んでいた山村家の長男石之助いしのすけがいることも気にせず、ついに無我夢中で、掛硯(かけすずり。上の箱には硯・墨・水入れなどを入れ、その下の引き出しには小物などを入れる)の引き出しにあった20円から2円を盗み、受け取りにきた幼い従弟に渡す。やがて大勘定 (おおかんじょう・大晦日に有り金を全て封印すること)により、お峰が2円盗んだことが露見しそうになる。奥様から掛硯を持って来いと言われたお峰は観念し、もし伯父の罪にでもなったら自殺をしようと決心する。しかし、掛硯の中には金がなく、石之助の借用書だけが入っていた。「引き出しの分も拝借いたしました 石之助」という書置きだった。

妹たちとは母が違う石之助は、お峰の罪を自ら背負い、彼女を窮状から解放してやったのだった。


「にごりえ」

…「濁り江」は、水のにごった入り江や川のこと。「にごりえ」に咲く花にも似た酌婦しゃくふりきの物語。

<梗概>

 銘酒屋(めいしゅや・表向きは飲み屋を装い、ひそかに私娼を置いて売春させた店)で働くお力には馴染みの客・源七げんしちがいた。源七は蒲団屋を営んでいたが、お力に入れ込んだことで没落し、今は妻子ともども長屋での苦しい生活をおくっている。お力への未練を断ち切れない源七。

ある日、お力は店から抜け出す。つまらぬ一生を哀れと思ってくれる人もいない。しょせん人並みに生きようと思うことが無理なんだと思う。

一方源七はお力を思って仕事もままならなくなり、家計は妻の内職に頼るばかりになっていた。ある時、子どもがお力から高価なカステラを貰ったことをきっかけに、それを嘆く妻といさかいになり、源七は妻子と別れる。

その後、お力は源七の刃によって、背後から斬られて死ぬ。続いて源七も切腹する。


「十三夜」

…十三夜は、陰暦9月13日の夜のこと。8月の十五夜に次いで月が美しいとされる。不幸な結婚をしたおせきを通し、冷たい夫にもただ耐えるしかない封建的な社会の矛盾を描く。

<梗概>

 お関がまだ17の正月、通りがかった高級官吏・原田 いさむの車に落ちた羽根つきの羽根を、お関が貰いにいった時に、勇に見初められる。身分が違い、まだ子供で稽古事もさせていないからと両親は断るが、大事にするとせがまれ、泣く泣く嫁に出す。

ところが、息子・太郎を産んでからは、不器用で不作法だ、教養がなくつまらぬやつだ、と奉公人の前で揶揄やゆされる日々。「くだらぬ嫁だが、可愛い太郎の乳母としてならおいてやる」とまでいわれ、とうとう我慢の限界。十三夜の晩に、可愛い我が子を残して家を出、実家に戻る。「身分が高い夫は外の不満を家で当たり散らすこともあろう、山の手の暮らしができるのも夫のおかげ、同じ泣くなら母として泣け」と父はお関を諭す。お関も子のことを思い、自分さえ死んだ気になれば良い、子を守ると思えば夫の仕打ちなど辛抱できると、婚家へ戻ることを決意する。

婚家へ戻る道、お関は人力車を拾う。その車を引いていたのは幼馴染おさななじみ録之助ろくのすけで、互いに淡い思いを抱いていた仲だった。お関が突然嫁いでからというもの、録之助は荒れて放蕩に暮れ、家を潰し妻子にも逃げられ、その後娘をチフスで亡くす。今は安宿でその日暮らしをしていた。偶然の再会に驚く二人だったが、もうお互いが全く別の人生を歩んでいることを知り、静かに別れていく。


「たけくらべ」

…『伊勢物語』23段に、幼なじみの男女が井戸枠で「たけくらべ」(背比べ)をした話があり、題名はその和歌にちなむ。

思春期にさしかかった少年少女の愛の目覚めを,吉原よしわら遊廓ゆうかく周辺の風物と四季の移りかわりを背景に描いた作品。遊女となる運命の美登利みどりと、寺の跡取りになる内気な少年信如しんにょとの淡い恋。

<梗概>

 勝気な少女美登利は、遊女の姉からもらった豊富な小遣いで、子供たちの女王様のような存在。僧侶の息子信如は、内向的な少年。二人は同じ学校に通っているが、運動会の日、美登利が信如にハンカチを差し出したことで皆からはやしたてられる。信如は美登利に邪険な態度をとるようになり、美登利も信如を嫌うようになった。

千束(せんぞく)神社の祭りでの表町組(美登利、正太郎、三五郎ら)と横町組 (信如、長吉ら)とのけんかで、美登利は長吉ちょうきちに「女郎」「姉の跡つぎの乞食」と罵倒され、泥で汚れた草履を投げつけられる。長吉の後ろには信如がいると誤解し、以後、彼女と信如とは疎遠になる。姉と同じように、美登利もやがて吉原の遊女となる運命だった。信如も出家する運命である。

ある雨の日、用事に出た信如は美登利の家の前で下駄の鼻緒が切れて困っていた。美登利は鼻緒をすげる端切はぎれを差し出そうと外に出るが、相手が信如とわかるととっさに身を隠す。信如も美登利に気づくが恥ずかしさから無視する。美登利は恥じらいながらも端切れを信如に向かって投げるが、信如は通りかかった長吉の下駄を借りて去ってしまう。美登利は、自分でも無意識だったが、実は信如に心ひかれていた。

ある朝、誰かが家の門に差し入れた水仙の造花を美登利はなぜか懐かしく思い、一輪ざしに飾る。それは信如が僧侶の学校に入った日のことだった。

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