表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
埋もれた声明文 ~陰キャでぼっちな俺が、なぜか学校一の美少女に呼び出された~  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/94

92 根本遥の独白㉑ 悪い知らせ

 翌日。あたしは顔を洗った(あと)、いつものようにドアポストに()さった朝刊を引き抜いた。最近は地方欄(ちほうらん)の火災情報を真っ先にチェックするのが日課(にっか)になっていた。


 マグカップに牛乳を七分目(しちぶめ)まで入れて電子レンジで一分間(あたた)める。チンと鳴る(あいだ)に、ダイニングテーブルに新聞を広げてページを(めく)った。


西河(さいか)市で未明(みめい)に火災――十六日未明、西河市南野(みなみの)五丁目の住宅で出火(しゅっか)し、火はおよそ二時間半後に消し止められた。

 消防によると、木造二階建ての住宅がほぼ全焼(ぜんしょう)し、この家に住む渡辺(わたなべ)さんの家族全員が搬送(はんそう)されたが、命に別状(べつじょう)は無いという。警察と消防は、焼け跡から出火の原因を調べている――】


 電子レンジがチンと鳴った。あたしにはまるで海野洋(うみのひろし)任務遂行(にんむすいこう)の報告をしたように聞こえた。


 熱いミルクを息で()ましながら、もう一度記事を目で追った。間違いなく渡辺凛(わたなべりん)の自宅が全焼した。あたしの思惑(おもわく)通りに(こと)が運んでいれば、海野洋は鈴木静(すずきしずか)に放火させ、その様子を動画で撮影(さつえい)しているはず。


 たとえオタフクの覆面(ふくめん)(かぶ)っていたとしても、犯行後に()かり無く尾行(びこう)して、そのまま鈴木静の帰宅を確認すれば、オタフクと鈴木静が同一人物だという事がほぼ立証(りっしょう)できる。

 あたしは火傷(やけど)しそうに熱くなったミルクをちびりと()めて味わった後、もうしばらく冷めるのを待った。


 そして週末。約束通り、長身黒髪(くろかみ)美少女の白川瞳(しろかわひとみ)がやって来た。地味(じみ)(かざ)()のない男、佐藤一(さとうはじめ)()れて。


 (おどろ)いた事に、あたしがタイムカプセルに(まぎ)れ込ませた声明文(せいめいぶん)を、白川瞳はすでに開封(かいふう)していた。


「私と(はじめ)は手紙の差出人を()()()と名付けて、休日を返上して調べているの。現段階で、あなたが()()()かどうかは判断出来ないけど、クロに近いグレーとして警戒しておくわ」

白川瞳はパインジュースを飲み干し、続いてオレンジの缶を振った。


「あたしの身から出た(さび)だから、何を言っても無駄なようね。これからもあたしは部屋から外へ出るつもりは無い。だけど()()()の正体が明らかになって、()連鎖(れんさ)()ち切る事が出来たら外の空気が吸えるかもね。他人(まか)せだけれど」

あたしは動揺を隠すため、(あわ)ててクッキーを口に放り込んだ。

「フフフ。このクッキーの口溶(くちど)けと(あと)を引く美味(うま)さは(クセ)になるわ」


 二日後。納期(のうき)が迫った挿絵(さしえ)の仕上げを済ませた後、あたしは果汁100%のグレープジュースを口に(ふく)んで、ネットのローカルニュースを開いた。


 渡辺凛の自宅の火事以降、地元で目立った事件や事故は報告されていない。海野洋と鈴木静の近況(きんきょう)が気になってはいたけど、君子危(くんしあや)うきに近寄(ちかよ)らず。あたしは傍観者(ぼうかんしゃ)(てっ)して、遠目(とおめ)から静かに結果が出るのを待っていた。


【古井戸の底から高校生の遺体(いたい)が見つかる】


 その見出しを見て、あたしは思わずモニターにジュースを()き出した。

死んだのは、どっち――?


白川(しろかわ)よ。どうしたの?』

あたしがモニターに(うつ)った記事を(なが)めながら電話を掛けると、白川瞳が()めた口調で答えた。


「悪い知らせよ。あんたの予想が当たったわ」

『具体的に教えて』


「農家の古井戸の底から海野洋の死体が発見されたわ。井戸の中は深くて、水はほとんど無かったみたい。警察は事故と事件の両面で捜査してる。(くわ)しくは西河(さいか)市のローカルニュースで確認して」


 結果はあたしの思い通りにはならなかった。

鈴木静は、またもやあたしの持ち駒を(うば)い取ってしまった。


 海野洋と鈴木静の(あいだ)で、一体(いったい)どんなやり取りがあったのか。

次回はあたしの推理を(まじ)えて、その真相に迫りたいと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ